http://www.asyura2.com/15/asia17/msg/586.html
Tweet |
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43759
悪夢の歴史を乗り越え急発展するカンボジア
GDP成長率は東南アジアでトップクラス
2015.5.15(金) 堺 夏七子
プノンペンにオープンしたイオンのショッピングモール(写真:JCCP M、以下同)
カンボジアの首都プノンペン。130万人(2008年国勢調査)以上の人口を擁するこの都市に昨年イオンのショッピングモールがオープンした。
スーパーマーケット、ダイソー、和民、ケンタッキーフライドチキン、ロキシタンなど日本企業や欧米企業、カンボジアの現地企業、約200店舗が4階建ての店内に入店する。巨大な吹き抜けを生かした開放感のある明るい店内に足を踏み入れると、日本のショッピングモールを訪れたような錯覚を感じる。
インドシナ半島南部に位置するカンボジア。首都はプノンペン(Googleマップ)
GDPの4割は観光を中心としたサービス業
多くの読者にとって、カンボジアといえばポル・ポト派による虐殺、長い内戦による地雷問題などを想起するのではないだろうか。「キリングフィールド」と呼ばれるポル・ポト政権時代の処刑場跡地を訪れると、誰のものとも分からない数多くの遺骨が多数掘り出され集められて保存されている。
プノンペン近郊のチューンアエク村にあるキリングフィールドでは、近隣に住む1人の年輩の女性が、失った肉親を悼んでいるのだろうか、それとも生き残ったことに対する罪悪感があるのだろうか、毎朝訪問しそこに保管してある遺骨を清掃していた。
ポル・ポト政権下では1975年から79年までの4年弱の間に、当時の総人口約800万人のうち140万人とも200万人とも推計される人々が犠牲になったと言われている。内戦状態はポル・ポト派が政権を追われた後も続き、1991年のカンボジア和平パリ協定調印、93年の国連監視下での総選挙実施を経てようやく終結した。ポル・ポト政権時代から約40年が経過した現在も、虐殺の記憶はカンボジアの隅々に生々しく残っている。
キリングフィールドでは掘り起こされた多数の遺骨が集められ保管されている
あるいはカンボジアといえば世界遺産「アンコールワット遺跡群」を持つ観光地としてのイメージも強いだろう。世界銀行によるとカンボジアのGDPは2013年で約150億ドル(約1兆7800万円)であるが、その4割が観光業を中心としたサービス業によるものだ。2013年におけるカンボジアの訪問者数は420万人であり、2012年の350万人から約17.5%増加している。これらの訪問者によるカンボジアの国際観光収入は22億ドルに達した。
世界の服飾ブランドが生産拠点を設置
ポル・ポト派による虐殺、またはアンコールワットを中心とした観光地としてのイメージが強いカンボジアではあるが、今や生産拠点としても市場としても離陸しつつある。
カンボジアはユニクロやH&Mなど多くの服飾ブランドが生産拠点を置く、世界有数の縫製工場でもあるのだ。カンボジアのGDPの約2割が製造業で構成されているが、そのほとんどが縫製業によるものである。縫製業は、観光業、農業と並んで重要なカンボジアの産業の一つである。
カンボジアで縫製業が成長したきっかけは、1997年にアメリカ合衆国に一般特恵関税制度の最恵国待遇を付与されたことに始まる。現在、EUや日本も同様の待遇をカンボジアに付与しており、これらの先進国がカンボジア製品を輸入する際に低関税の恩恵を受けることができるようになった。
加えてカンボジアは人件費が安い。2015年1月からの最低月額賃金は128ドルに設定されているが、これは中国(深セン)の約4割、タイの約7割の水準である。
関税優遇と安価な人件費により、主として中国、台湾、香港からの外国投資がカンボジアに縫製工場を設立した。結果として、カンボジアの輸出額の7割〜8割を縫製業関連の製品が占め、経済成長を牽引している。
1人当たりGDPは高度経済成長期の日本に匹敵
次に市場としてのカンボジアを見てみたい。カンボジアの人口は1500万人(2013年)。市場規模としてはまだそれほど大きくないが、その成長率は東南アジアの中でもトップクラスだ。
2009年のリーマンショック時にはアメリカ合衆国向け輸出が急減し、一時的にその成長にブレーキがかかったが、2009年〜2013年の5年間のGDP平均成長率は7%であり、同時期のマレーシア(5.7%)、タイ(4.3%)、ベトナム(5.8%)と比較しても非常に高い値となっている。
また、カンボジアの1人当たりGDPは2013年に1006ドルとなった。タイ(5700ドル)やベトナム(1910ドル)と比較して見劣りすると考えがちだが、この値は、1966年の日本とほぼ同規模である。66年の日本といえば、戦後から20年以上が経過し、高度経済成長期を謳歌していたころである。64年には東京オリンピックが開催され新幹線が開通し、66年には日産が「ダットサン・サニー」を、トヨタが「カローラ」の販売を開始した。
昨今、その成長性が注目されているミャンマーについても、2012〜2013年のGDP成長率は6.3%であり、1人当たりGDPは868ドルである。高度経済成長期の日本および現在のミャンマーと比較していただければ、大きな購買力を持ち始め活気にあふれるカンボジアの人々をイメージすることができるかと思う。
首都プノンペンの町並み
中国や韓国の企業が積極的に投資
資源もなく、また長い内戦で国内産業基盤が破壊されたカンボジアでは、積極的な外資導入政策を採ってきた。外資の参入規制業種はなく、また経済特区を設置し法人税優遇などのインセンティブを提供している。
このようなカンボジアの投資環境、市場の成長性を見込み、すでに多くの中国や韓国の企業が投資を進めている。
カンボジア開発評議会によると、カンボジアで投資法が整備された1994年以降2011年までの国別直接投資額(累積)は中国がトップで89億ドル、投資額全体の約33%にのぼる。韓国が40億ドルで中国に次いで2位(15.1%)である。以下、マレーシア、英国、米国、ベトナムと続くが、日本の累積投資額ははるかに少なく1.5億ドルと全体のわずか0.6%にすぎない。
中国の投資は前述の縫製工場への投資の他、インフラや観光業など多岐にわたる。韓国企業では、LGやサムスンの電化製品の他、不動産投資への進出も著しい。
安定した政権のもと外資の投資環境を整備し、生産拠点としても市場としても離陸しつつあるカンボジアは、東南アジアでの次の投資先としてミャンマーと並んで有力な候補地となるだろう。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。