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ミャンマー牛耳る政商
ミャンマーの軍事政権時代に力を蓄えた「政商」の経済支配が岐路を迎えている。アウン・サン・スー・チー氏が主導する国民民主連盟(NLD)の新政権は「軍産複合体」の癒着構造にメスを入れようとしているが、政商の影響力はインフラや資源開発分野で強く、中国とも結び付く。巨大な政商にどう立ち向かうか、新政権の大きな課題だ。
3月12日、ヤンゴン国際空港は数百人の招待客でごったがえしていた。年間受け入れ能力を大幅に引き上げる拡張プロジェクトの第1段階となる新ターミナルビルが完成したのだ。
テイン・セイン大統領(当時)らを笑顔で迎えた、東アジア系の顔立ちをした痩身の男性。事業を主導するミャンマー最大の複合企業「アジア・ワールド」総帥のスティーブン・ロー氏だ。中国企業幹部をテイン・セイン氏に紹介して回る姿は、中国とミャンマーをつなぐ政商そのものだ。
アジア・ワールドは、ロー氏の父が1992年に創業。国際的に孤立した軍政時代に国内交通インフラ整備を独占的に手掛けて急成長した。武器となったのが中国との太いパイプだ。
ロー氏は羅平忠という中国名を持つ。ターミナルビル建設には、中国から建設やエンジニアリング企業が多数参加した。プロジェクトの背後には、インド洋への出口に当たるミャンマーとの関係強化を狙う、中国政府の後押しがある。
NLDが15年11月の総選挙に大勝した後、ミャンマーにおけるアジア・ワールドの存在感を印象付ける事件が起きた。米財務省は軍政時代からの同社と国軍幹部の密接な関係を問題視し、制裁対象にしていた。だが突如、同社グループへの制裁を緩和し、米国企業との取引を一部解禁した。背景には、制裁で最大の貿易港「アジア・ワールド・ターミナル」を利用できない米国経済団体による再三の陳情があったようだ。
政商は「ミャンマー経済の半分を牛耳る」(地元記者)ほどの存在感を持つが、その支配構造は転機を迎えている。国民には政商支配への心情的反発が根強い。新政権を担うNLDは行政の透明性向上を公約に盛り込み、選挙に大勝した。
ティン・チョー大統領は就任前の3月17日、中央省庁統合案を国会に提出した。統廃合の対象は政商と関係の深い鉱業省など経済官庁が中心で、政商と官僚や軍との癒着構造にメスを入れる布石と見られる。
政商たちも手をこまぬいてはいない。アジア・ワールドは1月、有料道路の運営など中核事業の売却を表明したが、売却先は公表しなかった。「本体から事業を切り離し新政権の追及を免れる狙い」(外交筋)との見方がもっぱらだ。
テイン・セイン政権の5年間は外資開放をテコに高い成長を実現したが、なお資源やインフラは政商の支配下にある。とはいえ政商を完全に排除しては、ミャンマー経済自体が成り立たないのも事実だ。スー・チー氏は、経済の透明性を高めながら、いかに政商の力を国づくりに活用できるか、現実的なかじ取りが求められる。
(ヤンゴン=松井基一)
「Nikkei Asian Review」(http://asia.nikkei.com/)に
「Myanmar’s NLD aims to cut the cord between businesses, officialdom」と題して掲載
[日経新聞4月3日朝刊P.13]
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