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「水爆実験」の成功を発表する朝鮮中央テレビ (c)朝日新聞社
北朝鮮“水爆実験”に成功? 金正恩のやけっぱちの大勝負〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160113-00000000-sasahi-kr
週刊朝日 2016年1月22日号
北朝鮮は4回目の核実験を1月6日、実施した。北朝鮮当局は「初めての水爆実験に成功」と主張しているが、爆発規模は推定6〜7キロトン(TNT火薬換算)で、2013年の前回の核実験と同程度かそれより小さいものだった。
もし水爆の実験であれば、少なくとも数百キロトン規模になるのが普通だから、間違いなく「水爆実験に成功」したのではないと言える。
かといって、単なる見せかけの脅しのために核実験をやったわけではあるまい。防衛省関係者はこう推測する。
「水爆の前段階の爆弾であるブースト型核分裂爆弾(強化原爆)の実験にトライしたのではないか」
ブースト型核分裂爆弾とは、原爆のエネルギーから小規模の核融合反応を生み出し、そこから生じる中性子の力で原爆を効率よく爆発させる核分裂爆弾だ。核融合を主エネルギーとする水爆とは違うものだが、核融合を利用することから水爆開発の前段階の爆弾とみることもできる。
「重水素の核融合を利用することから、これを拡大解釈して水素爆弾だと言い張っているのだろう。ただし、爆発規模が小さかったことから、原爆としては爆発したものの、ブーストのための核融合には失敗したのではないか」(同)
もしそうだとすれば、北朝鮮は新規技術の実験には失敗したということになる。しかし、それでも安心はできない。北朝鮮はこれで核爆発に4回成功している。それぞれ技術の向上に努めていることは確実であり、こうした経験によって技術的にはそれなりに進歩しているとみるべきだからだ。
北朝鮮は核爆弾の威力とともに、起爆装置の小型化もかなり進めていることは間違いない。もはや核ミサイルの実戦配備は秒読み段階と考えるべきだろう。
しかも、16年中に北朝鮮はさらに核とミサイルの実験を重ねてくる公算が大きい。外務省関係者はこう指摘する。
「今回、北朝鮮は中国に事前通告せずに核実験を強行した。中国は不快感をあらわにしており、今後、国連安保理で制裁が強化されることは確実だ。逆に言えば、北朝鮮は国際的孤立を覚悟して今回の核実験に踏み切ったといえる」
じつは、今の国際環境は、北朝鮮に非常に有利になっている。たとえば、北朝鮮がいちばん恐れているのはアメリカが本気で軍事的圧力をかけてくることだが、現在、オバマ政権はイスラム国(IS)をめぐる中東への介入にかかりきりであり、北朝鮮問題に対処する余裕がない。
また、ロシアはシリアやウクライナをめぐって、中国は南シナ海をめぐってアメリカと対立しており、牽制し合う関係にある。
「それにシリア問題への態度でわかるように、オバマ政権は対外的には歴代政権でももっとも弱腰な政権です。来年、誰が新大統領になろうと、オバマ政権よりは手ごわくなることを金正恩もわかっています。したがって、オバマ政権のうちに、すなわち今年中に軍事的にやれることはやっておこうとするはずです」(同)
こうした北朝鮮の核増強路線を、もはや中国ですら止められない。韓国では自衛のための「核武装論」が取り沙汰されている。
今年は金正恩に世界中が振り回されるかもしれない。
(本誌取材班・上田耕司、藤村かおり、亀井洋志、牧野めぐみ、鳴澤 大/黒井文太郎)
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