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内モンゴルから見た中国現代史 ボヤント著 「少数民族」迫害の実態浮かぶ
中国の北部にある内モンゴル自治区は、もともとモンゴル人が多く暮らしていたが、現在では漢族が多数派となっているところだ。そのうち今もモンゴル人がわりあい多い東部地域に焦点をあて、共産党の支配下で彼らに何が起きたのかを明らかにしようとしたのが、本書である。
公文書やインタビューを通じてまざまざと浮かび上がるのは、モンゴル人に対する政治的、経済的、文化的、宗教的な迫害の数々だ。主に文化大革命までの時期を対象にしているが、今の中国に通じる問題もあぶり出している。法律より共産党の文書や幹部の言葉が重きをなす実態。憲法などがうたう「自治」や「信教の自由」といった言葉が持つ独特の意味合い……。
一方で、日本がかつて満州国を打ち立てたことが後々まで深刻な影響をモンゴル人たちに与え続けた歴史も、改めて思い知らされる。日本人として特に痛切の思いを禁じ得ない点である。
著者は内モンゴルから来日した研究者。周知のように中国では、共産党政権が自らに都合の悪い歴史の研究を弾圧している。本書のように、いわゆる「少数民族」の側からの歴史の研究は、ほとんど封殺している。大部の学術書で読みやすいとは言いがたいが、敬意を表したい一冊であり、日本で出版する意義は大きい。(集広舎・6400円)
[日経新聞7月26日朝刊P.23]
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