02. 2015年3月16日 08:13:59
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韓国製家電に囲まれていたアフリカの富裕層 成長する購買力を狙う欧米・韓国・中国企業 2015年03月16日(Mon) 堺 夏七子 リビングはきれいに片づけられているだけでなく、ソファー、サイドボードなどモダンな装飾品がセンス良く配置され、40インチ程度の薄型テレビが置いてあった。 壁は落ち着いたオレンジ色で、壁の一部をくり抜き額縁のような枠をつけてその中に水槽を置き、熱帯魚を飼っていた。「私は、今、ナイロビにいるのだよな」と、一瞬、自分がいる場所を頭の中で確認した。 JCCP Mでは2013年にケニアにおける消費財の市場調査の一環として、ナイロビのスラムに住む低所得者層(Base of Pyramid、以下「BOP」)、およびナイロビ市内に住む富裕層の家庭を訪問し生活状況の調査を行った。前回記事ではBOP層の家庭の様子をご紹介したが、今回は富裕層の生活の様子をご紹介したい。 訪問したケニア富裕層の家庭(写真:JCCP M、以下同) アフリカの富裕層は人口の約5%
今回ご紹介する家庭は、日本人の視点から見てもかなりの富裕層だ。自己所有のアパートメントに、母・子・住み込みのメイドの3人で住んでいる。家はリビング、寝室、子供部屋、台所、メイドのための部屋、と日本の4人世帯が住むマンションと同様かそれ以上の広さを持つ。 なお、この家庭が保有するアパートメントには他に5件程度の賃貸用住居があり、1戸約10万円/月で賃貸しているという。月間の収入は50万円程度になる計算だ。 家庭にある電化製品は、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、そしてテレビは40インチ程度の大型テレビがリビングに1台、16インチ程度の小型テレビが寝室に1台、計2台所有している。メーカーは韓国のLGを買うことが多い。「電化製品はLGを購入するようにしているわ。カスタマーサービスの対応も良く、保証も充実しているから。品質にも満足しているわ」と語る。もちろんスマートフォンも持っている。3年ほど使用していたiPhoneから乗り換え、サムソンのGalaxyを約3万円で購入した。 台所。冷蔵庫、電子レンジなどの電化製品がある 自動車も3年に1回程度、買い替えているという。現在保有しているのはトヨタのRV車で、中古車ショップで購入した。購入価格は約85万円である。スペアパーツが手に入りやすくメンテナンスが容易であること、燃費が良いことが購入の決め手になった。
十分な広さをもつ家に住み、一通りの電化製品が揃い、自動車を保有し、住み込みのメイドがいる。日本の私たちの生活と比較しても、相当に裕福な生活をしていると言えるだろう。アフリカ開発銀行の2010年の発表によれば、アフリカの富裕層は人口の約5%に達する。 家電は韓国製、生活用品は欧米製 今回訪問した家庭では、生活用品や電化製品の大半をスーパーマーケットで購入していた。購入頻度は週1〜2回。ナイロビ市内にはNakumatt、Uchumi、Naivasといった現地資本のスーパーマーケットが軒を連ねる。これらの店舗ではどのような品揃えや価格帯の商品が売られているのだろうか。 先般の家庭で最もよく利用していたのがNakumattだ。Nakumattはナイロビ市内に複数の店舗を持ち、ショッピングモールにも入っている。 その店内にある電化製品売り場には、冷蔵庫、テレビ、オーディオ、ドラム型洗濯乾燥機がずらりと並ぶ。そのほとんどが、LG、サムスンといった韓国メーカーのものだ。価格帯は250リットルの冷蔵庫が約5万円、42インチの薄型テレビが約11万円。ドラム型洗濯乾燥機で約15万円する価格帯のものもある。 生活用品売り場に並ぶ商品は欧米メーカーのものが主流だ。紙おむつはP&Gのパンパースやハギーズ、洗剤はユニリーバのOMO、P&Gのアリエルが様々なパッケージのサイズで販売されている。文房具売り場には、インドメーカーや中国メーカーの廉価版製品と、仏メーカーのBICの商品が並ぶ。 なお、ウガリ(トウモロコシの粉)や牛乳といった食料品については、調達のしやすさや価格帯からか現地メーカーの製品も多く見られる。 スーパーマーケットで見かけたパンパースの販促女性 低価格帯スーパーの品揃えは?
さて、Nakumattと比較すると、同じスーパーマーケットの中でもNaivasが対象としている所得層はやや低めだ。現地で生活するケニア人からも、比較的価格帯の低い商品の品揃えが豊富な「One Stop Shop」(一度に何でもそろう便利な店)と評価されている。 例えば紙おむつで言えば、Nakumattで販売されているハギーズの最小パッケージサイズは10枚入り前後のもので約250円だったが、Naivasではハギーズの1枚入りパッケージが約30円から販売されている(もちろん大きいパッケージサイズも取り扱っている)。また洗剤も同様で、他店にはなかったユニリーバのOMOの100グラムパックが約30円で販売されている。 洗濯機であれば、価格帯が安い縦型のタイプが約3万円、ドラム型タイプの洗濯機(乾燥機能なし)が5万円弱で販売されていた。 店舗の入り口付近に、量り売りでお惣菜を販売しているコーナーと、前回記事で紹介した「M-PESA」(携帯電話のショートメッセージサービスを利用した少額の送金サービス。BOP層にも利用できる画期的な金融システムとして評価されている)の代理店があったのが印象的で、様々なサービスで中間層のニーズに応えようとしているのを感じた。 マザレスラム(ケニア第2の規模を持つスラム街)近郊にあるNaivasの店内。ショッピングカートを押すケニア人で混み合う
Naivasにあるお惣菜コーナー 出遅れている日本企業 ところで、現地資本のスーパーマーケットの店舗においても、すでに欧米・韓国・中国メーカーの製品が多く取り扱われている。欧米・韓国・中国企業のアフリカ消費財市場への進出は著しい。 ユニリーバの2010年度のアフリカでの売上は6620億円であり、この金額は全世界売り上げの約11%だった。P&Gは昨年、300万ドルを投資してナイジェリアの工場を拡張した。LGは2012年度に売上の11%を中東・アフリカで稼いだ。サムソンは2014年度の目標として、アフリカでの携帯電話の売上を2倍にするとした。これら企業にとって、アフリカはすでに大きな市場なのだ。 ケニアの消費財市場において、上記で紹介したP&G、ユニリーバ、LG、サムスンと同等に現地で受け入れられている日本メーカーの製品があるか? というと、残念ながらまだまだ少ない。 例外の1つは自動車で、日本と同じ右ハンドルであるケニアでは9割が日本車である。また、最近では日清食品がケニヤッタ大学と共同で開発したインスタント麺を販売し始めた。 しかし欧米・韓国・中国企業の製品がずらりと並ぶスーパーマーケットの陳列に、日本企業の製品がなかなか見つからない状況を考えると、まだまだ出遅れていると言わざるを得ない。 アフリカの人口は2020年には13億人を超え、中でも消費財市場は1兆4000億ドルに成長すると予測されている。この成長の恩恵を得るためにも、アフリカ市場に挑戦することが求められている。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43173
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