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死者161人、行方不明者12人に上った中国天津市の化学薬品爆発現場の中心部。5階建てのビルの残骸が無残な姿をさらし、辺り一面焼けただれた倒木が転がっている。まるで原爆の爆心地に入ったような錯覚に陥るほどの惨状が延々と続く。倒壊ビル写真・筆者撮影。
<中国は今!>天津大爆発の“爆心地”潜入ルポ=ひしゃげたコンテナが山積み、ここを本気で「記念公園」にするつもり?―ジャーナリスト・相馬勝
http://www.recordchina.co.jp/a120647.html
2015年10月10日(土) 14時41分
ひしゃげて折れ曲がり、長方体の原型を留めていないコンテナが散乱し、鉄筋の枠組みだけを残して四方八方が穴だらけになった5階建てのビルの残骸が無残な姿をさらし、辺り一面焼けただれた倒木が転がっている。まるで原爆の爆心地に入ったような錯覚に陥るほどの惨状が延々と続く。
ここは死者161人、行方不明者12人、さらに700人以上が負傷した中国天津市の化学薬品爆発現場の中心部。爆心地の出入り口は武装警察部隊の兵士によって厳重に警備されていたが、がれきなどの撤去作業のためにトラックなどの工事車両が頻繁に行き来するなか、筆者が乗ったセダンも工事関係車両とみなされたらしく、大した誰何もなく、クレーン車輌などが忙しく動き回る事故現場の中心部に入ることができた。
これまで、中国国営新華社通信や中国共産党機関紙「人民日報」などの中国の官製メディアはこの現場に入ったことがあるが、外国人ジャーナリストとしては初めての「爆心地取材」となる。事情通によると、中に入ろうとして身柄を拘束され、カメラの画像をすべて消去された外国人ジャーナリストも少なくないというほどで、中国当局はよほど外国メディアに現場の状況を公表されたくないらしい。
事故は8月12日の午後11時半、天津市中心部から車で1時間ほどの天津港に隣接する濱海経済区内の危険物倉庫が爆発したもの。後になって分かったのだが、倉庫には3000トンもの危険な化学物質が貯蔵され、そのうち水や酸と反応すると引火性の猛毒ガスを発生するシアン化ナトリウム700トンが倉庫の外に野積みされており、それが消防隊の放水によって化学反応を起こし、2次、3次など次々と大きな爆発を誘発したとみられる。
◆大量の危険物貯蔵は条例違反、23人が身柄拘束
これほどの被害を出す原因となった大量の危険物の貯蔵は天津市の条例違反で、この倉庫会社社長ら関係者12人と、同社に対して不正に危険品取り扱い許可を与えていた市政府幹部ら11人の計23人が身柄を拘束され取り調べを受けている。
ところが、最初の爆発原因も分からず、事故現場の後片付けも終わっていないというのに、天津市当局は9月4日、この爆発跡地に「生態公園」(エコパーク)を建設する計画を明らかにしたのだ。計画では、公園内に犠牲になった消防士らを悼む英雄記念碑のほか、幼稚園や小学校を建設するとしており、11月にも着工し来年7月に完成する予定。だが、ネット上では「責任追及が先だ。そうでないと、亡くなった消防士の無念さはいかばりだろうか。彼らの霊が浮かばれない」「まだ残留化学物質があるのに、幼稚園や小学校を建設するのは非常識過ぎる」などとの批判の声が上がっている。
◆なお残る異臭、住民の不満が爆発
筆者も事故現場に入ったところ、撤去作業をしていた工事関係者らも防毒マスクを装着しており、筆者も強い異臭を感じたほどだ。工事車両も現場の出口付近で、浄化剤入りの水を洗浄装置で車体にかけるよう指示されていた。また、近くの川で無数の魚の死体が浮かび上がったことからも、かなりの量の化学薬品が残留しているのは明らかだ。
筆者はこの爆心地に隣接し、立ち入り禁止区域になっていたマンションの敷地内にも入ることができた。たまたま、保険会社による住民向けの説明会が行われており、いったん避難した住民らが戻っており、一時的に立ち入り禁止が解除されたためだ。
数十棟もあるマンションのほとんどは、爆風のすさまじさを物語るように窓ガラスが吹き飛び暗く黒い空洞がぽっかり浮き彫りになっていた。内部はガラスやドアなどの建築材料の破片が飛び散っており、住民らは「もうここには住めない」と口々に叫び、「政府は事故の責任を取れ」とか「数百万元も出したマンションなのに、二束三文の賠償金では絶対に納得しないぞ」などと政府の対応の不備などに対する住民の不満が爆発していた。
◆被害面積、東京ドーム1500個分
会場では武装警察数十人が警備についており、さすがに暴力沙汰にはならなかったが、険悪な雰囲気が会場内を包んでいた。マンションの敷地内にも武警によるテントが張られており、そこでは住民の引っ越しのため、室内の荷物を運び出すのを手伝う武装警察の隊員を斡旋していた。結婚式のパネルを武警隊員が大切そうに運んでいる姿はさすがに可笑しかった。
とはいえ、これは民衆の不満を抑えるための習近平指導部の浅慮ともいうべきものだろう。住民はおろか、中国の国民も事故原因の究明を望んでいる。なぜならば、北京でも上海でも、全国各地で天津市のような不法な危険物の大量貯蔵が進んでいるとされるからだ。
北京の外交筋は「今回の事故は氷山の一角といえる。この事故の後に、山東省など6カ所で同じような爆発事故が起こっていることからも明らかだ。このような大災害を繰り返さないためにも、事故原因の隠蔽は許されない」と指摘する。
事故現場はこの爆心地から半径2.5キロの円内まで拡大しており、その被害を受けた面積は約20平方キロにも達する。東京ドームでいうと、1500個以上にも達し、銀座を擁する東京都中央区のほぼ2倍の広さとなる。この大爆発で世界第4位の規模を誇る天津港の機能が麻痺しており、被害額は700億元(約1兆4000億円)にも達すると見積もられている。
◆筆者プロフィール:相馬勝
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。
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