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シリアに関する、愚劣なサウジ-米秘密協定
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/--92fb.html
2014年10月29日 マスコミに載らない海外記事
ケリー-アブドゥッラー秘密協定と石油-ガス・パイプライン戦争
F・William Engdahl
2014年10月24日
Boiling Frogs Post
シリアといわゆるISに関する、秘密で愚劣なサウジ-米間の新協定の詳細が明らかになりつつある。協定は、地域全体での石油とガス支配と、サウジアラビアが世界市場を安い石油で溢れさせることによるロシアとイランの弱体化にからんでいる。詳細は、9月のアメリカのジョン・ケリー国務長官とサウジアラビア王の会談で決まっていた。意図しなかった結果が、ロシアの一層急速な、東側の中国やユーラシアへの接近だ。
お好み次第で、ISIS、あるいはIS、または、ISIL、あるいはダーシと呼ばれている組織に対するものだとされている最近のNATO爆撃作戦で、世界最大の石油地域で大戦争が行われる中で、最も奇妙な異常さの一つが、原油価格が劇的に低下しつつあるという事実だ。6月 ISISが、イラクのモスルとキルクーク周辺の石油が豊富な地域を突然占領して以来、b標準となるブレント原油価格が、112ドルから、約88ドルへと、およそ20%下落した。ところが、世界の石油に対する一日当たりの需要は、20%低下しているわけではない。中国の石油需要は、20%も低下しておらず、アメリカ国内のシェール石油の株は21%上がった。
起きたことは、OPEC内部の長年のアメリカ盟友、サウジアラビア王国が、市場を大幅値引きした石油で溢れさせ、OPEC内部での価格戦争を引き起こし、イランがそれに続き、石油先物市場手パニック空売りをしているのだ。サウジアラビアは、アジア向け販売の割り引き、特に重要なアジア顧客中国を狙って、原油を、これまでの約100ドルという価格ではなく、一バレル、わずか50から60ドルで提供していると報じられている。[1] サウジアラビアの財政的値引き作戦は、どう見ても、ウオール街で石油デリバティブ取引を支配しているごく少数のインサイダー有力者と結託したテロリズム金融情報局によるアメリカ財務省があやつっている金融戦争作戦だ。その結果が、市場パニックで、その勢いは、日々激しくなりつつある。中国は安い石油を買えて喜んでいるが、中国の親しい盟友、ロシアとイランは重大な打撃を受けている。
協定
リヤドに本拠を置くサウジアラビア石油政策・戦略予測センター理事長、ラシド・アバンミーによれば、劇的な価格崩壊は、OPEC最大の産油国サウジアラビアによって、意図的に引き起こされている。言われている公的な理由は、石油需要が軟化しつつあるグローバル市場で、新市場を獲得する為だ。アバンミーによれば、本当の理由は、イランの核計画に圧力をかけ、ロシアにシリアのバシャール・アル-アサド支援を辞めさせる為だ。[2]
ロシア天然ガスのウクライナ販売での財政的損失と、この冬EUの備蓄が低減する中、アメリカがそそのかす、巨大なEU市場へのロシア・ガス供給遮断の可能性と合わせれば、石油価格の圧力は、モスクワにとって、二重の打撃だ。ロシアの国家収入の50%以上が、石油とガスの輸出によるものだ。
アメリカ-サウジ石油価格操作は、アメリカの世界支配政策に反対する、いくつかの頑強な国々を、不安定化させることを狙ったものだ。標的には、いずれもロシアの同盟国で、アメリカの唯一の超大国に反対しているイランとシリアも含まれる。しかしながら、主要な標的は、超大国覇権に対する国家として最大の脅威、プーチンのロシアだ。戦略は、1986年に、アメリカがサウジアラビアと一緒になって、連中が世界をサウジの石油で溢れさせ、価格を一バレル、10ドル以下に崩壊させ、当時のソ連同盟国サダム・フセインのイラク経済を破壊し、最終的にソ連経済を破壊し、ソ連崩壊の道を開いたのと良く似ている。今回、狙いはロシアの石油収入崩壊が、アメリカ財務省のテロリズム金融情報局が計画したいやがらせの経済制裁と共に、ロシア国内の、プーチンに対する圧倒的な支持を劇的に弱体化し、最終的に彼を打倒する条件を作り出そうとするものだ。プーチンのロシアが、中国や他の国々と共に、欧米への依存を引き下げる主要な戦略的対策をとっていることもあり、多くの理由から、これは失敗する運命にある。実際、石油兵器は、最近の、経済力を国益に特化させ、ドル体制への依存度を引き下げるロシアの動きを加速している。もしドルが世界貿易用の、特に石油貿易の通貨であることをやめれば、アメリカ財務省は、財政的大惨事に直面する。この理由から、ケリー-アブドゥッラー石油戦争を、極めて愚劣な戦術と私は呼んでいる。
ケリー-アブドゥッラー秘密協定
9月11日、アメリカのケリー国務長官が、紅海の王宮でサウジのアブドゥラ王と会見した。国王は、元サウジアラビア諜報機関のトップ、バンダル王子を同席するよう招いた。協定は、サウジアラビアは、ワシントンの対ISISシリア空爆を支持し、ロシアの強固な同盟国で、イランの事実上の同盟国で、EUという新たな天然ガス市場を支配し、儲けているロシアのEU貿易を破壊するというサウジとUAEの計画に対する障害である、アサド打倒では、サウジを支援するという条件でまとまった。ウオール・ストリート・ジャーナルの記事ではこうある“アメリカとアラブ指導者達による何ヶ月もの根回しがあり、イスラム国に対して協力の必要性には同意したが、どのように、あるいは何時するかについては同意されていない。この過程で、サウジアラビアは、彼の滅亡を最優先と考えている、アサドと戦う反政府派の訓練を強化するという新たなアメリカの確約を引き出した。” [3]
サウジアラビアにとって、戦争とは、イスラム世界で大昔から競合している二大勢力のものを意味する。メッカとメジナという聖地の国、サウジアラビアは、スンナ派イスラム教世界における事実上の優位を主張している。サウジアラビアのスンナ派は、18世紀のイスラム教原理主義者、ムハンマド・イブン・アブド・アル-ワッハという名のサラフィー主義者にちなんでつけられた、超保守のワッハーブ派だ。タリバンも、ワッハーブ派サウジが資金提供する宗教組織の指示・支援で生み出されたのだ。湾岸の首長国やクウェートもカタール首長と同様、サウジのスンナ派ワッハーブ派に固執している。一方で、イランは歴史的に、イスラム教の少数派、シーア派の核心だ。イラク国民は、大多数の約61%がシーア派だ。シリアのバシャール・アル-アサド大統領も、シーア派の分派アラウィー派として知られているものの一員だ。トルコの約23%も、アラウィー派イスラム教徒だ。図柄を更に複雑にするのが、サウジアラビアと橋でつながる小さな島国バーレーンが、75%もの国民がシーア派なのに、支配者のアル-ハリファ家はスンナ派で、サウジアラビアと密接につながっていることだ。しかもサウジの最も石油豊富な地域は、ラスタヌラ石油施設で働いているシーア派イスラム教徒が多数派だ。
石油とガスのパイプライン戦争
イスラム世界内のこの歴史的断層線は休眠状態にあったが、アラブの春として知られているアメリカ国務省とCIAのイスラム聖戦が始まって、あからさまな戦争状態に変えられた。“国家の内部における国家”の形をとったオバマ政権内部に埋め込まれたワシントン・ネオコンの秘密ネットワークや、ワシントン・ポスト等の連中と同盟するマスコミが、ムスリム同胞団として知られているCIAお気に入りプロジェクトへのアメリカ秘密支援を擁護してきた。最新刊、『Amerikas’ Heiliger Krieg(ファシスト・アメリカの聖戦)』で詳細に書いた通り、ムスリム同胞団のテロリスト殺人狂信的集団とのつながりを、CIAは1950年代初期から醸成してきた。
ペルシャ湾地域全体で、既知の天然ガス埋蔵量資源を地図にすると、サウジが率いる、カタールとUAEが、スンナ派ISISを含む、アサドに反対する勢力に、何十億ドルも資金供給している動機がより明確になる。天然ガスは、21世紀に好まれる“クリーン・エネルギー”源となり、EUは、ガスにとって世界最大の成長市場だということが、ワシントンが、ガスプロム供給へのEUの依存を破壊して、ロシアを弱体化し、カタールの様な忠実な代理人経由で、EUを支配し続けようとしている主な理由だ。
現在知られている世界最大の天然ガス埋蔵地は、ペルシャ湾の中央部にあり、一部はカタールの、一部はイラン領海にまたがっている。イラン側は、北パースと呼ばれている。2006年 中国国営のCNOOCは、北パースを開発し、ガスを中国に輸送する為のLNGインフラを建設する契約をイランと締結した。[4]
ノース・フィールドと呼ばれるペルシャ湾のカタール側には、世界でロシアとイランに次ぐ、三番目の天然ガス埋蔵量がある。
2011年7月、シリア、イランとイラク政府は、歴史的なガス・パイプライン・エネルギー協定に調印したが、アサドを排除する為のNATO-サウジ-カタール戦争のさなかほとんど目立たなかった。費用は100億ドルで、完成までに三年かかると推計されているパイプラインが、ペルシャ湾の南パース・ガス田に近い、イランの港アッサルイエから、イラク領を経由して、シリアのダマスカスまでつながるのだ。協定は、レバノンの埋蔵量もあいまって、シリアを集結と生産のセンターにするものだ。ここは、イランからイラク、シリアとレバノンに至るまで、史上初めて地理的に開放された、地政学上、戦略的な場所なのだ。[5] アジア・タイムズ特派員のペペ・エスコバールが表現している通り、“イラン-イラク-シリア・パイプラインが、もし実現すれば、国民の大多数がシーア派である国々を経済的な鋼鉄のへその緒で、しっかりと結ぶことになる”[6]
イランとイラクの調印から間もない2011年8月16日、バシャール・アル-アサドのシリア石油相は、シリア中央地域、ホムス近くのカラ地域でのガス田発見を発表した。アサドが権力を握っていれば、ガスプロムが、シリア新ガス田の主要投資家、あるいは事業者になるだろう。[7] イランは、究極的には、パイプラインを、ダマスカスから、レバノンの地中海の港まで延長し、そこから巨大なEU市場に出荷することを計画している。シリアは、イランの南パース田地域からのイラン・ガスを購入するという現在のイラク協定の分と共に、イラン・ガスを購入しよう。[8]
現在、世界で最大のLNG輸出国で、主としてアジアへ輸出しているカタールは、イランとシリアが目をつけているのと同じEU市場を狙っている。それゆえ地中海へのパイプラインを建設したがっている。ここで親イラン派のアサド駆逐が必須となる。2009年、カタールは、バシャール・アル-アサドに、カタール北部のガス田から、シリアを経由し、トルコとEUへのガス・パイプライン建設を提案した。アサドは、シリア’ロシアとガスプロムとの長年の友好関係を理由に拒否した。この拒否と、イラン-イラク-シリア ガス・パイプライン協定とがあいまって、2011年、アラウィー派やシーア派“異教徒”を進んで殺害する狂信聖戦戦士、アルカイダ・テロリスト新兵に月給100ドルとカラシニコフを提供してサウジとカタールによるアサド権力に対する本格的攻撃を開始した。2011年春以降、オバマ・ホワイト・ハウス内部や周辺のワシントン・ネオコン・タカ派は右翼ネタニヤフ政府内の仲間達と一緒に、シリアが燃えあがるのを見て観客席で歓声を上げていたのだ。
現在、ウクライナとシリアにおける、アメリカが支援する戦争は、ロシアと中国を損ない、アメリカが支配する新世界秩序に対する、あらゆるユーラシア対抗軸を破壊する為の同じ戦略的戦争の二つの戦線に過ぎない。それぞれで、エネルギー・パイプラインの支配、今回は、特に、ロシアから、ウクライナ経由でEUへというものと、イランから、シリアを経由し、そしてシリア経由でEUにという天然ガス・パイプラインが戦略目標だ。アメリカとイスラエルが支援するISISの本当の目的は、ロシアと中国とイランの同盟者であるバシャール・アル-アサドの“カダフィ”式抹殺の準備として、経済を損なうべく、アサドの極めて重要な穀物サイロと石油精製工場を爆撃する口実を作り出すことだ。
狭い意味で、ワシントン・ネオコンが考えているのは、シリアを支配する者が中東を支配できるのだ。そして、アジアへの玄関口シリアから、ロシアという家への鍵を手に入れ、シルク・ロード経由で、中国という家への鍵も手に入れるのだ。
宗教戦争は、歴史的に、あらゆる戦争の中で最も残酷だが、今回の戦争も例外ではなく、特に何兆ドルもの石油とガス収入がかかっている場合には。シリアに関するケリー-アブドゥッラー秘密協定は、一体なぜ、9月11日に締結されたのだろう? ワシントンとリヤドとドーハ、更にはある程度までは、アンカラの聡明な策略家達は、自分達が促進している、あらゆる混乱と破壊の相関関係について考えることができず、自分達の違法な権力の基盤としての石油とガスの流れを支配することよりも先を見通すことができない為だ。彼等は、最終的な自らの滅亡の種を蒔いているのだ。
ウィリアム・イングドールは、『ロックフェラーの完全支配 ジオポリティックス(石油・戦争)編(原題:A Century of War: Anglo-American Oil Politics in the New World Order)』の著者。彼はBFPへの寄稿者で、この記事が最初に公開された彼のウェブ・サイトwww.engdahl.oilgeopolitics.netで連絡ができる。
注:
[1] M. Rochan, Crude Oil Drops Amid Global Demand Concerns, IB Times, October 11, 2014 http://www.ibtimes.co.uk/crude-oil-drops-amid-global-demand-concerns-1469524
[2] Nihan Cabbaroglu, Saudi Arabia to pressure Russia Iran with price of oil, 10 October 2014, Turkish Anadolu Agency, http://www.aa.com.tr/en/economy/402343-saudi-arabia-to-pressure-russia-iran-with-price-of-oil
[3] Adam Entous and Julian E. Barnes, Deal With Saudis Paved Way for Syrian Airstrikes: Talks With Saudi Arabia Were Linchpin in U.S. Efforts to Get Arab States Into Fight Against Islamic State, Wall Street Journal, September. 24, 2014, http://online.wsj.com/articles/deal-with-saudis-paved-way-for-syrian-airstrikes-1411605329?mod=WSJ_hp_LEFTTopStories
[4] POGC, North Pars Gas Field, Pars Oil and Gas Company website, http://www.pogc.ir/NorthParsGasField/tabid/155/Default.aspx
[5] Imad Fawzi Shueibi , War Over Gas-Struggle over the Middle East: Gas Ranks First, 17 April, 2012. http://www.voltairenet.org/article173718.html
[6] Pepe Escobar, Why Qatar Wants to Invade Syria, Asia Times, September 27, 2012, http://www.informationclearinghouse.info/article32576.htm
[7] Ibid.
[8] F. William Engdahl, Syria Turkey Israel and the Greater Middle East Energy War, Global Research, October 11, 2012, http://www.globalresearch.ca/syria-turkey-israel-and-the-greater-middle-east-energy-war/5307902
記事原文のurl:http://www.boilingfrogspost.com/2014/10/24/the-secret-stupid-saudi-us-deal-on-syria/
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