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過激派組織「イスラム国」から逃れた避難民が身を寄せるシリア北部アレッポの大学寮。そこで出会った10代半ばの少年は、故郷での体験を語るうちに震え始めた。
「二度と帰りたくない」
アレッポの北東約90キロにある人口約10万人の町マンビジュから、家族と一緒に逃げてきた。
半年ほど前、銃を持った「イスラム国」の戦闘員が自宅に押し入ってきた。子どもは皆、町中心部の広場に集まるよう命じられた。
男女約200人の子どもたちが広場に並ばされた。子どもたちの前には、30代半ばの女性が首から下を土に埋められていた。
戦闘員の一人が「この女はニカブ(目だけを出すベール)を着ることを拒否した。これからその罰を受ける」と声を張り上げた。戦闘員が女性に向けて次々石を投げた。
思わず目を背けようとすると、銃を向けられた。最後まで「処刑」を見続けるよう強いられたという。
シリア北部ラッカを「首都」と称し、一方的に国家樹立を宣言する「イスラム国」。支配地域では、極端なイスラム法の解釈に基づき、市民の「処刑」や投獄を続ける。街中で写真を撮るだけで「スパイ行為」とみなされるという。
実態を探るため、支配地域との間でバスの運行が続く北部アレッポへ、首都ダマスカスから向かった。
情報を精査して移動経路に「イスラム国」の影響が及んでいないことを確認した。内戦前は約360キロの幹線道路を走って4時間弱で着けたというが、倍の時間がかかった。
アレッポの市街地は多くのビルが崩れ落ちていた。政府軍とアルカイダ系武装組織「ヌスラ戦線」が今も街を分断して戦闘を続け、発砲音が響く。
■戦闘員、アジア系や金髪で青い目の欧州系も
1月27日午前、シリア北部アレッポのミニバス発着所。マンビジュから到着したバスには、中高年の男女10人が乗っていた。
多くはアレッポの医療機関に治療に来た人々だ。
1年ほど前、マンビジュは「イスラム国」に制圧された。多くの病院は戦闘で被害を受けたり、医師が避難したりして閉鎖に追い込まれた。わずかに開業中の病院は、負傷した「イスラム国」の戦闘員の治療や入院に使われているという。
記者が声を掛けたが、みな「イスラム国」を恐れ、何も語ろうとしない。
そんな中、60代男性が、匿名を条件にして問いかけに応じた。記者と通訳、立ち会いのシリア情報省職員の4人だけになると、男性は「あちこちにスパイがいる。人前では話せない」と恐れた。
男性によると、人口約10万人の町を支配する「イスラム国」の戦闘員は数千人ほど。しかし、その手足となって動く「スパイ」が多数いるという。
女性はニカブ(目だけを出すベール)を着用することや、外出時は常に夫や兄弟など身内の男性と一緒に行動することが義務づけられた。男性は飲酒、喫煙、細身のズボン着用、ひげをそることなどが禁じられた。違反するとむち打ちのうえ、刑務所に入れられるという。
中心部の公園には、「処刑」と称して殺害され、切断された人の頭部が並ぶという。制圧直後は、目抜き通りに置かれたテーブルに十数人の頭部が乗せられたこともあったという。
スパイの「密告」で刑務所に行く市民は後を絶たない。市民は誰がスパイかわからず、疑心暗鬼になっている。また「イスラム国」は「処刑」の理由をほとんど説明しない。市民は「次は自分が狙われるかも」と恐れる。
戦闘員の国籍はサウジアラビア、カタール、トルコ、ヨルダン、エジプトなどの中東系に加え、中国人とみられるアジア系や、金髪で青い目の欧州系の戦闘員もいるという。ロシア南部チェチェン共和国出身の戦闘員が「最も残忍だ」と恐れられているという。
マンビジュを離れ、国内避難民となった知人は多い。だが男性は「一族が何世代も守り続けた土地を、私の代で捨てることはできない」と語った。
■「子どもたちの洗脳、将来に禍根」
「『イスラム国』がやっていることは、宗教の名を借りた蛮行。自分たちの気にくわない文明、歴史、建築物の徹底した破壊だ」
アレッポの約40キロ北東のバーブからアレッポに逃れたマヘール・ヘッロ市長(39)は憤った。
人口約20万人のバーブは昨年1月、「イスラム国」の侵攻を受けて、1カ月足らずで陥落した。
ヘッロ市長ら複数のバーブ関係者によると、「イスラム国」はキリスト教会とシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)をすべて破壊。モスク(イスラム教礼拝所)でも、偶像崇拝につながると彼らが判断した聖堂や墓碑は破壊したという。
関係者の一人は、「イスラム国」の戦闘員がイラクから連れてきた少数派ヤジディ教徒の女性を奴隷として売っていたのを目撃したという。バーブ中心部の広場でも「公開処刑」が相次いでいるという。
日常生活は大きく制限されている。テレビで視聴できるのは、「イスラム国」がイラク北部モスルから発信する独自のテレビ局と、アルジャジーラやアルアラビアなど中東のニュース専門局のみ。ラジオも「イスラム国」が運営する3局に限られているという。音楽を聴くのは厳禁とされた。検問所では携帯電話を調べられ、音楽をダウンロードしていた市民は投獄されるという。
子どもたちの教育も、甚大な影響を被っている。
従来の学校はすべて閉鎖された。通うのは男子だけで、「イスラム国」戦闘員の子と、それ以外で学校が違うという。「イスラム国」戦闘員の子の学校では、兵器の使い方や格闘術など戦闘に関連することを教えている。一方、戦闘員以外の子の学校では、「イスラム国」がイスラムの教えを独自に解釈したものを学ばされているという。
16〜45歳の男性は、「イスラム国」戦闘員としてすぐに戦えるよう、銃の携行を命じられたという。外国語ができる男性は1カ所に集められ、インターネットを通じて組織への参加を呼びかける外国語での情報発信を担当している。
ヘッロ市長は「『イスラム国』は子どもたちの洗脳に力を入れている。将来に重大な禍根を残す」と懸念する。
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アレッポでの取材は朝日新聞が独自で行った。ヘッロ市長の取材のみ、シリア情報省の手配を受けた。いずれの取材も情報省の職員が立ち会ったが、検閲は受けていない。(アレッポ=春日芳晃)
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〈アレッポ〉 シリア第2の都市で、内戦前の人口は約306万人。紀元前10世紀に建てられたアレッポ城や紀元前4世紀にさかのぼる市場などの旧市街一帯が「古代都市アレッポ」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されている。内戦前は多くの外国人観光客が訪れた。2012年ごろから政権軍と反体制派の戦闘が市内でも激化。旧市街の大半が焼け落ちるなど、大きな被害を受けた。
http://digital.asahi.com/articles/ASH105HK8H10UHBI016.html?iref=comtop_6_01
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