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収賄罪で起訴された中国国家発展改革委員会の劉鉄男元副主任の裁判が行われた河北省廊坊市の中級人民法院前に集まり、賄賂に抗議するスローガンを掲げる市民たち(2014年12月10日撮影、資料写真)。(c)AFP/FRED DUFOUR〔AFPBB News〕
外科手術が必要な中国「一党独裁政権」 人民に痛みを強いるか、共産党が痛みに耐えるか
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44220
2015.7.7 柯 隆 JBpress
中国工程院院士の鐘南山氏は、「中国政府は世界で最も力の強い政府であり、やろうと思えば、何でもできる」と言う。この表現は、中国政府の力を決して誇張するものではない。一党支配政治において、その政府の力は民主主義の政府は比べものにならないほど強い。
鐘氏の指摘のなかで非常に重要なのは、中国で所得格差の縮小や環境の改善などがなかなか進まないのは、政府が「できない」からなのではなく、「懸命に取り組まない」からだ、としている点だ。
ギリシャの財政破綻の一方で、上海株式市場の株価指数が乱高下している。ギリシャ危機の原因は政府財政の不健全性にあると言われるが、突き詰めれば、財政を統合せず通貨だけ統合するユーロ圏のモデルに問題があったと言わざるを得ない。
構造的な問題を抱える中国経済も、制御不能な状況に陥っている。李克強首相は「中国経済はハードランディングしない」と強気な発言を繰り返す。しかし、上海市場の株価を見る限り、すでにハードランディングしていると言えるだろう。構造転換が遅れ、ファンダメンタルズがまったく改善されないなかで、株価は乱高下している。
■問題に取り組む順序を間違えている
カナダで女子サッカーのワールドカップ大会が開かれた。中国チームは決勝トーナメントでアメリカに敗れたが、ベスト8進出はかなり善戦したと言えよう。
実は、習近平国家主席は大のサッカーファンである。今年に入ってからサッカー振興を専門に担当する副首相(劉延東氏)を任命したぐらいである。
しかし政府にとってサッカーより優先すべきことは山ほどある。最近、中国税関が40年前に加工された冷凍肉を10万トンもインドなどから密輸入した違法業者を摘発したという。まさに何でもありの状況である。中国では、食品安全性の問題はいまだに改善されていない。サッカー振興は国民の愛国心を高揚させることができるかもしれないが、食品安全性の担保のほうが一層重要であるはずだ。
中国政府の力強さについて、疑う余地はない。だが、何に優先的に取り組むかのプライオリティ(順序づけ)に問題があるように思われる。
習近平政権は誕生以来、汚職撲滅に力を入れているが、対症療法に終始している。幹部腐敗の温床を取り除く政治改革を行わなければ、汚職撲滅はいつまでも終わらない。習近平国家主席の言葉を借りれば、「汚職没滅は、ストックの汚職を減らすだけでは不十分であり、フローの汚職を抑えなければならない」ということだ。それは正しい認識であるが、実現するには政治改革を進めなければならない。
また、中国には依然として2億人の貧困層がいると言われている。貧困問題の解決に取り組むことも政府の急務である。
来たる9月3日、中国政府は北京で抗日戦争の勝利を記念する大規模な軍事パレートを行うと発表した。抗日戦争に参加した多くの老兵は、極めて困窮した生活を送っている。軍事パレートの予算を節約し、老兵の生活支援に回すべきではないだろうか。どう考えても、サッカーの振興よりは重要な問題のはずである。
■政府の恣意的な市場介入が逆効果に
中国は歴史の古い国であるが、市場経済を導入してからわずか20年程度しか経っていない。その分、成長力は旺盛であるが、目下の中国経済は成長力を失ったように見える。
中国経済の不確実性は、政府の無責任な行動によって生み出されている。つまり、政府による恣意的な市場介入である。
政府は経済成長を押し上げるために、極端な金融緩和を実施する。その結果、行き場のない資金が不動産市場に押し寄せ、不動産バブルを引き起こす。政府は不動産バブルの崩壊を心配し、不動産取引を抑制する措置を採る。すると、資金は新天地を追い求めて株式市場に流れ、株価の高騰をもたらす。
国務院発展研究センターの呉敬蓮研究員は、「我が国の株式市場は賭博場そのもの」と指摘する。やや極論だが認識としては間違っていない。零細な個人投資家は、手元の貯蓄を株式投資に注ぎ込むが、ほとんどの場合、大口のファンドに巻き上げられてしまう。そのメカニズムはカジノとよく似ている。政府は株式市場を整備しようとはせず、国有企業の資金調達の場として利用しているのみである。
■効率の追求と格差の拡大
習近平国家主席が取り組む汚職撲滅は、確かに国民から支持されている。とはいえ、人心を完全に掌握するまでには至っていない。なぜならば、追放された汚職幹部は氷山の一角に過ぎないことに加え、格差の縮小が実現されていないからだ。
中国の歴史学者によれば、近代化と工業化の過程において「効率」が唯一の目標と基準となり、社会規範だった「道徳」は顧みられなくなった。これこそが中国社会の最大の悩みである。
ローマクラブが1972年に発表した報告書「成長の限界」は今なお我々に警鐘を鳴らしており、効率を0追求する風潮は一向に衰えない。しかし、効率の追求は格差を拡大させ、環境を犠牲にする。
この35年で中国の労働生産性は10倍以上も向上したが、同時に格差も急速に拡大している。経済の自由化を進めれば、市場競争が促進され、効率は向上する。本来、格差の縮小を是正することは政府の役割であるが、現実は真逆である。政府は効率の向上を推進するが、格差の縮小には取り組もうとしない。
■必要なのは痛みの伴う「外科手術」
独裁政治を行う政府の力は無限大のように見えるが、チュニジアのジャスミン革命に端を発する「アラブの春」からも分かるように、何でもできる強力な独裁政治は、臨界点を超えればたちまち無力になってしまう。
集中し過ぎた権力は改革を妨げることになる。中国国内では国民の不満が募り、自由と人権を求める「新公民運動」が高まっている。それを封じ込めると、さらに強い反発を招くことになる。
改革は外科手術のようなもので、短期的に痛みを伴う。いかなる政治家もできることならば、改革を先送りしたいと考える。しかし習近平国家主席にとって、改革を先送りする選択肢はない。人民に痛みを強いるか、共産党が痛みに耐えるかは、中国将来の明暗を分ける分水嶺になる。
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