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中国株暴落の意味 (田中宇)
http://www.asyura2.com/15/china6/msg/576.html
投稿者 てんさい(い) 日時 2015 年 7 月 22 日 09:44:13: KqrEdYmDwf7cM
 

http://tanakanews.com/150710market.htm

★中国株暴落の意味
━━━━━━━━━━

 中国株が暴落している。上海の平均株価は、6月中旬に高値の5千ポイント
強をつけた後、6月末から急落し続け、現在3400ポイント前後まで、32%
も下がった。中小企業の株が多い深センでは、高値から40%も下落した。
中国政府が下落防止の対策を打っても効かず、急落が続いている。上海では急
落の結果、上場株式の7割が取引停止になった。中国政府は、マスコミに対し
て株の売りを推奨する記事を書くなと命じ、年金基金や国有企業、党幹部に対
して上場企業の株を売ることを制限するなど、強硬策を始めている。

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-07-08/china-trade-halts-hit-2-2-trillion-as-state-intervention-fails
China Stock Sellers Frozen Out of 71% of Market

http://www.zerohedge.com/news/2015-07-08/china-makes-selling-big-investors-illegal
China Makes Selling For Big Investors Illegal

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-07-08/china-s-state-owned-firms-ordered-not-to-cut-share-holdings
China's State-Owned Firms Ordered Not to Cut Share Holdings

 中国を仮想敵と定め(観光業や小売業が中国人観光客の増加で破綻をまぬか
れているのに)嫌中プロパガンダがあふれる日本では「中国はもうダメだ」
「ざまあみろ」という感じの論調が席巻している。たしかに、株価の3割暴落
は衝撃的だ。しかし歴史をふりかえると、中国は、以前にもっとすごい株式の
バブル膨張と崩壊を経験したのに、実体経済の成長が止まっていない。

 中国上海の平均株価は、2005年末の1千ポイント前後から07年10月
の6千ポイントへと6倍に膨れ上がった後、バブルが崩壊し、1年間の急落に
よって株価が3分の1になり、08年末に2千ポイント前後まで下がった。今
回のバブルは、昨夏の2千ポイント台から、今年6月の5千ポイント台へと株
価が2・5倍にふくらんだ後、2週間で3分の2になっている。今回のバブル
は、膨張の倍率が前回のバブルより小さい。

http://www.sbs.com.au/news/article/2015/07/06/china-rolls-out-emergency-measures-prevent-stock-market-crash
China Rolls Out Emergency Measures To Prevent Stock Market Crash

http://kabutan.jp/stock/chart?code=0823
上海平均株価の推移

 前回の中国の株バブル崩壊は、米国でサブプライム危機(07年夏)からリ
ーマン倒産(08年秋)に至る債券バブルの崩壊が起きた時期と一致している。
米国の債券バブル崩壊が、中国の株バブル崩壊へと感染した。今回、米国では
(まだ)バブル崩壊が起きていない。しかしこれは、通貨を過剰発行して債券
や株を買ってテコ入れするQEなどのバブル膨張延命策を、米国や(対米従属
の)日本がやっているからだ。米日の債券や株のバブルは、実体経済のゼロ
成長を無視してふくらみ続け、過去にない異常な高水準に達している。中国と
米国のバブルが連動して崩壊した前回の教訓から考えると、中国の株バブル崩
壊が米国のバブル崩壊へと感染しても不思議でない。

http://tanakanews.com/150327bubble.php
◆中央銀行がふくらませた巨大バブル

http://tanakanews.com/150428qe.php
◆出口なきQEで金融破綻に向かう日米

 感染下落を防ぐためなのか、中国株の暴落が続いた7月8日、ニューヨーク
株式市場がシステムの不調を理由に4時間取引が停止した。不調の原因の詳細
は発表されていないが、同時期にウォールストリート・ジャーナルのウェブサ
イトもダウンしており、ハッカーの仕業の可能性もある。ハッカーは当局の敵
ばかりと限らない(米国最強のハッカーは国防総省の要員だ)。この日、NY
のダウ平均株価は1・5%下落したが、システムが正常に稼働していたらもっ
と下落していたかもしれない。NY証券取引所は、システムを復旧する早道(
バックアップを使ったリカバリ)をとらず、システムダウンを長引かせた。バ
ブル崩壊の感染を防ぐための意図的なシステムダウンだったなら、中国当局が
国有企業に株の売却を禁止した方策に劣らない「株価の不正操作」ということ
になる。

http://www.zerohedge.com/news/2015-07-08/historic-nyse-halt-post-mortem-shock-and-awe-when-it-all-went-down
The Historic NYSE Halt Post-Mortem: The Shock And Awe When It All Went Down

 米日の株価は、日銀などのQEによるテコ入れで、バブルが崩壊せず膨張し
続けている。QEは、不正な株価操作そのものだ。リーマン危機後、部分崩壊
したままの米金融システムを延命させるため、バブルに頼らざるを得なくなっ
た。米日の当局は、自分たちのバブルが危険な水準まで膨張していることを知
っているはずだ。中国は経済成長の原動力が金融でなく実体経済(輸出や内需
用の製造業など)なので、中国のバブル崩壊は、実体経済に大した影響を与え
ない。対照的に米日は(みせかけの)経済成長の証拠をQEなどによる金融バ
ブル膨張の効果(株価上昇など)に頼っているので、バブル崩壊が実体経済の
(見せかけの)成長を崩してしまう。

http://tanakanews.com/150615bond.php
◆債券市場の不安定化

http://tanakanews.com/150311dollar.htm
QEの限界で再出するドル崩壊予測

 米日は、バブル崩壊の回避(延命)が最重要の戦略だ。米国勢が中国の金融
界などの内部に構築したエージェントが、今回の株バブル崩壊を誘発している
可能性はある。とはいえ、そもそもマスコミや国内金融界などを通じて昨年か
らの株バブル膨張を煽ったのは中国政府だ。今年5月以来のバブルの最後の
2カ月、小口の個人投資家つまり一般市民が、マスコミや証券会社の口車に乗っ
て株式投資に参入し、今回の暴落で最も大損した。中国政府が、米国にバブル
崩壊を誘発されかねないと懸念するなら、国内マスコミや金融界によるバブル
扇動を制止するのが筋だったが、そのような動きはなかった。

http://www.ft.com/cms/s/0/589b8192-2483-11e5-bd83-71cb60e8f08c.html
Angry Chinese premier takes charge of market fightback

http://tanakanews.com/100105china.php
中国のバブルが崩壊する?

 前回の株バブルの時、中国の経済成長は年率9%以上だった。今回、成長率
は7%前後に落ちている。中国経済はそれだけ蘇生力が低下したことになるが、
実質ゼロ成長の米日経済よりはましだ。米日でなく中国のバブルが崩壊するの
は、経済原則に基づくものでなく、国際政治的な策略として考えるべき動きだ。
しかしその一方で、中国の株バブル崩壊は、国際政治における中国の台頭を阻
害するものでないのも事実だ。中国は、前回の株バブル崩壊後(つまりリーマ
ン危機後)に、国際政治における影響力の拡大を加速している。

http://www.tanakanews.com/100223china.htm
経済覇権としての中国

http://tanakanews.com/131226dollar.php
金融戦争で中国に勝てない米国

 今回のバブル崩壊が、前回のように1年続く場合、中国株は来年にかけても
っと下がることになるが、今年のAIIBやBRICS開発銀行などの設立を
皮切りに、BRICSの経済面の主導役である中国は、来年にかけて国際影響
力をさらに拡大することが確実だ。前回のバブル崩壊と同様、今回も、中国の
バブル崩壊と国際台頭が同時並行で進むことになる。今後数年かけてBRICS
が経済規模でG7を追い抜いていく流れは変わらない。

http://tanakanews.com/150322china.htm
日本から中国に交代するアジアの盟主

http://tanakanews.com/150416china.htm
日本をだしに中国の台頭を誘発する

http://rt.com/business/265723-brics-gdp-pushkov-russia/
GDP of BRICS could surpass G7 in 2-3 years

 中国株のバブル崩壊、ギリシャ危機の継続と並んで、金地金の再下落や、原
油安の再加速が起きている。金地金は、信用(幻想)に頼らない実体的な価値
を持っており、信用が崩れると紙切れでしかないドルや債券の究極のライバル
だ。米国勢は、ドルや債券の信用が崩れるまで、信用系の金融機能である先物
を使って、今後も繰り返し金相場を下落させるだろう。

http://www.tanakanews.com/100405gold.php
操作される金相場

http://tanakanews.com/130416gold.htm
通貨戦争としての金の暴落

http://tanakanews.com/130424gold.php
金地金の売り切れが起きる?

 中国は、旧覇権国である英国が、新興覇権国である自国にすり寄ってきたの
を利用して、ロンドンで値決め(談合)されている金地金の国際相場に対する
影響力を拡大し、これまで米英銀行だけが値決めに参加して金相場を不正に引
き下げてきた慣行をやめさせ、金相場の(正当な)上昇を引き起こそうとして
いる。ロンドン金市場は今年3月に制度を大改革し、その時に中国の大手銀行
が地金市場協会(LBMA)の値決め会員に入ると目されていたが、実際は中
国勢がどこも入らなかった。

http://tanakanews.com/150314gold.php
金本位制の基軸通貨をめざす中国

http://tanakanews.com/140224tbill.php
金融システムの地政学的転換

 中国勢の参加はガセネタだったか、と懸念される事態になったが、6月中旬、
LBMAが、中国の4大銀行の一つである中国銀行が6月22日から値決めに
参加すると発表した。その後、4大銀行の中の中国商工銀行も、値決め会員に
なることを検討していると発表し、中国勢が国際金相場の決定権の一部を握る
ことが確定的になった。

http://www.lbma.org.uk/_blog/lbma_media_centre/post/lbma-gold-price-bank-of-china-to-join-as-new-participant/
LBMA Gold Price Bank of China to join as new participant

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-06-16/bank-of-china-to-participate-in-lbma-gold-pricing-lbma-says
Bank of China Joins Auction Setting Gold Prices in London

 中国政府は今年中に、上海の金地金市場で、金相場の人民元建ての値決めシ
ステムを稼働する。人民元と金相場を連動し、金本位制のイメージに近づけよ
うとしている。短期的には中国自身、金相場を急いで引き上げようとしていな
い。相場が安い間に中央銀行(中国人民銀行)の金備蓄を拡大し、人民元を支
える力をつけようとしている。そのため、中国銀行が値決めに参加した後、金
相場はむしろ下落した。

http://tanakanews.com/150426gold.php
人民元、金地金と多極化

 中国銀行のロンドン金相場の値決めへの参加(金相場に対する中国の影響力
拡大)の決定と、中国株の暴落開始が、同時期に起きていることは興味深い。
中国は、ドルのライバルである金地金の世界価格決定への支配力を増すことで、
ドルや米国債を潰せる力を増したが、それと同時期に、何者か(米国勢?)が
中国株のバブルを崩壊させ、中国を弱体化する策略を開始している。これは、
金地金という新たな武器を得た中国と、ドルや債券を防衛しようとする米国と
の、金融大戦の激化であると考えられる。

http://tanakanews.com/141203gold.php
金地金の反撃

http://tanakanews.com/141115gold.php
◆金融危機を予測するざわめき

 分析者の間からは、中国の株暴落によって中国人が株への投資に嫌気し、株
でなく金地金に投資するようになるとの予測と、そうでないという見方の両方
が出ている。もし株暴落が中国人の地金投資を増やす結果になるなら、これは
中国政府が人民元に金本位制のイメージを付加しようとしていることと同じ流
れになる。株の暴落は、長い目で見ると、民間を含めた中国の金備蓄の増大、
金地金を使った経済覇権力の担保へと結びついていくかもしれない。(だから
今回のバブル扇動と崩壊が看過されたというのは考えすぎかもしれないが)

http://www.mineweb.com/news/gold/china-equities-crash-wont-benefit-gold/
China equities crash won't benefit gold

 金相場と同時に、原油相場も下落を再開した。一方、原油安の再加速は、前
回の記事に書いたように、米国のシェール石油業界を潰したいサウジアラビア
が、ロシアに接近したことと、たぶん関係している。サウジは、ロシアに農業
部門などで100億ドル規模の新規投資を行う計画だ。ロシアは、経済制裁で
欧米からの投資が入ってこなくなった分を、中国だけでなく、サウジにも補っ
てもらえるようになった。サウジは、米国の石油産業を潰そうとしているだけ
でなく、米国のロシア敵視策を妨害するようになった。もはやサウジは米国の
同盟国でなく、中露イランと並ぶ米国の敵だ。

http://www.wsj.com/article_email/saudi-arabia-to-invest-up-to-10-billion-in-russia-1436198674-lMyQjAxMTI1MjAwNzQwNzcwWj
Saudi Arabia to Invest up to $10 Billion in Russia

http://tanakanews.com/150706brics.php
◆多極側に寝返るサウジやインド

 ロシアに対するサウジの接近は、将来的に、BRICS(もしくは上海協力
機構)へのサウジの加盟につながるかもしれない。BRICSや上海機構に対
しては、サウジのライバルであるイランが、すでに加盟を希望している。イラ
ンは、核問題の濡れ衣を国際的に解かれた後(早ければ間もなく)上海機構へ
の加盟が認められる。イランの台頭を看過できないサウジは、俺たちも入れろ
とロシアに求めそうだ。この場合、サウジがイランへの敵視をやめることが、
加盟の条件になる。インドとパキスタンが、敵対をやめることを前提に、上海
機構に加盟しようとしているのと同じ構図だ。

http://tanakanews.com/110621SCO.php
立ち上がる上海協力機構

http://tanakanews.com/g0425china.htm
非米同盟がイランを救う?

http://tanakanews.com/140520mideast.php
いずれ和解するサウジとイラン

 上海機構を主導する中露は、諸国間の敵対をやめさせようとしている。印パ
や、スンニ(サウジ)対シーア(イラン)など、諸国間の敵対を扇動して自国
の覇権を維持してきた米英と対照的だ。対米従属に固執することで米国を「お
かみ」とする官僚機構が隠然独裁を続けられる日本では、米英が「善」で中露
が「悪」であるとするマスコミのプロパガンダが根強いが、そうした善悪観は
歪曲された大間違いだ。日本人は、早くそれに気づいた方が良い。中露の肩を
持つ私を中傷する前に、プロパガンダを軽信せず世界の流れをよく見ろと言い
たい。


●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円)

◆多極側に寝返るサウジやインド
http://tanakanews.com/150706brics.php
【2015年7月6日】ロシアのサンクトペテルブルグで開かれた経済フォー
ラムは、同市が出身地のプーチン大統領が主催する年次の国際経済会議だ。米
国がロシア敵視を強める中、敵国が開いた国際会議ということで、米欧日では
重視されなかった。しかし実のところ、この会議では地政学的な大転換となる
国際協定が2つも締結された。サウジアラビアとインドが、相次いでロシアと
の経済軍事関係の強化に踏み切ったことだ。

◆中国がアフガニスタンを安定させる
http://tanakanews.com/150703afghanistan.php
【2015年7月3日】「武力によるアフガニスタンの民主化、安定化」を掲
げて01年に侵攻してきた米国と対照的に、昨年来、内戦終結交渉を手がける
中国は、武力を全く使わず、外交と経済(投資)だけを手段としてアフガニス
タンを安定させたい。米国は、アフガン永久占領の好戦的イメージだけを醸し
つつ、実のところ、仇敵のはずの中国にアフガン運営を任せている。中国は、
自分たちがアフガニスタンを運営し始めていることを隠し、好戦的な米国のア
フガン支配が続いている印象の維持に貢献している。これは偶然の産物でなく、
米中対話で双方が「米中関係の新たなモデル」として定めたことだ。米中は、
米国の好戦的な世界支配がずっと続くかのように演じつつ、裏でアフガニスタ
ンの覇権をこっそり米国から中国に移している。

◆世界に試練を与える米国
http://tanakanews.com/150626ordeal.php
【2015年6月26日】軍産イスラエル複合体や米金融界は、各国に試練を
与えている。本来の目的は、各国が試練を乗り越えず米国の言いなりになり、
米国の覇権体制が維持されることだ。しかし、米国の上層部には覇権を解体し
て多極化したい勢力もいて(オバマ大統領は多分その一人)彼らが試練を一神
教的な「頑張れば乗り越えられる」水準に調整して施行し、試練を覇権維持の
道具から覇権解体の道具に変質させている。服従を目的とする「圧力」が、乗
り越えられることを目的とする「試練」に転換している。宗教上の「試練」を
思わせる手法をとる理由は、その方が一神教の人々のやる気を起こせるからだ
ろう。
 

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コメント
 
1. 2015年7月22日 12:43:40 : yy7D5jhcis
前回の株バブルの時、中国の経済成長は年率9%以上だった。今回、成長率
は7%前後に落ちている。
------------------
統計データに何の信憑性もない国の経済についてGDPや何かを根拠として議論することは無意味である。時間の無駄

2. 2015年7月23日 17:21:09 : LY52bYZiZQ
Column | 2015年 07月 23日 16:08 JST
関連トピックス: トップニュース

コラム:「凶年」の北朝鮮襲う中国株安
http://s2.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20150723&t=2&i=1066362887&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&r=LYNXNPEB6M0AB
 7月22日、北朝鮮が直面するあらゆる圧力のうち、中国の本格的な景気後退ほど脅威的なものはおそらくないだろう。写真は建物に掲げられた金日成(キム・イルソン)国家主席の写真。平壌で2011年10月撮影(2015年 ロイター/Damir Sagolj)

Andray Abrahamian

[22日 ロイター] - 北朝鮮が直面するあらゆる圧力のうち、中国の本格的な景気後退(リセッション)ほど脅威的なものはおそらくないだろう。中国の不況は国境を越えて壊滅的な影響をもたらすことになるからだ。

数年にわたって緩やかに成長してきた北朝鮮経済だが、今年は厳しい1年になるとみられる。その要因としては、エボラ出血熱を懸念した政府による国境閉鎖や、天候の問題がある。そして直近では、中国株の急落で中国人投資家がパニックに陥ったことが加わった。

まずはエボラ要因から見てみよう。北朝鮮は今年3月になってようやく、約5カ月続けてきたエボラ感染の水際対策を正式に解除した。同対策では、外国人観光客らの受け入れ停止のほか、人道支援活動家や外交官らの21日間の隔離措置が取られていた。この間を北朝鮮国内のホテルで過ごせた外国人はほとんどいない。もちろん、すでに現地に投資している外国人以外の入国は厳しく制限された。

これが貿易と観光に直接的な打撃を与えた。貿易と観光は現在回復しつつあるが、エボラ対策の長期的な影響は今後出てくるとみられる。結局のところ、北朝鮮は安全な投資先ではないというこれまでの見方が強まったにすぎないと言える。

エボラ対策が一段落すると、今度は天候問題が頭をもたげ始めた。北朝鮮は、同国政府が過去100年で最悪と称する干ばつに直面している。降水量不足により、今年の北朝鮮経済はすでに電力不足などの打撃を受けている。

同国は電力の大半を水力発電でまかなっている。公式統計の乏しい北朝鮮だが、国連に提出された報告書によれば、2005─2009年には火力発電所6基と水力発電所8基が稼働していた。雪が解けて川の水量が増える晩冬と初春は通常、比較的電力が豊富な時期であるはずだ。ところが今年の春は停電が増え、その時間も長かった。平壌に住む外国人らによると、市の中心部でさえ、電気は燃料で動く発電機にほぼ100%頼る状態だったという(通常の発電機依存度は50%を大きく下回る)。

また、5月から6月頭にかけて同国は田植えシーズンだが、今年は水不足を補うため、「より労働集約的な方法による田植え」に頼らざるを得なかったという。そのため、田植えには例年より長い時間がかかったとみられる。

これも、同国経済にはマイナス要因だ。なぜなら、田植え作業には工場の従業員らも総動員されるため、一斉に何日間も駆り出されることで生産が急停止するからだ。事務職員も通常時間外で田植えに参加するため、疲弊や過労につながっている。

田植えシーズンがようやく終わったところに、今度は中国株式市場や世界的な資源相場の急落という「資本主義の人災」がふりかかることになる。

中国の投資家の80%以上は機関投資家ではなく個人投資家だ。こうした投資家が株安の損失に苦しめば、リセッションには陥らないにせよ、景気の減速につながる可能性がある。中国の個人消費は落ち込み、中小企業は売上高の減少に直面するだろう。北朝鮮と国境を接する中国北東部では、こうした企業は北朝鮮の労働力を呼び込むと同時に、北朝鮮での工場建設にも関心を持っているだろう。

また現在、世界の商品市況は悪化している。鉄鉱石価格は6年来の安値水準となり、1日で10%下げる日もあった。鉄鉱石は北朝鮮の輸出全体の1%程度を占めるとみられる。その他の鉱物や鉱物燃料で同国輸出の30─40%を占めるだろう。

北朝鮮の主要輸出産品である石炭の国際価格は、今年すでに下落傾向にあった。中国株の下落を受け、こうした商品価格も当面は弱含みが続くと考えるのが自然だろう。そうなれば、北朝鮮経済にとってはさらに打撃となる。

中国経済が今後どうなるかは誰にも分からない。悲観論者たちは、人口動態の変化による構造的変化や、銀行に巨額の不良債権をもたらす不動産バブルの崩壊を懸念する。ただ多くのアナリストの見方は、株安は短期的な市場の調整にすぎないというものだ。

一方で、確かなことが1つある。隣の大国の市場急落を目の当たりにしている北朝鮮の経済政策立案者らは、厳しい1年を覚悟するしかないということだ。

*筆者は豪マッコーリー大学の特別研究員で、北朝鮮人の職業訓練などに取り組むシンガポールの非営利組織(NPO)「チョソン・エクスチェンジ」の理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

http://jp.reuters.com/article/2015/07/23/column-north-korea-china-stock-idJPKCN0PX0KV20150723?feedType=RSS&feedName=topNews&utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+reuters%2FJPTopNews+%28News+%2F+JP+%2F+Top+News%29&sp=true


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