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勝手に海をどんどん埋め立てる 〜止まらない中国の「オレ様スタイル」 東アジアの「トホホ」な国々(1)中国編
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44838
2015年08月25日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
8月15日に戦後70周年を迎えた。だが東アジアのいがみ合いは、収まるどころか、激しさをます一方だ。中国、韓国、日本は、それぞれどこに問題があるのか。わかり合える日は、本当にやって来るのだろうか。
■周辺国に突きつけた「踏み絵」
9月3日、習近平主席が「今年最大のビッグイベント」と心待ちにする催しが、北京で挙行される。中国軍の威力を内外に鼓舞する「中国人民抗日戦争勝利70周年記念軍事パレード」である。人民解放軍が誇る最新鋭の戦車部隊やロケット砲などが、北京最大の目抜き通り「長安街」を行進し、天安門広場を横切る予定だ。
北京の日本大使館関係者が解説する。
「日本が降伏文書に調印したのが、1945年9月2日で、その翌日に旧ソ連が勝利の軍事パレードを開いた。国家指導者になってからそのことを知った習近平主席は、自分も同じことをしてみたくなったのです。
それで昨年になって、わざわざ9月3日を、抗日戦争勝利記念日と定めた。ただ中国共産党は、日本軍どころか同じ中国の国民党軍からも逃げ回っていたので、共産党が日本に勝利したと宣伝したら、さすがに世界の笑い物になる。それで『中国人民の勝利記念日』と定めたわけです」
習近平主席は今年に入って、世界中の国々に、9月3日の軍事パレードの「招待状」を出し始めた。だが、欧米各国はこぞって不参加。すぐに参加を表明したのは、「盟友」のプーチン大統領や、援助ほしさのアフリカなどの小国くらいだった。
アジアの周辺諸国も、困惑気味だ。中国と国境を接する某国の外務大臣が、複雑な心情を吐露する。
「中国の抗日戦争勝利を祝うと言っても、わが国は日本とだって、非常に友好的な関係を築いている。こんな物騒なイベントにわが国の大統領が赴けば、当然ながら日本は不愉快に思うに違いない。
だが『欠席』と中国に伝えれば、今度はあの執念深い習近平主席の恨みを買うことになる。他の周辺国に聞いても、どの国も頭を抱えているようだ」
4月22日、インドネシアのジャカルタで開かれた日中首脳会談で、習近平主席は何と、安倍晋三首相に対しても直接、軍事パレードへの参加を呼びかけた。この時、同行していた日本外務省の関係者が述懐する。
「なぜ抗日戦勝利のパレードに日本国首相が行かねばならないのか、われわれは唖然としました。それで首脳会談後に、中国外交部の担当者にクレームをつけたのですが、『習主席の行動を止められるわけないだろう』と、逆ギレされました。
そもそも中国は、1989年に天安門広場で1000人以上もの若者を虐殺した天安門事件の総括すらしていません。そんな独裁国家が天安門広場で行う軍事パレードに、民主国家の指導者が行くこと自体、人類の普遍的価値である自由や民主への冒涜というものでしょう」
それでも日本政府は、中国のメンツを慮って、「招待状は現時点で届いていない」(7月13日の菅義偉官房長官の会見)などと答弁し、やんわりとかわしてきた。
■国際法もお構いなし
だが、習近平主席はしつこかった。外務省関係者が続ける。
「7月16日に谷内正太郎国家安全保障局長を北京に呼んで、習近平主席側近の楊潔篪国務委員(前外相)が、5時間半にわたって説得してきたのです。
9月3日の軍事パレードへの参加がダメなら、その前日夕刻に人民大会堂で開くレセプションにだけでも安倍首相に来てほしいと言ってきた。お願いするくせに、靖国神社を参拝しない、戦後70年の安倍談話は村山談話を踏襲する、そして昨年11月に日中間で取り交わした『4つの合意』を遵守するという『3条件』を守ってほしいと求めてきたのです。
谷内局長は持ち帰って安倍首相に報告しましたが、首相官邸やわれわれは『習近平は一体何様のつもりなんだ』と呆れていました」
安倍首相の訪中が「望み薄」と判断した中国は、突然態度を翻す。8月5日、王毅外相が中国中央テレビ(CCTV)の記者に、安倍首相の訪中についてわざわざ質問させ、「予定されていないし、そもそもそんな話は聞いたこともない」と否定したのだった。
外交というのは、自国と他国との利害を慎重に擦り合わせていく作業である。ところが習近平外交は、「オレ様が好きにやるのだから周囲は言うことを聞け」という「皇帝スタイル」なのである。
その「皇帝スタイル」は、今年に入ってますます顕著になってきている。
例えば、中国がフィリピンやベトナムなどと領有権を争っている南沙(スプラトリー)諸島に、次々と埋め立て地を建造しているのは、周知の通りだ。いつのまにか約4km2(東京ドーム87個分)もの人工島を建造し、いまは3000m級の軍事用滑走路まで建造中である。
前出の日本大使館関係者が続ける。
「習近平主席が人民解放軍に、『海の万里の長城を建設せよ』と発破をかけているのです。中国政府は表向きは、『21世紀海上シルクロード』を共に築こうと、東南アジア諸国に呼びかけていながら、実際には人造の軍港を続々と建設している。このため、警戒感を強める東南アジア諸国は、アメリカや日本にSOSを求めてきているのです」
8月6日、ASEAN(東南アジア諸国連合)は外相会議の共同声明を発表し、「南シナ海の埋め立てに深刻な懸念が示された」と明記した。ASEANには中国を最大の貿易相手国とする国が多い中で、異例の非難声明と言える。
中国は南シナ海ばかりか、東シナ海でも「オレ様スタイル」を貫いている。勝手なガス田開発だ。堪忍袋の緒が切れた日本外務省は7月22日、中国が東シナ海の日中中間線付近で進めているガス田開発の証拠写真を、ホームページ上で公開した。
その14枚の写真を見ると、平湖、八角亭、樫、白樺……と中国が次々にガス田の土台を設置していることが分かる。恐るべき侵蝕ぶりだ。
これらのガス田に関しては、'08年5月に胡錦濤主席(当時)が来日した際、福田康夫首相(当時)と日中首脳会談を行い、共同開発することで合意している。翌6月には日中の事務レベル協議も開かれ、共同開発の区域や方法など、より具体的に確認し合っている。
その後、日中関係の悪化に伴って、交渉は頓挫してしまった。中国はそれをいいことに、勝手にどんどん開発を進めているのである。盗っ人猛々しいとは、まさにこのことだ。
こうしたことから、8月6日にマレーシアのクアラルンプールで開かれた岸田文雄外相と王毅外相との日中外相会談は、双方で激論となった。
岸田 東シナ海の資源開発に関しては、日中共同開発を謳った「2008年6月合意」があるではないか。中国は直ちに一方的なガス田の開発を取りやめ、日本との交渉のテーブルにつくことを要求する。
王 '08年には双方で法的拘束力を持つ合意など取り交わしていないし、議論した内容は共同文書にもなっていない。しかもその後、わが国の固有の領土である釣魚島(尖閣諸島)を勝手に国有化し、共同開発の芽を摘み取ってしまったのは日本側ではないか。
さらに言えばわれわれが開発を進めているのは、日本側が勝手に引いた「日中中間線」なるものの中国側の海域だ。日本がとやかく言うのは、内政干渉だ。
岸田 中国は東シナ海のガス田開発だけでなく、南シナ海の埋め立ても進めていて、国際社会から強い懸念が示されている。一方的な現状変更の試みや、国際法に基づかない主張、行為は、決して国際社会から認められるものではない。
王 日本はわが国と南シナ海で領有権の争議がないのに、余計な口出しは止めてほしい。南シナ海は古来からわが国の固有の領海であり、内政干渉は止めるべきだ。
■経済不安でまた「反日」
まさに、ああ言えばこう言うで、中国は馬耳東風——。
好むと好まざるとによらず、国際社会には「ルール」というものが存在する。だが中国のやり方は、「ルール」というのは、いつでも自分たちに都合のよいように変えて然るべきだという発想だ。そのため、世界第2の経済大国になっても、相変わらずの無法者ぶりが目立つ。
経済に関しては、30年以上続いてきた高度経済成長が、すっかり過去のものとなりつつある。だが習近平政権は、凋落する中国経済を、「新常態」(新しい正常な状態)と呼んで、国民の不安感を払拭しようと必死だ。
コラムニストの呂言之氏が語る。
「かつて温家宝首相が、『中国は1割のヨーロッパ(富裕層)と9割のアフリカ(貧困層)だ』と言っていましたが、その後、中間所得者層が急増し、彼らの消費が経済発展の牽引役になっていきました。ところが6月半ばからの株価暴落で、2億人の『股民』(個人株主)の大半を占めていた中間所得者層が、壊滅的打撃を受けた。
そのため中国は再び、少数の富める者と多数の貧しい者の『二極化時代』を迎えたのです。これは大変不穏な時代です」
中国の中間所得者層とは、まさに日本に「爆買いツアー」に来ている人々に他ならない。日本に来てせっかく「親日」になったにもかかわらず、彼らが今後「反日」になるリスクもあるという。呂氏が続ける。
「習近平政権に不満な富裕層は、次々に国外脱出を図っている。残る貧困層は、習近平政権が彼らの不満のガス抜きとして提供する抗日ドラマや反日キャンペーンで、反日に洗脳されつつあります。
さらに習近平政権は、8月の『安倍談話』と9月の安保法制制定を契機として、新たな反日キャンペーンを準備中で、これを『反日の新常態』と呼ぼうとしているのです」
自らの政権を誇舞するために反日、そして経済が停滞したらまた反日。
どこまでも、困った隣人である。
「週刊現代」2015年8月29日号より
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