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[真相深層]韓国 実利優先社会のワナ
MERS、患者186人まで膨らみ「終息」宣言 「稼げぬ」予防医療、おろそか
韓国政府は先月末、中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)の終息を事実上、宣言した。発生から2カ月あまり。患者数は186人に達し、うち36人が亡くなった。衛生状態が悪くない韓国で、感染がここまで広がったのはなぜか。背景を探ると、安全や安心よりも実利を優先してきた韓国社会の病巣が浮かぶ。
隔離基準に疑問
「『2メートル以内で1時間以上接触』という隔離基準がどれだけ混乱を起こしたことか」。7月22日、MERS対応を検証する国会の特別委員会で、野党議員が政府を追及した。韓国政府は2次感染を防ぐためにMERS患者と接触した人を自宅などに隔離したが、その基準に問題があった。
MERSは患者のつばなどに含まれる病原体が体内に入る「飛沫感染」で広がるとみられている。10分程度の短時間の接触でも患者がせき込んだりすると感染リスクは大きい。日本の厚生労働省が6月に公表したMERS対策では、外出自粛要請の対象になる「濃厚接触者」の定義に接触時間の条件はない。
病院によっては「2メートル」を患者のベッドからの距離と解釈したため、トイレや診察などで移動した際の接触が抜け落ちたケースもある。結果として186人の患者のうち半分以上は隔離されていなかった。
首をかしげざるを得ない隔離基準を採用したのはなぜか。「予防医療の専門家不足が根本にある」と専門家は指摘する。MERS特別委メンバーで医学博士でもある金容益(キム・ヨンイク)議員は「お金を稼げる臨床医療は人気があるが研究中心の予防医療は志望者がほとんどいない」と現状を嘆く。
隔離者が増えれば社会への影響も広がる。消費の減少は景気を下押ししかねない。緩い隔離基準に混乱を最小限にとどめたい政府の思惑を勘繰る向きもある。
予防医療がおろそかな状況は病院も同じだ。院内感染を防ぐために外部より気圧を低くして細菌の漏れを防ぐ「陰圧室」は韓国全体で約140床と、東京都の半分にも及ばない。がんや美容整形など高額の収入につながる設備が広く普及しているのとは対照的だ。
「陰圧室」が少ないのは導入に2千万円以上、維持費も年300万円超という高額の費用が一因だと判断し、MERS発生後に韓国政府は補助金での支援拡大を決めた。
感染症予防体制の不備はMERSが発生する前からわかっていた。韓国には結核患者が多い。世界保健機関(WHO)によると人口10万人当たりの患者数は2013年時点で143人。経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の8倍だ。
病院対応も拙く
隔離基準の抜け穴、設備の不足に加え、病院運営のまずさもMERS拡大の要因となった。
「国民の皆様に苦痛と心配をおかけして申し訳ありませんでした」。6月23日、サムスングループの御曹司、李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長は記者団を前に深々と頭を下げた。李氏は90人以上のMERSの院内感染を出したサムスンソウル病院の運営財団の理事長を務める。
同病院では来院した患者がMERSだと見抜くまでに時間がかかったうえ、隔離も不十分だったため大量の院内感染が発生した。発熱などの症状が出たにもかかわらず勤務を続け、後にMERSと診断された医師もいる。最終的には同病院のMERS患者をすべて他の医療機関に移すという屈辱的な処分を受けた。
韓国は朝鮮戦争やアジア通貨危機で経済破綻の崖っぷちに追い込まれるたびに、急速な経済成長を実現して先進国の仲間入りをした。「圧縮成長」と呼ぶ日本よりも短期間での経済発展は、安全確保や規律を犠牲にしてでも成果を追求する社会的雰囲気を生んだ。
実利優先の弊害は2014年のセウォル号沈没事故でも表れた。船体の違法改造や過積載は当局のおざなりな検査で見逃され、300人以上が犠牲になった。朴大統領が解体的出直しを誓ってからわずか1年後に起きた今回の問題。自己変革の戦いは簡単には終わりそうにない。
(ソウル=小倉健太郎)
[日経新聞8月19日朝刊P.2]
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