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【カイロ秋山信一】イスラム過激派組織「イスラム国」とみられるグループが日本政府に人質2人の身代金を要求した事件で、2人が消息を絶ったシリア北部アレッポ周辺で昨年以降、通訳やガイドを装って外国人に近づき、イスラム国に売り渡す誘拐仲介ビジネスが横行していることが22日、反体制活動家への取材で分かった。人質になったジャーナリストの後藤健二さん(47)は友人に「同行ガイドに裏切られた」と話しており、取引の材料にされた可能性もある。
◇外国人所在、イスラム国に密告…シリア北部
複数の反体制活動家によると、アレッポ周辺では2013年ごろから、イスラム国や国際テロ組織アルカイダ系「ヌスラ戦線」など米欧諸国を敵視する過激派が勢力を拡大し、米欧の記者や人道支援活動家を拘束する事例が増えた。人質の出身国から身代金を得たり、イスラム国のように広報宣伝に利用したりするのが目的とみられる。
さらに昨年以降、過激派以外の地元住民や反体制活動家が、金銭目的で過激派の誘拐ビジネスに手を貸す行為が目立つようになった。通訳やガイドを装って外国人に接近し、身柄や所在に関する情報を過激派に渡す見返りに、現金を得る手口だ。昨年9月にイスラム国に処刑された米国人記者の遺族代理人は米CNNに対し、取材に協力した反体制派武装組織が記者の所在情報を2万5000〜5万ドル(約300万〜600万円)でイスラム国に売ったと述べている。
アレッポ周辺は、12年夏に本格化した内戦の初期から反体制派による実効支配が確立し、トルコ国境からの移動ルートもできた。アサド政権が反体制派支配地域へのアクセスを原則的に認めていないこともあり、アレッポ方面を目指す多くの記者や人道支援団体は武装勢力の協力を得て、このルートを利用している。
シリア内戦では、アサド政権に対抗する反体制派や武装組織は一枚岩ではなく、異なる主義主張や利権などを巡って対立や合従連衡を繰り返している。
後藤さんの友人らによると、後藤さんは昨年10月下旬にトルコ国境のバーブサラマ検問所からシリア入りし、アレッポの北約30キロのマレアへ向かった。後藤さんは10月25日、マレアで会ったシリア人の友人に「イスラム国支配地域へ向かう」と伝え、トルコ国境から同行していたシリア人通訳と共にイスラム国支配地域へ向かった。
政府関係者によると、後藤さんは11月1日ごろ、トルコ在住の友人に電話をかけ「同行ガイドに裏切られ、武装グループに拘束された」と説明した。
イスラム国と反体制派の支配地域が隣接するアレッポ周辺で拘束された可能性が高い。
後藤さんが説明した「同行ガイド」の身元ははっきりしない。シリア人通訳は毎日新聞の電話取材に「何も話せない」としているが、後藤さんと共通の友人には「イスラム国関係者を紹介して別れた」と説明しているという。
イスラム国とみられるグループは20日、後藤さんと千葉市出身の湯川遥菜さん(42)を拘束している映像を公開した。2人の殺害を警告し、「72時間以内に2億ドル(約235億円)を支払え」と日本政府に要求している。
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