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【バンコク=京塚環】世界最大のコメ輸出国のタイが、首位陥落の瀬戸際にある。今年の生産量は、20年に一度という干ばつによって前年比2割減少すると予想されているほか、インラック前政権が推し進めた高値による買い取り政策の失敗が影響した格好だ。人口の約4割を占める農民層は収入減による債務増大に苦しんでおり、景気浮揚の重荷になりかねない。
タイのコメ輸出協会は21日、2015年のコメの輸出量の見通しについて当初予測を下回る950万トン(前年比13%減)超になると発表した。米農務省によると15年のインドの輸出量は1100万トンとみられており、タイが輸出首位の座から2年ぶりに転落する可能性が出てきた。
最大の要因は、昨年末から続く干ばつだ。農業協同組合省は、15年上半期の農業部門の成長率がマイナス4.2%だったと発表した。雨量の低下で、今年のコメの生産量は前年比最大20%減の1800万トンにまで落ち込むとの予測もある。
加えて、インラック前政権の「ばらまき」と批判されたコメ高値買い取り政策の失敗も原因に挙げられている。前政権は市場価格より最大5割高値でコメを事実上買い取り、大票田の農民層取り込みを図った。その結果、農民が質より量を優先し多毛作に転換。品質が低下したうえに、価格が上昇しコメの輸出競争力の低下を招いたのだ。
その損失額は2月時点で5370億バーツ(約1兆9千億円)とされる。大量の在庫米の維持には月200万バーツかかり「在庫解消には7、8年が必要」(コメ輸出協会)だという。
生産量が減れば在庫米が解消するとの見方もあるが、タイ米の最大の輸入国である中国などは新米を求めている。在庫米の政府間取引は思うように進んでいない。
14年5月のクーデター以降、権力の座にある軍事政権は農民に田植えの中止を呼びかけ、農業用水の給水制限をしている。しかし、田植えの中止は農民のさらなる債務拡大を招く。すでに肥料や苗を購入済みの農民も多く、生活のために借金を重ねる人も少なくない。
タイでは農業が雇用の調整弁の役割を担ってきた。政権安定のためにも農民に対する保護政策の継続は不可欠だ。プラユット暫定首相は干ばつ被害農家向けに債務の免除や返済期間の延長などの支援策を開始したが、いまのところ効果は限定的だ。
タイ国家経済社会開発委員会は、15年通年のタイ国内総生産(GDP)を3〜4%成長と予測するが、「干ばつがGDPを0.5%押し下げる」(タイ商工会議所大学)との声も出ている。世界経済停滞で輸出回復が見込めないなか、債務拡大による内需低迷はさらなる引き下げ要因となる。
[日経新聞7月25日朝刊P.6]
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