習氏、軍掌握を加速 最高位・上将に10人昇格 元軍制服組トップ党籍剥奪 江元主席の影響力を排除

　【北京＝永井央紀】中国共産党の習近平総書記（国家主席）が軍の掌握を急いでいる。30日の政治局会議で胡錦濤前政権で軍制服組トップだった郭伯雄・元中央軍事委員会副主席を収賄容疑で党籍剥奪処分とした。郭氏の後ろ盾だった江沢民元国家主席の影響力を排除する狙いとみられる。31日には軍最高位の上将（大将に相当）に習体制で最多の10人を昇格させる式典を開いた。

　中国の人民解放軍トップである中央軍事委主席は党総書記が兼務するのが慣例で、ナンバー２の副主席は制服組２人が担当する。胡政権時代は郭氏と、汚職容疑で摘発されて３月に死去した徐才厚氏が務めた。２人とも江氏が中央軍事委主席時代に起用し、江氏が引退後も影響力を維持した理由の一つとされる。

　習氏の狙いは江氏につながる人脈を排除し、軍改革を進めることだとの見方が多い。改革は７つの大軍区の再編や、陸・海・空各軍の統合運用の推進などが柱だが、軍内の既存の権力バランスが崩れる可能性がある。浙江省など習氏が過去に務めた地域の部下を要職に起用するケースが目立つこともあり、「軍内には習氏への強い反発がある」（党関係者）。

　郭氏の処分発表から一夜明けた31日、軍機関紙の解放軍報１面には「党中央の決定を全力で支持する」との見出しの評論が掲載された。「郭伯雄や徐才厚を反面教師とし、思想教育や組織管理に厳しい態度で臨む」と表明し、習氏への忠誠を誓った。反発に対する抑制効果がどこまであるかは不透明だが、けん制となるのは間違いない。

　８月１日は軍創設を記念する「建軍節」にあたる。党長老や現役指導者が河北省・北戴河に一堂に会して重要政策を話し合う「北戴河会議」も慣例通り、近く始まるもようだ。この時期の決定には、習氏が自らの主導権を強くアピールする思惑がうかがえる。

　焦点だった上将昇格人事は、習体制では最多の10人が対象となった。習氏が党総書記に就任した2012年11月以降、計３回の昇格人事があったが、１〜６人にとどめてきた。今回は習氏の側近とされる宋普選・北京軍区司令官や苗華・海軍政治委員らが含まれる。

　自ら選んだ上将を増やせば軍内の求心力は確実に高まる。江氏は中央軍事委主席の時に10人以上の大量昇格を何度も実施した。北京の外交筋からは「そろそろ習氏による大規模昇格があってもおかしくない」との声が漏れていた。基盤固めがまた一歩、進んだ。

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南京市元トップの楊衛沢氏も剥奪

　【北京＝永井央紀】中国共産党の中央規律検査委員会は31日、江蘇省南京市の元トップだった楊衛沢・前南京市党委員会書記を「重大な規律違反と違法行為」で党籍剥奪処分を決めたと発表した。賄賂を受け取ったとした。雲南省の仇和・元党委副書記についても収賄により党籍剥奪と決めた。

［日経新聞８月１日朝刊Ｐ．６］

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