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イラク戦争が始まった2003年、バグダッドの中心部で米軍の侵攻を待ち構えていた綿井健陽(たけはる)というフリーの映像ジャーナリストがいた。彼は空爆下の惨状を撮ったり、米兵に「この戦争は虐殺じゃないか」と詰問したり―。それが日本のお茶の間に流れたことを記憶している。
撮り続けた映像を2年後、『Little Birds――イラク 戦火の家族たち』というドキュメンタリーにまとめた時、彼のイラクでの仕事は終わったと思っていた。
あれから10年、『イラク チグリスに浮かぶ平和』を見て、今なお綿井が戦争に関わり続けていることを知った。開戦時、空爆で3人の子どもを同時に失い、悲嘆にくれるアリ一家を中心にイラクのこれまでと今を記録したものだ。当時、アリは綿井と同年代の31歳。両親と妻、生き残ったもう一人の娘と暮らしていた。前作もこの一家に焦点を当てていたが、今作はそれをふまえて宗教対立の内戦に翻弄されるさまを追っていた。終わりなき戦争がそこにあった。
アリはイラン・イラク戦争で2人の兄、2人の叔父を亡くした上に、今度は子どもたちまで失った。仕事もなく、弟が営む青果店を手伝っていた。その弟がテロで殺され、アリは弟の家族の面倒を見ることに、しかし……。
綿井はアリ一家と関わりながら、10年前の開戦時に出会った人々も訪ねている。
その一人、フセインの肖像を倒して「これが自由だ」と叫んだ青年はどうなったか――彼はバスの車内で銃撃され、重傷を負っていた。自由を叫んでいた「あの時の記憶を消したい」と悔いていた。
映画の副題は、戦争で息子を失い、自らも右腕を失った初老の男が、家族と遊覧船に乗って漏らした「イラクの家族にとっては、このチグリスの川の上にしか平安がない」という言葉から取っている。“平和”のありがたさをしみじみとかみしめたくなる映画である。(『サンデー毎日』2014年11月2日
号)
*10月25日より東京・ポレポレ東中野ほか全国順次公開。写真(C)ソネットエンタテインメント/綿井健陽
映画『イラク チグリスに浮かぶ平和』公式サイト
http://www.peace-tigris.com/
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