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パレスチナは、国際刑事裁判所(ICC)に被占領パレスチナ地域での国際法上の犯罪に管轄権を認めるという果敢な政策を実行した。これに対して、イスラエル、米国、EU加盟国は、パレスチナに懲罰を加えたり、脅しをかけたりしてはならない。
アムネスティは、パレスチナがICCを定めたローマ規程への加盟を歓迎する。これにより、被占領パレスチナ地域やイスラエルで戦争犯罪などの犠牲となった数千人が司法制度を利用できることになる。ICCの捜査は、イスラエル・パレスチナ紛争の全当事者による戦争犯罪や人道に対する罪など重大犯罪の加害者を責任追及する最後の機会と言える。アムネスティは、世界のすべて国に対して、正義を果たす上で重要な一歩となるこの加盟を支持し、説明責任の追及を妨げる行動を排除し非難するように求める。
パレスチナのマムード・アッバス大統領は2014年12月31日、加盟文書に署名し、その文書は2015年1月2日、国連事務総長に送付された。また1月1日、パレスチナはローマ規程第12条3項に従い、2014年6月13日まで遡及する司法管轄権を受諾する宣言書もICCに提出した。どちらの措置も東エルサレムを含む被占領パレスチナ地域内の犯罪を捜査の対象とすることを意味している。
追加宣言書は、2014年7月、8月の紛争中とそれ以降に申し立てがあった犯罪をICCが捜査し得ることを意味する。1月6日、国連事務総長はパレスチナからの文書を正式に受理したことを確認した。パレスチナは2015年4月1日にICCに加盟することとなる。
アムネスティはパレスチナの加盟を歓迎するが、2014年6月13日以降という追加宣言は不必要な制約と考える。また、2009年1月の宣言に沿って、宣言書を再提出するようパレスチナに求める。この宣言では、2002年7月1日以降のパレスチナ地域における犯罪に対するICCの管轄権を受諾していた。さらにICC検察官がローマ規程第19条3項に従い、先の宣言書の有効性について司法決定するよう継続して求める。
危惧される報復行為
イスラエルはすでにパレスチナに対し懲罰的措置を取っており、米国やEU加盟国も同様の対応をしかねない。
パレスチナの大統領が加盟文書に署名した翌日の1月1日、イスラエルはパレスチナ当局が受け取るべき税収、およそ1億2700万米ドルの支払いを停止した。資金の移送を拒むことは、一般市民を罰していることになる。ガザの住民は、7年にわたるイスラエルによる封鎖の影響と相次ぐ紛争に苦しんできた。そのわずか4日前の2014年12月28日、燃料が尽きたことでガザの唯一の発電所が閉じられてしまい、停電時間がさらに延びた。今、住民は1日平均12時間から18時間の停電に耐えている。イスラエル軍は7月29日に発電所に攻撃を加えており、これはおそらく戦争犯罪に該当する。
米国はパレスチナが、パレスチナ人への犯罪容疑でイスラエル国民が調べを受けるようなICCの捜査手続きを取ったり、そうした捜査を積極的に支援したりするようなことがあれば、パレスチナ当局への年間経済資金援助(5億米ドルに相当)を停止するよう政府に義務づける法律を、去る12月に議会で可決させている。パレスチナ地域の住民の多くがこの援助で暮らしており、もし米国が同法を発動し脅迫的施策を実行すれば、一般市民を苦しめることになる。
イスラエルと米国だけではない。表面的にはICCを強く支持しているEU加盟国とカナダは、長年パレスチナ当局に対しICCの管轄権を認める措置を取らないよう圧力をかけてきた。その中にはパレスチナ当局が依存している財政援助をやめるという脅しもあった。援助削減は被占領パレスチナ地域の既にひどい人道的状況をさらに悪化させることになりかねない。
またEU外務理事会は2014年7月、パレスチナ当局に対し「国連での地位(2012年に獲得)を建設的に使うよう、交渉による解決を遠ざける措置を取ることのないよう」と、警告を出していた。英国やフランスなど影響力のあるEU加盟国は、パレスチナのICC加盟に公然と反対していた。一方でEU加盟国は、ICCの重要性を繰り返し強調してきた。例えば、2014年12月、英国外相はICCの締約国会議のスピーチの際、不処罰を終わらせるため「ICCは絶対的に不可欠なものだ」と形容している。
国際法上の犯罪の犠牲者が正義と補償を受けられる権利を支持する姿勢に、ぶれがあってはならない。前述のような警告やあからさまな脅迫を撤回し、パレスチナとイスラエルの犠牲者を同様に支援していくことが極めて重要である。
裁かれない犯罪
2014年7月から8月にかけてのイスラエルとガザの間の50日間の紛争、「境界防衛作戦」の間、ガザでは1,500人以上の民間人が殺された。うち500人以上が子どもである。イスラエルでは6人の民間人が殺されている。またガザでは民家が大量に破壊され、ビジネスやインフラも大打撃を受けた。双方が戦争犯罪を含む国際人道法の重大な違反行為をした。イスラエル軍は在宅中の家を攻撃し、全家族を殺害した場合もいくつかあった。医療施設と学校も攻撃し、故意に家屋や民間インフラを破壊したりもした。一方、ガザのハマスとパレスチナ武装グループは、数千発のロケット弾と迫撃砲弾をイスラエルの住宅地域に無差別発射した。
この紛争に加え、いまだ続くイスラエルの封鎖、過去の紛争の爪痕が積もり積もって、ガザに暮らすパレスチナ市民に破壊的な影響をもたらしている。50日間の紛争前も、建設資材のガザ搬入をイスラエルが制限していたことで、以前の紛争中に破壊された75,000戸の家と259の学校は再建できていないままであった。境界防衛作戦の間には、118,000戸を超える家が破壊された。2014年11月末時点で19,600世帯が家を失い、多くは不安定な状態で暮らしている。
「2014年6月13日以降に実行された軍事作戦における(被占領パレスチナ地域での)国際人道法および国際人権法に対するすべての違反行為を調査するため」に国連人権理事会によって任命された国連調査委員会がガザに立ち入ることを、イスラエルは断固として拒絶している。委員会は現在、紛争の全当事者による違反行為を検証中である。さらにイスラエルは、こうした違反行為の申し立てを調査しているアムネスティや他の国際人権組織のガザ立ち入りも拒絶し続けている。
数十年以上にわたってアムネスティをはじめとする人権組織は、イスラエルやハマスその他のパレスチナ武装グループによる戦争犯罪やその他の国際法上の犯罪の動かしがたい証拠を積み上げてきた。しかし、双方の当局は長年、犠牲者のための正義・真実の追及、補償を怠り、双方の加害者たちは法の裁きを免れ続けている。
アムネスティ・インターナショナル声明
2015年1月7日
http://www.amnesty.or.jp/news/2015/0114_5072.html
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