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ASEAN経済の変化 成長は後発の”MVP”に
編集委員 後藤康浩
2015/6/7 6:30
サムスンは携帯・スマホの工場を中国からベトナムに移転した(北部バクニン省の工場)
今年は「東南アジア諸国連合(ASEAN)の年」といわれています。年末には宿願であるASEAN経済共同体(AEC)が発足するからです。AECは域内10カ国でヒト、モノ、カネの移動を自由にしようというもので、域内経済全体に好影響を与えるのは確実ですが、今、域内で成長のバラツキが出始めていることにも注意する必要があります。タイは政治混乱と生産コスト増で成長率が低下し、インドネシアも主力輸出品の石炭の落ち込み、資源価格の下落で減速傾向です。対照的に「ポスト中国」として労働集約型産業を受け入れているミャンマー、ベトナム、フィリピンの3カ国、それらの頭文字を取った「MVP」がASEAN内の成長国として存在感を増してきそうです。
■成長率の差が縮小
ASEAN各国(ブルネイを除く)の成長率を追ってみると、2003年に最も高い国と低い国の差は9.3ポイントありましたが、13年には5.4ポイントまで差が縮まりました。要因は様々考えられますが、外資の投資が特定の国に集中せず、分散してきたことや、域内での生産分業が進み、連関性が高まってきたことがありそうです。まさにASEANの自由貿易推進の成果といえるかもしれません。
いよいよAECを発足させるASEANに大きな影響を与えそうな要素が3つあります。第1に「中国経済の動向」、第2に「『タイ・プラス・ワン』の進展」、第3に「原油価格」です。
第1の中国経済の急激な減速は、ASEANの対中輸出を落ち込ませるのでASEAN全体にマイナスですが、とりわけ石炭、液化天然ガス(LNG)などを中国に輸出していたインドネシアの経済には深刻な影響を与えそうです。一方で、中国産業が人件費と人民元のダブルの上昇で打撃を受け、外資はもちろん中国企業も生産拠点を中国から別の国に移していますが、受け入れ国はベトナムやフィリピンなどに偏っています。縫製工場に限ればミャンマーも中国からの生産移管の受け入れ国になっています。3カ国とも人件費が域内では相対的にまだ安いうえ、人口規模が大きく、労働力供給に余裕があるからです。
韓国のサムスン電子が4〜5年前から携帯・スマートフォン(スマホ)の工場を中国からベトナムに本格的に移転したことでベトナムの貿易が黒字に転換するなど現実の効果が出ています。
2番目の「タイ・プラス・ワン」ですが、タイの人件費の上昇、労働力の払底という状況から日本や韓国の企業がカンボジア、ラオスの国境地帯の工業団地に分工場を建設し、労働集約型の工程を移転しつつあります。カンボジア国境ではポイペトやコッコン、ラオス国境ではサバナケットの工業団地が注目されています。中国からだけでなく、タイから工場や工程がASEAN域内に流出すれば、タイの成長率は回復しにくくなり、カンボジアやミャンマーにはプラスになるでしょう。
■タイの工場流出は本格的な流れに
タイは昨年5月のクーデターでインラック前首相を追い落とした軍政が強権的な姿勢を強め、政治混乱の出口が見えないだけに政治的な意味での「タイ・プラス・ワン」も進み、工場流出は本格的な流れになるかもしれません。ASEAN域内での生産シフトの動きには注目しておく必要があります。
昨年秋以降の原油価格の急落は自動車の急増や生活水準の向上でエネルギー消費の伸びるASEANのすべての国の経済にプラスの効果をもたらしました。ガソリンの価格が下がれば、その分が他の消費に回り、消費財需要にプラスになるからです。インドネシアだけは資源輸出にマイナスになる部分がありますが、原油輸入代金が減る効果は小さくありません。ただ、原油価格が反騰すれば、再び、経済の重しになります。ASEAN経済は原油や資源価格に左右されやすいことに気をつける必要があります。
AECはASEAN経済の底上げになる一方で、ヒト、モノ、カネの移動の自由度が高まることで、企業はASEAN域内での投資先の選別を鮮明にする結果になりそうです。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO87729890V00C15A6000000/?dg=1
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