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天津大爆発 習近平政権が隠蔽する「5つの疑惑」 〜実は犠牲者千人超、経済政策の失敗をうやむやに?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44874
2015年08月23日(日) 福島香織 現代ビジネス
■厳しい情報統制と乱れ飛ぶデマ
2015年8月12日深夜、天津市の浜海新区で、死者・不明者200人、負傷者700人を超える大爆発が起きた。
天津港の埠頭に近い化学薬品倉庫で火災が発生、消防隊が消火活動にあたっていたところ、火柱とキノコ雲が立ち上るような大爆発が2分間の間に4回起き、その爆風は3キロ離れたマンションの窓や壁もぶち抜いた。
現場の倉庫には保管許可量24トンを30倍近く上回るシアン化ナトリウム700トンほか、硝酸アンモニウム800トン、硝酸ナトリウム500トンといった危険化学薬物が3000トン以上保管されていた。爆発後は周辺の水中のシアン化ナトリウム濃度は基準値の277倍となり、爆心地から6キロも離れた河の水面は死んだ魚に埋め尽くされた。
事件直後から厳しい報道統制が敷かれているため、正確な情報が伝わってこない。中国メディアは新華社の共通原稿を使用することしか許されず、独自取材を禁じられた。
ネット統制も厳しく、事件発生3日間だけで、50以上のサイトが「デマ情報を流した」として閉鎖させられ、デマを流したとされるネットユーザーの拘留も相次いだ。
デマが流れる背景には、この事件の全容がなかなか明らかにならないからだ。多くのネットユーザー、市民たちは、「当局が何か隠蔽しているのではないか」と疑っている。では、何が疑われているのだろうか。
■疑惑@ 正確な死傷者数が隠蔽されている
爆発は半径3キロに及び、その範囲に15ヵ所以上の居民区があった。正式に登録されていない出稼ぎ者のバラックなども灰になっている。死者・不明者・負傷者合わせて1000人未満というのはあり得ないと多くの人が思っている。
海外の華字ネットニュースなどは犠牲者1400人以上の可能性を流しており、少なからぬ市民たちが当局発表よりそちらの数字を信じている。
■疑惑A環境への悪影響の過小評価
事件から1週間目、初めて雨が降ったが、その水に爆発で飛散した化学薬品が反応し、爆心地周辺の路上が泡だらけになった。この水に触れて、痒みなどの刺激を訴える人も続出。CCTVが一瞬、消防関係者の話として「大気中に神経ガスが検知された」と報じ、すぐさま否定したことは、あたかも当局者が何か隠蔽しているような印象を視聴者に与えた。
倉庫には化学兵器の材料など軍事物資も保管されていたのではないか、という疑念も生まれた。環境保安当局は20日、天津爆発の環境観測データに一切虚偽はないと発表したが、「虚偽がない」と強調されればされるほど、市民に不安を与えている。
■疑惑B政治的責任問題の隠ぺい
今回の爆発事故を招いた「政治的責任問題」について、何か隠蔽されているのではないか。
中国の規則では、まず危険な化学薬品倉庫の周辺1キロに、公共インフラ施設や居民区があってはならない。だが、現実には事故現場の1キロ圏内に高速道路の高架やモノレール駅や大手デベロッパー「万科集団」が開発した高級マンション群がある。
また、天津安全管理当局は、倉庫の中身の化学薬品リストを把握しておらず、しかも倉庫内は認可の何十倍もの量の危険化学薬品が保管されていた。
こうした違法行為がまかり通る背景には、必ず企業と官僚の癒着・腐敗があるはずだ。目下、新華社などが報じているところでは、倉庫の所有者は「瑞海国際物流有限公司」という、2012年に出資金1億元で設立された民間物流企業で、株主として登録されている李亮、舒錚という二人の男は単に名義を貸していただけだ、とのことだ。
本当に出資し企業の実権を握っているのは、元天津港公安局長の息子の董社軒と中央企業「中化集団」の天津支社副社長を2012年9月に退職した于学偉という男たちだという。二人は酒席で出会い、化学危険物の扱いを熟知している于学偉と、天津湾公安局にコネのある董社軒が組んで、危険化学品物流会社を設立。危険な化学製品の取り扱いは認可制で、競合他社が少ない分、市場がほぼ独占できるため、大きな利権となる。
于学偉は、2012年に汚職で失脚した中化集団天津支社の元社長・王飛の有能な部下で、この汚職にも関わっていたようだが、王飛が逮捕される前に、中化集団で培った人脈と部下と顧客を引き抜く形で独立。中国の捜査当局は于学偉、董社軒ら瑞海国際物流幹部10人の身柄を拘束した。
また、国家安全生産監督管理局長で2012年5月上旬まで天津市副市長であった楊棟梁を「重大な規律違反」で身柄拘束した。楊棟梁は、天津時代、ペトロチャイナなどと組んで天津の石油化学プロジェクトを推進し、習近平国家主席の政敵で、すでに失脚した石油閥のボス・周永康と昵懇である。
つまり、習近平政権は、この人災事故の政治責任を周永康閥の官僚に押し付けて、政治責任問題として幕引きしたい考えのようだ。
だが、本当に彼らだけに責任があるのか。2008年から天津市長を務め、昨年暮れから代理書記も兼務している黄興国は全く関与していないのか。黄興国は習近平が次の党大会(2017年)で政治局入りさせたいと考えている習近平閥のホープの一人であり、彼の立場を守るために何らかの情報を隠蔽しているのではないか。
■疑惑C事件と権力闘争の関連
習近平は、この事件を権力闘争に利用しようとしているのではないか、という疑いがある。
事故現場となった浜海新区開発は政治局常務委・張高麗が天津市党委書記時代に推進したプロジェクト。だが、2014年早々、この浜海新区がゴーストタウン化し、事実上頓挫していることが党内部で問題になっていた。
内部会議で、天津市は5兆元の債務不履行に陥り実質財政破綻しており、その責任が張高麗にあるのだと、副首相・汪洋から批判されたという話も漏れ伝わっている。張高麗は習政権の副首相で、経済政策の柱の一つである「北京・天津・河北省一体化政策(京津冀一体化)」の責任者だ。
実のところ習近平は、政敵である江沢民派(上海閥)に属し、石油閥でもある張高麗を信頼しておらず、天津の経済政策失敗のツケを払わせる心づもりだった、という見方もある。
2015年7月24日、河北省党委書記で周永康の元秘書・周本順が「重大な規律違反」で失脚したことで、京津冀一体化政策はますます停滞している。浜海新区開発の頓挫、京津冀一体化政策の遅延、そして今回の天津大爆発の政治責任の矛先を、上海閥で石油閥の張高麗に向けることで、天津の財政破綻問題を「爆発事件の影響」としてカモフラージュするのではないか。
■疑惑D事故は自然発生的なものなのか
今回の爆発事件は偶発的なものではなく、誰かに仕組まれたのではないか、という疑いがある。爆発の最初の原因となった倉庫火災がどうして起きたのかは未だ不明である。一時期、車から発火した、というウラの取れない噂が広がった。そこでテロ説、あるいは習近平の政敵が、習近平政権をゆさぶるために仕掛けたという陰謀説まで流れている。
最大の疑惑は、数々の疑いが政権への不信感と批判に転じていくのを、習近平政権は報道統制と言論封鎖だけで防ぐことができるのだろうか、ということだ。報道の自由と言論の自由、そして法のもとの平等以外の方法で、人々の不安を解消し政権への信頼を取り戻すことは無理ではないか。
福島香織 ふくしま・かおり ジャーナリスト。大阪大学文学部を卒業後、産経新聞に入社。上海・復旦大学に語学留学し、01年に香港、02〜08年に北京で産経新聞特派員として勤務。09年に産経新聞を退社後、ジャーナリストとして活動。中国政界・経済界の裏側を取材、分析している
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