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李首相演説の大訂正 習主席との隠された確執
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投稿者 あっしら 日時 2015 年 5 月 28 日 04:46:00: Mo7ApAlflbQ6s
 


李首相演説の大訂正 習主席との隠された確執[日経新聞]
編集委員 中沢克二
2015/5/27 3:30

中沢克二(なかざわ・かつじ) 1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞


 3月5日午前9時。北京の人民大会堂で全国人民代表大会(全人代)が開幕し、首相、李克強が政府活動報告を読み上げ始めた。7%前後とした今年の成長目標などが盛り込まれた最重要演説である。国家主席、習近平が自らの時代の象徴として打ち出した新スローガンである「4つの全面」が盛り込まれるかも焦点だった。

 その時、異変は起きた。静まりかえる大会堂の一角で、通常ならあり得ないどよめきがあがったのだ。一瞬ではない。数十秒続いた。理由は代表らの手元にある事前に配られた演説原稿の中身と、李が読み上げた言葉が大きく食い違っていたことだった。

 「おい違っているぞ」
 「本当か。嘘だろう。あり得ないだろ」

 当初、気づいたのはごく少数だった。原稿の一文字一文字をたどりつつ、李の肉声も聞いていた人々だ。会場内の人々が隣の知り合いにささやき、伝播(でんぱ)して行く。


■原稿から落ちた「4つの全面」の肝

 李は、原稿にはない重要な語句をアドリブで付け加えていた。それは習が最も重視してきた反腐敗運動の成果を誇る箇所だ。つまり事前に配られた原稿からは、習が進める「4つの全面」の肝である「全面的な厳しい党の統治が新たに進展し、成果を収めた」が落ちていたのだ。

 首相の最重要演説の原稿は半年も前から会議が開かれ、繰り返し練られる。万全の形を整えて数日前に字句の間違いがないか入念にチェック。最終責任者、首相の李がゴーサインを出して、印刷に回る。

 「李は反腐敗運動に異論があるのではないか……」。そう見られても仕方ない当初の原稿だった。反腐敗に絡まない3つの内容だけ盛り込んだからである。全面的な改革の深化、全面的な法治社会の推進、全面的な小康(ややゆとりのある)社会の達成、の3つだ。

 「そもそも李の周辺と、習のグループの確執があった」

 党幹部の声だ。確執とは、政府(国務院)の具体的政策を核としたい李派と、『4つの全面』を旗印に、李の基盤、共産主義青年団(共青団)を封じ込めたい習の周辺の戦いという意味だ。

 そこに新たな事態が生じる。演説原稿の調整の要を担う中央弁公庁の混乱である。

 「各役所を束ねる中央弁公庁は、突然の人員の大幅入れ替えで機能が低下し、大混乱していた」

 別の幹部が語る。前回触れたように、前中央弁公庁主任、令計画は2014年12月下旬に摘発された。令は前国家主席、胡錦濤の側近。李と同じ共青団出身だ。中央弁公庁で更迭されたのは、令の人脈と見なされた人物らである。当然、共青団系も多い。人脈は李と重なる。

 「4つの全面」は、習が14年12月半ばに提起し、15年2月末になってマスコミのキャンペーンが始まった。もともと、3月5日の首相演説に盛り込むにはギリギリ。中央弁公庁の混乱もあって調整は滞り、時間切れで印刷に回された形だ。

 確かなことが一つある。最後に李はびびった。戦わなかったのだ。いったんゴーサインを出したはずなのに、元の原稿通り読み上げず、訂正した。

 大訂正には伏線があった。8時55分。習、李が入場し、ひな壇の隣の席に着くと、珍しい光景が出現した。演説前の緊張した時間に習と李が顔を寄せ合って話している。

 習はトップ就任以来、公衆の面前で李と親しく話す姿をさらしていない。権力を一身に集めるトップとして首相の李との格の違いを示す意味合いがあった。だが、この日は李が習に一生懸命、何かを説明している。

 「李はちょっとした芝居を打ったようだ。演説直前に間違いを見つけたふりをして、隣の習にささやいた。公衆の面前であることも意識して」

 内情を知る関係者が解説する。

 李が習にささやいた言葉の詳細は不明だが、大筋、次のような内容だ。

 「『4つの全面』の中でも重要な『厳しい党の統治』の部分が、時間切れと手違いで抜けているので、私が口頭で足します」


■汗だくになった李首相

 李は、演説冒頭の意識的な訂正以外にもかなりの箇所を訂正したり、間違えて読んだりした。もともとの原稿通りではないのだ。しかも汗だくだった。「主席は自分が抵抗しようとした経緯を知っているだろう。もし許さなかったらどうしよう」。そんな緊張、焦りから後半は声が裏返ったり、読み違えたり、言葉につまったりした。

 この日、習と李の退場でも面白い場面があった。李が歩きながら習に話しかけ、会話が成立したのだ。ここでも仲の良さを演出した李。それも、習の反腐敗という名の「恐怖政治」を意識した一種の取り繕いだった。

 今なお官僚組織の実務を仕切るのは、江沢民、胡錦濤ら元トップの息がかかった人々だ。長老らは、習時代を象徴する「4つの全面」を簡単には認めたくない。「4つの全面」など習による指導原理が早々に認知されて共産党規約に盛り込まれるなら、江、胡が苦労を重ねて党規約にようやく押し込んだ「3つの代表」や「科学的発展観」がないがしろにされかねない、と恐れている。

 戦いは、習が有利だ。しかし、さや当ては今後も続く。李演説の前代未聞の大訂正は、「習・李体制」の不安定さを改めて浮き彫りにした。(敬称略)

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO87242410V20C15A5000000/?dg=1


 

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コメント
 
01. 2015年5月28日 18:12:32 : uwTmgbgRDw
世の中、ナンバーワンとツーは、おまく行かないことが多いもの。
その点、中国は王沢東・周恩来の時から、よく「うまく機能させてきたものと感心する。
そりゃ中ではいろいろあるんだろうけど、大きな葛藤や破たんを見せないのはたいしたもの。

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