05. 2014年12月09日 07:58:01
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外交を台無しにするオバマ大統領 選挙資金集めの論功行賞で「素人大使」を続々指名 2014年12月09日(Tue) Financial Times (2014年12月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)アフガン駐留米軍、16年末までに完全撤退 オバマ大統領が発表 バラク・オバマ大統領の2期目の大使任命には、多くの疑問の声が上がっている〔AFPBB News〕 アンドリュー・ジャクソンの時代から、米国大統領はあまり後先考えずに、金持ちの友人を相手に外交官の職を競売にかけてきた。バラク・オバマ大統領も例外ではない。 映画「カサブランカ」の登場人物が言ったように、人々はオバマ氏の大使の選択に「驚いた、実に驚いた」と声を上げている。 だが、最近の憤りには、通常の偽善を超える要素がある。もし米国の公職に対するお金の支配力の拡大――そして、一見して米国の評判に無頓着なホワイトハウスの態度――をとらえるものが1つあるとすれば、大使の選択がそれだ。 赴任先を1度も訪れたことがない大使候補、ノルウェーが大統領制国家? ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の独裁的な統治スタイルが中欧諸国の一部で崇拝者を勝ち取っている時に、オバマ氏はテレビドラマ「ザ・ボールド・アンド・ザ・ビューティフル」のプロデューサーのコリーン・ベル氏を次期駐ハンガリー米国大使に指名した。 ベル氏は上院の公聴会で、ハンガリーについて、自分がほとんど何も知らないことを明らかにした。ハンガリーはプーチン風の傾向を持つ権力者、ビクトル・オルバン首相が率いる国だ。ベル氏は旧ソ連世界の一部における民主主義の弱さを熟知する権威ではない。また、恐らく、そうした民主主義を支えることに対する米国政府の利益にどっぷり浸かっているわけでもない。 だが、2012年の大統領選挙期間中にオバマ氏のために210万ドル集めた彼女は、資金集めについてはいくらか知っている。 そして、オバマ氏のために140万ドルの資金を集めたPRコンサルタントのノア・マメット氏がいる。マメット氏は次期駐アルゼンチン米国大使だが、同氏もアルゼンチンを1度も訪れたことがないと認めている。南米第2の規模を誇る経済国で、露骨な反米主義に傾きかけているアルゼンチンは、ソロモン諸島のような国とはほど遠い。同国のスタンスは重要な意味を持つ。 ノルウェーのスタンスも重要だ。ノルウェーはロシアの近くに位置する米国の同盟国で、将来について不安を感じている国だ。 オバマ氏は裕福なホテル経営者で選挙に多額の献金を行ったジョージ・ツニス氏を次期大使に指名した。ツニス氏の人事承認は、同氏もまた赴任先のノルウェーを訪問したことがなく、ノルウェーの制度が大統領制だと思っていると述べた後に棚上げされた(ノルウェーは王国だ)。 また、ツニス氏は、ノルウェーの連立与党に参加するある政党を「憎悪をまき散らす過激派分子」と表現した。同氏は政権に参画していない別の政党と取り違えていた。こうした例はほかにもたくさんある。 政治任用は今に始まったことではないが・・・ それがどうした、とオバマ氏の擁護者は言う。大使の任命は常にこうだった、というわけだ。 彼らの言い分にも一理ある。ジョージ・ブッシュ前大統領がロンドンに送り込んだ米国大使を考えてみるといい。ブッシュ氏は最初にケンタッキーダービーで財を成した馬のブリーダーの友人を派遣した。次に送り込んだのは自動車ディーラーだ。どちらも選挙の献金者だった。それでも米英関係は生き延びた。 さらに言えば、オバマ氏が最初にロンドンに派遣したルー・サスマン大使は、やはり政府の経験がない献金者だったにもかかわらず、成功した。政治任用の大使が皆、ホスト国で侮辱と受け止められるわけではない。サスマン氏の場合がそうだったように、大統領と密接な関係がある時には、時としてプロの外交官よりも効果的なこともある。 キャロライン・ケネディ米新大使、日本に到着 キャロライン・ケネディ氏は駐日米国大使に就任した〔AFPBB News〕 また、キャロライン・ケネディ氏の駐日大使任命のようなケースでは、本人の名声が役立つことがある。ケネディ氏は、オバマ氏の選挙運動に魅惑的なケネディ家の支持表明を与えた見返りに大使職を与えられた。 しかし、オバマ氏の擁護者は抗議しすぎる。最近まで、米国大使のポストはざっと10のうち7の割合でキャリア外交官に多く振り分けられ、大統領への献金者が約30%のポストを手に入れていた。 次第に疎外されるキャリア外交官を代表する外務協会(FSA)によると、オバマ大統領の2期目には、政治任用の大使の割合が41%に上昇したという。言い換えると、2008年以降、事態が悪化したということだ。 オバマ大統領の約束に反する行為 この事実は主に、オバマ氏の道徳的な欠点というよりは、むしろ米国の選挙にかかるコストの急増を反映している。だが、ダメージの一部は自ら招いたものだ。オバマ氏は大統領の座を目指して選挙運動を行った時、「ワシントンのビジネスのやり方を変える」と誓った。同氏は約束を守ったと言えるだろうが、有権者が解釈したような形で約束を守ったわけではない。 大使指名の傾向は、オバマ氏の別の誓約も損ねている。ブッシュ氏よりも、外交をずっと真剣に受け止めるという約束である。オバマ氏はいみじくも、ブッシュ氏は世界と関与する軍事的な手段に依存しすぎていると批判した。ベル氏は本人の専門分野では立派な人物に違いないが、彼女のような人物を大使に選ぶことは、この誓いを2つの点で台無しにする。 第1に、こうした政治任用は米国外交団の士気を一段と落とす。米国務省は野心的な大卒者を引き付けるのが困難になっている。大卒者は国務省には自分たちのキャリアパスを阻止するガラスの天井があることを知っているからだ。 もし恵まれた大将の職が1度も軍服を着たことのない素人に与えられたとしたら、ウエストポイント(米国陸軍士官学校)が才能ある軍将校を採用するのがどれほど難しくなるか想像してみるといい。 第2に、資格のない大使候補を選ぶことは、受け入れ国に悪いメッセージを送る。ベル氏と同様、筆者もハンガリーへ行ったことがない。だが、国民のムードは次第に反米に傾いていると思われる。米国については、自国の海岸線の先の世界に関して無知で、過去は過去と考える超大国というステレオタイプが巷に溢れている。 専門家をもっと登用せよ ワシントン在住がだいぶ長くなった経験から、筆者は現実が大きく異なることを知っている。米国の首都は地球上のどの都市よりも、世界の多くの地域に関する多くの専門家に満ち溢れている。その多くは国務省かシンクタンクで中間レベルの閑職を務めている。こうした人がもっと多く最前線に配置されたらいい。一部の人は現地の言葉を話すこともできる。 究極的には、国力を決定するのは経済的な強さだ。だが、米国の覇権が挑戦を受けている時には、ワシントンは友好関係をしっかり手入れしておく必要がある。その点で、オバマ氏の実績は全く不十分だ。世界最古の民主主義国でさえ、戦利品は勝者のものと言われる。だが、さすがに、これは度がすぎているのではないか? By Edward Luce http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42399 |