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先月、上海に行った際、中国人の知人から、のっぴきならない話を聞いた。「最近、また富裕層の海外脱出が始まっているのです」というのだ。写真は楼継偉財政相と同氏が中心となってまとめたとされる中国経済増長十年展望。
<中国は今!>中国は「中所得国の罠」に陥るか?したたかな習近平主席の豹変ぶり
http://www.recordchina.co.jp/a110779.html
2015年6月6日(土) 14時44分
先月、上海に行った際、中国人の知人から、のっぴきならない話を聞いた。「最近、また富裕層の海外脱出が始まっているのです」というのだ。知り合いの会社社長ら5人が、家族と一緒に米国やカナダに移住する手続を取ったという。ただ、それぞれの国の永住権を取るだけで、ビジネスの拠点は中国本土であることは変わりない。
米国に移民を希望する外国人は米国に少なくとも50万ドル(約6200万円)を投資し10人以上の米国人を雇用すれば、永住権を取得できる。米国務省によると、昨年1年間で、投資移民用ビザを発給された中国籍保有者は8308人で、全体の83%に当たる。
いま、中国では反腐敗運動やぜいたく禁止令で、海外への資産の持ち出しは厳重にチェックされているだけに、リスクの高い行動だ。しかし、彼らは「中国経済の先行きは厳しい。資産を海外に移す必要がある」と語り、私の知人にも熱心に中国脱出を勧めているというのだ。
中国経済の先行きの不透明さを象徴しているのが「中所得国の罠」だ。「中進国の罠」ともいう。高度成長によって国民の1人当たり所得が中進国レベルに達すると、賃金の上昇や労働人口の減少などで成長が停滞するという経済理論だ。
楼継偉(ロウ・ジーウェイ)財政相が4月下旬、北京の清華大学で開催された「清華中国経済ハイレベルフォーラム」の講演で「中国は今後5年から10年の間に50%以上の可能性で『中所得国の罠』に陥る」と発言したものだから、大きな波紋を呼んだ。
具体的には、人口1人当たりの国内総生産(GDP)がほぼ3000ドル(約37万3000円)に近づくと、急速な経済発展によって蓄積された矛盾が集中的に爆発し成長が止まり、社会が混乱し争乱状態に陥る場合もある。例えば、ブラジル、アルゼンチン、チリ、マレーシア、フィリピンなどの国々だ。いずれも3000ドルから5000ドル(約62万2000円)の発展段階でもがいており、一時的にせよ、治安が不安定だった時期もあった。
世界第2の経済大国である中国の財政相が、中国も同じような状態になる可能性があるというのだから、事態は深刻だ。
しかも、習近平(シー・ジンピン)国家主席は昨年末から中国が高度成長期を過ぎてなだらかな成長が続く「新常態(ニューノーマル)」に入ったと宣言したが、「中国は中所得国の罠には陥らない」と断言している。ところが、習氏の経済ブレーンでもある楼氏が、罠に落ちる確率は5分5分以上だと悲観的な見方を明らかにしているのだから驚くほかない。
楼氏は続けて、罠を乗り越えるには、「年間5〜7%の経済成長を実現し、今後5〜7年の間に全面的な改革を行い、中国市場に依然として存在する『ひずみ』を解決しなければならない」と対応策を提起している。
その「ひずみ」について、楼氏は1・農業改革、2・戸籍改革、3・労働・雇用改革、4・土地改革、5・社会保険改革―の5点を挙げている。いずれの問題も新中国建国以来の難問ばかり。
ちなみに、中所得国の罠の一般的な10大特徴は次の通り。1・経済成長の低下あるいは停滞、2・民主の混乱、3・貧富の格差、4・腐敗の多発、5・過度の都市化、6・社会公共サービスの不足、7・就職難、8・社会の動揺、9・信仰の欠如、10・金融体制の脆弱さ。驚くべきことに現在の中国では、すべて当てはまっている。
習近平指導部は1つでも対策を誤れば、奈落の底に落ちるような極めて厳しい状況に置かれているのだ。
このような状況のなかで、習氏が打ち出したのが、アジアインフラ投資銀行(AIIB)である。習氏は中央アジアを中心とする陸の「シルクロード経済ベルト」と、東南アジアやインド洋沿海の国々を対象とした「21世紀海のシルクロード」という「2つのシルクロード」構想を打ち上げ、中央アジアの「絹の道」に高速鉄道という「鉄の道」を敷設。と同時に、インド洋のシーレーンに多数の港湾を建設しようとしている。AIIB創設の目的は、これらのインフラ建設プロジェクトのために資金を提供することにある。
さらに、これらのプロジェクトで中国内の余剰鋼材やセメントを使用すれば、中国に資金が還流する。その結果、「年間5〜7%の経済成長」も可能になり、中所得国の罠に陥らない可能性が大きくなる。
AIIBにはすでに57カ国が名乗りを上げているが、それでも、このような壮大なトリックを現実化しようと、中国が執拗に誘っているのが日本である。
4月には安倍晋三首相と習氏による2回目の日中首脳会談が行われた。習氏は昨年11月の初の首脳会談での仏頂面とは打って変わって笑顔で対応。「AIIBは国際的に一定の評価を得ており、日本の評価が得られると信じている。日本が参加すれば、わが方も日本の立場を最大限尊重する」と語り、日本のAIIB参加を強く要請した。
その後、4月から5月にかけて、序列第2位の李克強(リー・カーチアン)首相や3位の張徳江(ジャン・ダージャン)全国人民代表大会(全人代)委員長、4位の兪正声(ユー・ジョンション)中国人民政治協商会議(政協)主席ら日本側要人と相次いで会談に応じ、習氏同様、AIIB入りを熱心に説いた。
中国としては、日本が入ることでAIIBの格付けを高くし、自らの思惑を現実化する狙いがあるのは明らか。さすがに、大国・中国の最高指導者だけあって、わずか半年足らずで、自身の立場を豹変させてしまうのだから、習近平氏はしたたかだと言わざるを得ない。
◆筆者プロフィール:相馬勝
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。
著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)など多数。
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