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『ニューズウィーク日本版』2015−6・30
P.20
「中国の発展は「実験力」が後押しする
経済成長は減速しているのにイノベーションが加速しているのはリスクを恐れず、過去の失敗を修正する努力ゆえだ
沈聯濤(経済専門家)、䔥耿(北京清華ブルッキングズ公共政策センター所長)
5年前に、一体誰が予想しただろう。今や世界のインターネット企業からサイト訪問者数のトップ10を挙げると、そのうち4社を中国勢が占めるようになった。アリパパ・ドットコム、百度(バイドゥ)、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)、そして捜狐(ソーフー)だ。華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)や小米(シヤオミ)など、革新的な多国籍企業も生まれている。
さらに中国はユーラシア大陸を1つの巨大市場にするインフラ掟供を目指す「一帯一路」戦略など、世界規模での公共財の供給能力を高めている。経済成長は減速しているのに、今年これまでの中国企業の中国と香港でのIPO(新規株式公開)調達額は、アメリカ」巾場の2倍近い290億ドルに達したと報じられている。
中国企業の革新のペースと規模は、向上し始めているようだ。なぜ今なのか。その答えは中国が直面している数々の難題にある。政治腐敗、環境汚染、国有企業の非効率性など数え上げれば切りがない。
もちろん、どれも中国にとってはマイナスの話ばかりだ。しかし現状を見るにつけ、それらがプラスに転じたと言えるかもしれない。問題に早急に対処しようという姿勢が、良い影響を広範囲にもたらしているのだ。
中国は長いこと、市場重視の構造改革に専心してきた。世界2位の経済大国という地位を確立したのも、そのおかげだ。だが成功の本当のカギは、絶えず実験に挑んできた姿勢にある。
中国の前例なき構造改革
この路線はさらに強化されているようだ。例えば中国は通信や輸送のネットワークを整備することによって、耐久消費財を生産する世界の中心地の1つになった。最近では同じ手法を使って、サービス部門と内需が成長を牽引する経済の構築に取り組んでいる。
中国はその結果、イギリス人歴史学者ニーアル・ファーガソンが「欧米諸国の経済的優位性の推進力」になったと指摘する「キラー・アプリ」に重点を置き始めた。彼の言うキラー・アプリとは「競争、科学、財産私有、医学、消費社会、勤勉」という6つの要素だ。特に中国は市場への競争原理の導入と、科学の発展と改革の機運を後押しすることに力を入れた。
国家の掲げる目標が変わっても、指導部はこの実験的なアプローチを手放さなかった。ネット産業で中国の急成長を促した要因は、教育制度が整っており、革新的な機運への抵抗がなく、高度な通信インフラへの投資と、国際市場向けにスマートフォンを造る技術力があったことだ。
このアプローチは、今後も数々の問題に革新的な答えを生み出しそうだ。例えば中国政府は労働人口の減少に対処するため、ロボットを使って生産性を高めるテクノロジーヘの投資を増やしている。このまま実質賃金が上昇して競争力が減退する危様に陥っても、内需拡大と生産性向上が支えとなる経済成長によって相殺されることを指導部は期待している。
もちろん中国の実験的な手法は、大きなひずみや失敗ももたらしている。不動産や株式市場のバブルはその代表的な例だ(地方政府の債務を増やし、株価の乱高下も引き起こした)。
しかし、これらの問題を誘発した政策が発展を後押ししたことも確かだ。
中国の指導部はこの点をよく理解している。リスクを避けることにこだわるより、機能していない政策を変えようと彼らは考えている。必要ならば、過ちの代償も払うつもりだ。いま進められている腐敗撲滅の動きも、過去の政策の失敗を修正する努力と見なすべきだ。
中国政府はリスクを冒しながらも、求められるスピードと、規模や難易度で前例のない構造改革を進めようとしている。幸運にも中国には、次の段階の構造変化を実験できるだけの経験と資源の両方が整っている。」
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