http://www.asyura2.com/15/asia18/msg/141.html
Tweet |
タイ、見えぬ民政復帰 反タクシン派に軍政延長論 既存政党への不信根強く
【バンコク=小谷洋司】タイで民政復帰に向けた総選挙を先送りし、軍事政権の続投を目指す動きが顕在化している。仕掛け人はタクシン元首相派と対立する保守勢力の一部。「選挙の前にまず改革を」と訴えるが、何を改革するかの議論は置き去りにしたままだ。選挙に強いタクシン派の復権を阻む意図は明らかで、早期の民政復帰は見通しにくくなっている。
9日朝、バンコク旧市街にある国会議事堂のロビーで、オレンジ色の法衣をまとう男性を報道陣が取り囲んだ。僧侶でありながら反タクシン派の活動家として有名なプッタ・イサラ師。軍政延長を求める5万人分の署名を、国家改革評議会(NRC)議員のパイブーン元上院議員に手渡した。
「500万人分だって集めてみせる」とプッタ・イサラ師は言い放つが、実は軍政延長論の口火を切ったのはパイブーン氏の方だった。4日、暫定議会とNRCなどの合同会議で質問に立ち、軍政トップのプラユット暫定首相に2年程度の続投を要請。「国民の皆さんが私に残ってほしいと願うなら、そうする」という発言を引き出した。
暫定首相が続投に前向きととれる発言をしたことで、タイ国内は大騒ぎになった。新憲法制定を経て、2016年中のはずだった総選挙と民政復帰の先送りが現実味を帯びてきたからだ。
選挙を待ち望むタクシン派は黙っていない。「赤シャツ隊」で知られる反独裁民主統一戦線(UDD)は「首相が約束を破れば国民は喜ばない」と猛反発。タイ貢献党の重鎮であるチャトロン前教育相も「軍政が居座れば、国内外に不満が広がるだけ」と警告した。
タクシン派と反対派の対立で、タイ政情は10年近く混乱を続けてきた。今の軍政は中立的な立場で双方の和解を進め、速やかに民政復帰を目指すのが役割だったはずだ。
ところが延長派の一人は「選挙後の政権は改革を放棄する恐れがある」と主張し、その継続を軍事政権に託そうとする。
軍政延長派が念頭に置くのは、1991年のクーデター後の国政を担ったアナン暫定政権だ。1年足らずの任期中に、日本の消費税に相当する付加価値税の導入や国営企業改革などを断行。汚職とは無縁の清廉な政治で国民の信望を集めた。
プラユット氏にその再現を求める声はあるが、そもそも元外務官僚だったアナン氏と、クーデターの首謀者であるプラユット氏は立場が違う。クーデターから1年余りが過ぎても、国民和解や景気回復で思うような成果を残せていない軍政が、2年続投して問題を解決できるかも心もとない。
国際社会からの風当たりが強まるのは必至だ。メディアや学者から批判が噴出すると、プラユット氏は「私の任期は長くても来年9月ごろまで」と従来の見解を繰り返すようになった。
一般国民の間に、治安が再び悪化するのを心配して軍政の長期化を容認する声があるのも事実だ。デモなどで社会を混乱させた既存政党への不信は根強く、保守勢力に「エリート政治」復活の口実を与えている。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
プラユット氏の主な発言
・「皆さんが私に残ってほしいと願うなら、そうする」
(4日)
・「(軍政延長の)提案に感謝したい。実現するとしたら国民(の判断)によってだ」
(5日)
・「国際社会に受け入れてもらえるやり方を見つけないといけない」
(5日)
・「(民政復帰までの)スケジュールを変えたつもりはない」
(8日)
[日経新聞6月22日朝刊P.9]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。