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インド堅調 7%成長 4〜6月、消費伸びる 資源安も追い風
【ニューデリー=黒沼勇史】中国の景気減速や資源安で新興国経済が変調をきたすなか、インド経済が底堅く推移している。31日に発表した4〜6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、前年同期比で7.0%と高水準を維持した。対中輸出に頼る度合いが低く、資源の純輸入国であるインドが、新興国のなかでは相対的に経済の好調さを保っている。
4〜6月の成長率は1〜3月の7.5%から鈍ったが、6%台だった1年前と比べると高めの水準だ。個人消費が7.4%増と全体をけん引し、回復途上の設備投資(4.9%増)を補った。
消費現場では高額商品の売れ行きが良くなっている。新車販売は4〜6月期に6%伸び、直近の7月も11%増えた。ガソリン安が消費者心理を改善している。
素材産業も好調だ。世界鉄鋼協会によると、1〜7月のインドの粗鋼生産量は前年同期より4%増えた。日米中などが軒並み前年割れになっているのとは対照的に、インドではインフラや家電向けの需要が旺盛だ。
インド経済が堅調なのは、新興国の成長パターンである「対中輸出型」と「資源輸出型」の「どちらにも該当しない唯一の主要新興国」(印格付け会社インディア・レーティングス・アンド・リサーチのスニル・シンハ氏)だからだ。
インドの対中輸出は輸出総額の8%。GDPに占める割合も2%で、10%超の国が多い東南アジアに比べ、中国の景気減速が響きにくい。原油輸出に頼るロシアなどとも異なり、インドは資源の純輸入国だ。資源安は経済の追い風になる。
もっとも対中輸出の少なさは、工業化の遅れの裏返しでもある。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは18日、少雨が農業に響くとみて、インドの15年度の成長率見通しを従来予想の7.5%から7%に下方修正している。
[日経新聞9月1日朝刊P.3]
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インド「モディ改革」停滞
目玉の土地収用法改正案 審議持ち越し ねじれ議会大荒れ
2015年に中国を抜き、主要国で最速の成長率をはじき出すと国際通貨基金(IMF)が予想するインド。昨年5月に就任したナレンドラ・モディ首相は人気抜群で、経済改革「モディノミクス」が急速に進み、海外マネーも集まる――。そんなイメージが陰り始めた。重要政策が議会で阻まれ、実現が危ぶまれる状況に陥っているからだ。
首相が雲隠れ
「GST(物品・サービスの統一税)導入の真の目的は経済を伸展させるためです……」。地元テレビが映す議会中継。政権ナンバー2のアルン・ジャイトリー財務相の声は、野党議員のヤジにかき消される。
夏の「モンスーン議会」は8月13日まで17日間、議論が全く進まなかった。「こんなひどい議会を見たのは初めてだ」。外国の投資促進機関職員はつぶやく。
モディノミクスの目玉政策で、国内外企業の投資障壁を取り除く土地収用法改正案の審議は、会期半ばに打ち切りとなり「冬議会」へ持ち越された。徴税効率を高めるGSTも、16年4月に導入という財務相の約束は風前のともしびだ。
モディ首相の属するインド人民党(BJP)は14年春の総選挙で圧勝し、30年ぶりに「単独過半数」の与党が誕生。政治・経済が停滞から脱するとの機運も高まった。だが実態は「ねじれ議会」。下院では単独で51%、連立政党を含め約60%を握るBJPだが、上院では単独で20%で、前政権を担った国民会議派(28%)に太刀打ちできない。
ねじれ解消は難しい。上院議員を選んで送り込む各州議会の選挙で圧勝し続ける必要があるからだ。上院で過半数を押さえるには「あと4年はかかる」と地元記者。首相は高い支持率を保たなければならない。
そのモディ首相が最近、雲隠れを決め込んでいる。大荒れの議会にモディ首相は会期後半、姿を現さなかった。演説上手で聴衆を魅了する希代の宰相は、なぜ議会で野党と対峙しなかったのか。答えは、野党が追及する「外相スキャンダル」と、BJPの党内勢力図と関係がある。
インド人に人気のスポーツ、クリケット。プロリーグ「インディアン・プレミア・リーグ」の初代会長で、汚職捜査を逃れるため国外逃亡中のラリット・モディ氏に、スシュマ・スワラジ外相がビザ手配など便宜を図ったとされる。野党は重要政策の審議を妨害し、外相の辞職を迫り続けた。
「首相はガッツがないから議会に座ることすらできない」。12日の下院で、ラフル・ガンジー国民会議派副総裁はモディ首相個人への攻撃まで展開した。デリー大学のある政治学者は「首相が外相を辞めさせなければ、議会審議は今後も進まない」と指摘する。
クリーンなイメージのモディ政権への打撃は計り知れない。だが首相には外相に辞任を求められない事情がある。「スワラジ氏の外相就任をモディ首相に飲ませたのはBJPの重鎮のL・K・アドバニ氏。外相の辞職をアドバニ氏は決して認めない」とある政治アナリストは分析する。
党内基盤弱く
アドバニ氏はかつて副首相や党総裁を務め、モディ氏をBJPの首相候補とすることに反対した人物だ。首相は国民の間で絶大な人気を誇るが、党内の支持基盤は弱い。「外相を辞職させれば、アドバニ氏はモディ氏を首相の座から引きずり下ろそうとする。それに対抗する十分な党内政治力を首相は持っていない」とアナリストは指摘する。
モディ政権の苦境を、市場は的確に映し出している。インドの主要株価指数は会期中に何度も続落した。外国人機関投資家も売り買いが拮抗し、昨年のモディ政権誕生後に続いた買い越し基調は途切れた。
議会空転は実体経済にも響く。「デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)を含め、インフラ整備には土地収用法改正案が不可欠なのに……」。同プロジェクトに携わる日本政府関係者はため息をつく。粗鋼生産量は4〜6月の3カ月間、前年同月比伸び率が0%台にとどまる。設備投資動向を示す資本財生産も6月は前年割れとなった。
そんな中、インドの「ミサイル開発の父」と呼ばれ、国民に人気のあったアブドル・カラム元大統領が7月27日、死去した。最後まで学生を指導し続けた老科学者が残した1998年出版のベストセラー「インディア 2020」は、産業政策の重要性や党派を超えた政治家の協力を説き「20年までに先進国になる目標を、議会が宣言する日が待ち遠しい」と結んでいる。改革が停滞するインドで、先人の夢がかなう日はいつ訪れるのだろうか。
(ニューデリー=黒沼勇史)
[日経新聞8月22日朝刊P.13]
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