01. 2015年1月13日 23:08:49
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新兵器に依存し過ぎるのも問題だろうなhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42588 技術革新著しいレーザー兵器、その現状と課題 米議会報告に見る米海軍の高出力レーザー兵器開発の実態 2015年01月09日(Fri) 矢野 義昭 2014年7月31日付けで、『海軍の艦載用対水上・対空・対ミサイル防衛レーザー: その背景と議会にとっての課題』と題する米議会報告(CRS; R41526)が出された。 その中では、公開情報に基づく米海軍の高出力レーザー兵器の開発の実態が詳細に記述されている。 1 報告書全般要約 米陸軍、車載式レーザー兵器「HEL MD」の試験に成功 米海軍のミサイル駆逐艦デューイに暫定的に搭載されたレーザー兵器システム(LaWS)技術デモンストレーター〔AFPBB News〕 現在の開発段階では、今後数年で射程1マイル程度の一部の対水上・対空目標に対処可能な艦載型の高出力レーザーの配備が可能になった。 その後数年でさらに強力な艦載型レーザー兵器の配備が可能なところまで来ているとされている。 国防省は3種類の水上艦艇用レーザー兵器を開発している。 すなわち、ファイバー型個体レーザー(solid state laser: SSL)、スラブ型SSL、および自由電子レーザー(free electron laser: FEL)である。 米海軍は、ドック型輸送揚陸艦「ポンセ」にレーザー兵器システム(Laser Weapon System; LaWS)を搭載し、今年の夏からペルシア湾で作戦環境下での試験を行っている。2020年度又は2021年度に初期作戦段階(IOC)になることが予定されている。 米議会には、3種類のうちいくつの種類のレーザー兵器を開発するのか、また艦艇の設計と取得に及ぼす影響をどう見るかという課題が問われている。 2 レーザー兵器の利点 (1)1発当たりの限界費用が安価 米海軍、レーザー兵器を2014年に海上配備へ 「レーザー兵器システム(Laser Weapon System、LaWS)」の攻撃を受けた無人標的機〔AFPBB News〕 艦載レーザー兵器は、水上、航空、弾道ミサイル目標に対し、1発当たり1ドル以下という極めて安価な費用で対処できる。 従来の海軍の短距離防空ミサイルは1発数十万ドル、長距離のミサイル迎撃用ミサイルは数百万ドルかかった。 この1発当たりの限界費用の劇的な低下という利点により、レーザー兵器は、安価で大量に装備できる小型ボート、無人機(UAV)、あるいは対艦巡航ミサイル、対艦弾道ミサイルの集中攻撃に対して、予算的に可能な範囲での防御を可能にする。 (2)無尽蔵に近い弾倉 水上艦艇はミサイル発射管に限られた数の迎撃ミサイルを搭載しているが、搭載したミサイルを撃ち尽くせば、再装填のため戦列を一時離れなければならない。近接防御火器システム: CIWS)も、弾丸を撃ち尽くすと再装填の時間が必要になる。 しかしレーザー兵器の場合は、電力源と冷却に必要な燃料がある限りは、無限に連続発射が可能である。このためレーザー兵器により、艦艇に搭載された迎撃ミサイルやCIWSの能力を超える、多数の目標に対する防御が可能になる。 (3)迅速な交戦時間 レーザー光線は瞬時に目標に到達するため、迎撃のための未来位置を計算する必要がなく、目標の特定部位を狙い続けることもできるため、数秒間で目標を無能力化できる。別の目標への変換も数秒以内で可能である。 このような迅速な交戦時間は、ミサイル、ロケット弾、砲弾、迫撃砲弾などの脅威に曝される、陸地に近い地域での交戦時に特に重要になる。 (4)極めて機動力に富む目標にも対処可能 レーザー光は、一部の巡航ミサイルのような極めて機動力に富む目標の追尾、連続照射に使用できる。 (5)正確に交戦でき、二次被害のリスクを大幅に低減可能 レーザー光の照射範囲は直径数インチと、極めて精度が高い。また直進するため、砲弾やミサイルと異なり、目標を逸れても地上に落下してくることはない。特に港湾地域の作戦では、二次被害を局限することが求められるが、レーザー兵器はそれを可能にする。 (6)その他の用途にも使用でき、段階的対応が可能 レーザーは目標を破壊できるだけではなく、発見・監視、非殺傷攻撃、電子光学センサーの妨害などにも使用できる。 そのためレーザー兵器は、警告のための妨害、能力喪失に至らない限定的損害の付与、無能力化まで段階的な対応が可能になる潜在能力を有している。 3 レーザー兵器の限界 (1)光線の直進性 レーザー光線は直進するため、その線上の交戦に限定され、通視の利かない目標に対しては攻撃できない。また通視を遮られた場合も目標を攻撃できなくなる。高波で見えなくなる小型ボート、あるいは低空から接近する目標は通視が利かない。 ただし、レーザー兵器の場合は、瞬時に正確な攻撃が可能なため、これまでの兵器に比べれば、より遠距離から対処が可能になる。 通視外の目標の発見、誘導のため、衛星や航空機などにより空中に反射鏡を浮かべる方法も考えられる。しかしそれには費用と技術が必要となり、また反射鏡を搭載した衛星なども損害を受けることになる。 (2)大気による吸収、散乱、撹乱と全天候性の欠如 大気中の水分、砂、埃、煙、その他の汚染物質などにより、レーザー光線は吸収、散乱され、大気の撹乱により光線の焦点が逸らされる。大気中の水分による吸収は艦載される場合に特に問題になる。 「スウィート・スポット」と呼ばれる特定の電磁波周波数の波長のレーザー光線は、大気中での吸収が大幅に減少する。 レーザー光線は、伝達効率を上げるため、スウィート・スポットの近くか同じ波長に設計されるが、距離とともに大気による吸収の影響が大きくなる。補償光学により、観測された外乱に対しレーザー光線を迅速に微調整できるが、レーザーは雨や霧の中ではうまく作動せず、全天候性には欠けている。 (3)熱ブルーミング(Thermal blooming) レーザー光線を一定時間特定の点に照射し続けると、光線が通過する大気が高温になり、レーザーの焦点を逸らし、レーザーの目標に対する無力化能力が減衰する。その影響は、レーザー出力が上がるほど、大きくなる。 この大気中の熱発生により、同一の視線上を、こちらに向け直進してくる目標に対する効力にも限界が生ずる。 これらの目標に対しては、従来のミサイルやCIWSがより効果的であろう。これまでのレーザー兵器の試験は、横行目標に対してなされ、まっすぐこちらに向かってくる目標には試験されていないため、今後検証が必要になる。 (4)飽和攻撃 レーザー兵器は同時に1目標しか対処できず、目標無力化に数秒、その後の目標返還にも数秒を要する。1基のレーザー兵器の対処能力には上限があり、それを超える数の目標による同時または連続攻撃による飽和攻撃には対処できない。 ただし、この限界は、複数のレーザー兵器を搭載することにより緩和できる。 (5)硬化目標と対抗手段 出力の小さいキロワット(kW)級のレーザー兵器は、シールド、溶発耐熱材料、高反射材、高速回転などの対抗手段により、照射されたエネルギーを吸収、発散、反射させたり、照射点を逸らすことにより、レーザーの効力を弱めることができる。 小型の船は煙幕などによりレーザーの透過を減衰できる。ただし、対抗手段には費用がかかり兵器の重量も増加する。また、煙幕などを張ればポートの操縦者も周りが見えなくなるであろう。 (6)航空機や衛星に対する二次被害 レーザー光線は発射後は直進し続けるため、上空に向け発射された場合、衛星や航空機に損害を与えるおそれがある。 (7)搭載する艦艇への負担 レーザー兵器を搭載すれば、艦艇の空間を占拠し、重量積載能力を消耗し、レーザー発生電源や冷却に電力を消費する。レーダを横行する場合の影響も考慮しなければならない。 これらの要因は、艦艇にレーザー兵器を搭載する場合に、配置など艦艇の設計に大きな影響を与える。 4 レーザー兵器の各種目標に必要な出力 レーザー兵器の目標としては、次のようなものが挙げられる。 (1)ペルシア湾で使用が予想されるイランがすでに入手している多数の小型ボートの群れ (2)多くの国家や非国家主体に拡散しているロケット弾 (3)米海軍艦艇に対する情報収集、目標情報の収集、攻撃などに使用できる無人機 (4)ヒズボラが2006年にイスラエル艦艇に使用したとされ、国家のみならず非国家主体にも拡散している対水上巡航ミサイル (5)中国が開発している対水上弾道ミサイル 弾道ミサイルについては、直接無能力化することはできないレーザーでも、追尾、画像撮影などにより、わが方の弾道ミサイル防衛能力を高めるために使用できるであろう。 なお、光線の質(BQ)も無能力化の重要要因だが、BQは照準能力により左右される。その他のレーザーの威力を左右する要因としては、次のようなものがある。 ●大気中の吸収、散乱、撹乱 ●目標の表面でレーザーが動揺する度合いを示す、微小震動 ●レーザーに対する抗堪性を左右する目標の設計特性 目標に応じて無能力化に必要とされるレーザー兵器の出力には、以下の段階がある。 ●10kWの出力レベルでは、1〜2マイルの短距離の硬化されていない無人機 ●数十kWでは、無人機と一部の小型ボード ●100kWでは、無人機、小型ボート、ロケット弾、砲弾、迫撃砲弾 ●数百kWでは、上記目標のほか、有人機、一部のミサイル ●メガワット級では、上記のほか、射程約10マイル内の超音速対水上巡航ミサイル、弾道ミサイル 5 レーザー兵器の種類の特性と開発の現状 (1) ファイバー型SSL ファイバー型固体レーザーは、近く配備される予定であり、安価である。熱管理も容易で、艦艇への負担は少ない。信頼性は高く、光学的調整は必要がない。構造も単純である。出力は100kW以上に増加されBQも良好である。ただし、メガワット級の出力レベルに達する潜在力はないとみられている。スウィート・スポットに近く、スラブ型よりも眼への被害は少ない。 しかし、FELに比べると、射程が短く眼への危険性は高い。 この型は現在試験中のLaWS(レーザー兵器システム)で使用されている。米海軍は、この型のレーザーを無能力化、電子光学センサーの妨害、無人機対処、電子光学センサー誘導式ミサイルの対処、レーダ追尾能力の向上などに使用する計画である。またLaWSはそのまま搭載するか、既存のCIWSに追加装備する予定である。 LaWSは2009年から試験が開始され、これまで無人機との交戦試験に12度成功している。2014年には100Kw以上に出力が上げられ、今後さらに出力を増大させる予定になっている。 2014年夏から「ポンセ」に搭載され、作戦環境下での試験を実施中である。なお、CIWSへ追加装備するマウント型LaWS配備に要する費用は、1基約1700万ドルと見積もられている。 このほか、米海軍は対空機関砲に追加装備する約10kwの出力の戦術用レーザー兵器システム(TLS)も開発している。小型ボート対処と正確な追尾を目的としている。TLSは、2013年に数km離れた地上と海上において、数機の無人機の撃墜試験に成功したと報じられている。 (2) スラブ型SSL スラブ型固体レーザーは、射程がファイバー型の3倍あり、105kWが実現されている。BQは良好で、早期配備が予定されている。熱は多いが、対処は可能である。FELよりも艦艇への負担は少ない。 しかし、複雑な光学系を使用し、信頼性に劣り、整備コストもかかる。眼への危険性が大きい。 スラブ型のレーザーは、海上レーザー・デモンストレーション(MLD)により開発中であり、2009年に出力15kWのスラブ型を7本組み合わせて、105kWの出力試験に成功している。2011年には小型ボートに対処可能な出力のレーザー兵器を艦艇に搭載している。スラブ型レーザーは技術突破なしでも600kWまで出力を上げられると公表されている。 しかしメガワットにするのは容易とは見られていない。 (3) 自由電子レーザー(FEL) FELは波長を調整することができ、同じ装置で10kWからメガワット級への出力増強が可能である。スウィート・スポットに波長を合わせることができ、眼への害はない。排熱の管理も必要がない。 しかし、装置が巨大でコストかかり、艦艇にもまだ配備の予定はない。FELを振動や衝撃から保護し、低温装置が必要になる。 FELは、車載や航空機用にするには大きすぎるため、海軍のみで開発が進められている。FELは波長の調整が可能で、スウィート・スポットに合わせられるため、水分などの多い海上用のレーザーに適している。またメガワット級への増強も可能である。 14.7kWのFELが開発済みであるが、まだ作戦環境下での試験は行われていない。2015年度までに出力100kWのFELを開発する予定である。 ただし、当面はFELの出力を上げることよりも、まず技術的問題を実験室内で解決することに努力することになっている。 (4) 今後の課題 以下の諸点が今後の課題として残されている。 ●出力の向上とBQの改善 ●連続生産に適し、艦艇搭載、作戦時の使用、整備に数年間耐えられること ●目標発見、追尾、照射など、兵器システムとして完成すること ●艦艇の電源や冷却システム、戦闘システムとの統合 5 今後の展望 「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略」の打破を目指し国力を挙げて取り組むべき革新的兵器 レーザー兵器は、指向性エネルギー兵器(DEW)の1種だが、その他のDEWとして、高出力マイクロ波(HPM)兵器などがある。 2012年6月に、米海軍のDEW計画グループは、DEWに関する見通し、戦略、予定表についての報告書を作成した。その中では、DEWが「革新的(game changing)ないくつもの利点を持つ」と、極めて高く評価されている。以下はその概要である。 軍の将来の戦闘能力は最新の効果的な技術を迅速に取り入れるか否かに左右されるが、DEWはそのような革新的技術となる潜在力を持っている。陸海空、宇宙、サイバー空間などあらゆる戦闘空間において、DEWは、重大な影響を及ぼす潜在力を持っている。 特にDEWは、極めて速い交戦時間、安価な交戦費用、本質的に無限の弾倉、トータルの装備化費用の安さなど、革新的な利点をいくつも持っている。 DEWの致命的な、あるいは非殺傷的な各種の能力は、実験室でも野外でもすでにいくつもの試験により実証されている。出力が向上すれば、超音速巡航ミサイルにも対処でき、任務に応ずる致命度を選択することもできるようになるであろう。 また今後は、DEWの見通しと戦略、予定表、科学技術的評価、研究開発を各軍種、エネルギー省など関係国家機関を挙げて行うこと、必要な予算を確保すること、DEWが非国家主体にも使用されることを予期しDEWへの対抗手段やDEWについての政策や交戦規定の検討を進めることも勧告されている。 さらに、上記報告文書では、DE技術は、投資に対する長期的なリターンを保証するだけではなく、「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略など、高まりつつある脅威に対する司令官達の差し迫った作戦上の要求にも応じ得る、重大な利得をもたらすであろう」と明言されている。 このように、日本の防衛にとり最も深刻な脅威となっている中国のA2/AD戦略を打破しうる可能性を持っていることが明言されている。 日本としても、科学技術力の総力を挙げてこのDEWの研究開発、配備に向けて、尽力すべきであることは言うまでもない。そのための、予算や人材についても、国家資源を傾けて取り組む必要がある。 |