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金正恩訪露中止の真の理由は!?
http://bylines.news.yahoo.co.jp/pyonjiniru/20150501-00045328/
2015年5月1日 13時49分 辺真一 | コリア・レポート 編集長
ロシア当局は、今月9日の対独戦勝70周年の式典に注目されていた金正恩第一書記の出席が見送りになったと発表した。
プーチン大統領の補佐官をはじめラブロフ外相、さらには韓国駐在のロシア大使までが口をそろえて「出席することになった」と公言していただけに意外な展開だ。
最初から行く気がなかったのか?それとも、突然気が変わったのか?どちらにしても問題だ。
確かに北朝鮮は「出席する」と一度も口外したことはない。最初から出席する気がなかったのに欧米のボイコットで影が薄くなった感のある祝典の目玉としてロシアがあまりにも積極的に働きかけたため断り切れず、今日までズルズルと回答を引き延ばしてしまった可能性もなくはない。それでも、プーチン大統領のたっての要請を無下に断ったということで北朝鮮のデメリットは少なくない。
その気にさせておいて、気が変わったならば、せっかく好転したばかりの露朝関係の暗転は否めない。最初は行く気だったが、特別扱いはなく、他の元首同様の扱いとなったため金第一書記の心境が変化したで済まされる話ではない
ロシアは昨年から物心両面で北朝鮮をサポートしてきた。一例として、北朝鮮の対露債務100億ドルを削減し、北朝鮮の鉄道拡張・補修などのインフラ整備などに250億ドルの投資を約束し、慢性的な食糧とエネルギー不足に苦しむ北朝鮮への農業支援とガス供給に乗り出してきた。今や、ロシアが中国にとってかわって経済的スポンサーになりつつある。
従って、梯子を外され、大国としてのメンツを潰されたロシアがしっぺ返しとして一連の約束を反故にすれば、中国からロシアに依存しようとした北朝鮮の経済計画が挫折することになる。どう考えても、デミリットが大きすぎる。
では、突飛ならぬ事情が生じたため中止せざるを得なかったのか?
過去を振り返れば、金正日総書記の時に訪露を一度ドタキャンしたことがあった。
今から4年前の2011年6月29日、メドベージェフ大統領(当時)がウラジオストクを訪れるタイミングに合わせて訪露の予定だったが、直前になってキャンセルしてしまった。当時も、ドタキャンの理由は不明だった。
その後、仕切り直しして、2か月後の8月に訪露したが、帰国後3か月後に急死したことからはからずも北朝鮮が通告したとおり「健康上の理由」からの延期であったことが判明した。
金正恩第一書記の場合、先月24日から25日にかけて開催された「朝鮮人民軍第5回訓練活動家大会」に出席し、演説していたことから健康上の理由は考えにくいが、過度の肥満と昨年秋に両足を、そして先月も右手首を痛めるなど体調が必ずしも万全とは言えないことから大会後に体調に異変が生じた可能性もゼロではない。今後、公の場に姿を見せないと、健康不安説が取り沙汰されることになるだろう。
「国内事情」としては、国内を留守にすることに不安を感じた可能性はないだろうか。
父親の金正日総書記の場合、2010年5月に訪中するまで金日成主席死去(1994年7月)から6年間外遊しなかった。体制固めが優先されたためだ。金正恩体制が発足してまだ3年半そこそこだ。
この3年間、後見人の一人であった軍服組トップの李英鎬軍総参謀長兼党軍事委員会副委員長を2012年8月に粛清し、2013年12月にはもう一人の後見人であった叔父の張成沢国防副委員長(党行政部長)を処刑し、今なお辺仁善軍参謀部作戦局長の粛清にみられるように軍・党・政府要人らの粛清が続いている。
権力が個人に集中しないよう軍の三羽烏である軍総政治局長、軍総参謀長、国防長官にあたる人民武力相のポストを過去3年間で何度も入れ替え、また側近である黄秉西軍総政治局長と崔龍海党書記の職責と順位を入れ替えるなど目まぐるしい人事をみてもわかるようにまだまだ盤石な体制とは言い難い。
仮に金正恩第一書記が外遊すれば、誰かに留守を任せるほかない。金日成主席の外遊は長男の金正日氏が後継者として、2010年の金正日総書記の訪中も、三男の金正恩氏が後継者として留守を預かっていたことから可能であったともいえる。信頼すべき後継者のいない状況下での外遊は万が一のリスクが伴う。
ロシア側は「中止は北朝鮮の国内事情による」と説明しているが、あくまで表向きの理由でもしかすると、ロシア側の受け入れ態勢に問題があって取り止めた可能性もある。
北朝鮮は先遣隊として先月、経済担当の呂斗哲副総理と一緒に玄永哲人民武力相をロシアに派遣していた。
父親の金正日総書記は2011年の訪露の際、ロシアにS−300地対空ミサイルや対空レーダーシステムなどのほか、SU−27戦闘機か、MIG−29戦闘機のどちらかの組立生産を要請していた。特に対空防御網の強化のためS―300は喉から手が出るほど欲しがっていた。しかし、ロシアは米国や韓国への配慮に加え、北朝鮮の支払い能力に問題があることや国連の経済制裁決議もあってこれら武器売却に応じなかった。
当然、北朝鮮側は事前折衝で金第一書記の式典出席の見返りとしてこれら軍事支援を要請したとしても不思議ではない。しかし、ロシアから色よい返事を得られなかったどころか、仮に訪露すれば、首脳会談の場でプーチン大統領から核開発・実験の凍結、テポドンミサイルの発射の中止、さらには6か国協議への復帰を迫られる可能性もある。核開発と経済開発の「並進路線」を歩む金正恩政権にとってはこれを負担に感じての中止かもしれない。
一説では、北朝鮮は朝鮮戦争勃発65周年にあたる来月25日か、解放記念日の8月15日、あるいは労働党創建70周年の10月10日あたりに人工衛星と称するミサイルの発射を予定しているとされている。
経済や外交よりも、軍事を優先とする金第一書記の訪露が核とミサイル開発の足枷となるのを警戒し、中止を決定したならば、露朝関係はまた元の状態にもどることになるだろう。
金正恩訪露中止の本当の理由は何か? 当事国のロシアのみならず中国、及び日米韓にとっても気になるところだ。
辺真一
コリア・レポート 編集長
東京生まれ。明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者を経て、フリージャーナリストへ。 1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。 1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。 1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。 1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。 2003年 海上保安庁政策アドバイザー。 2003年 沖縄大学客員教授。
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