01. 2014年10月07日 11:39:51
: nJF6kGWndY
相変わらず、頓珍漢だなw http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20141006/272188/?ST=print 「イスラム国」との戦いは泥沼化するのか
オバマ大統領が“突然”新しい戦争をはじめた理由 2014年10月7日(火) 瀬川 明秀 オバマ大統領は9月10日、武装勢力「イスラム国(Islamic States、旧ISIS)」の壊滅を目標に掲げ、新たな「戦争」をはじめた。 それ以来、欧米メディアは連日、イラクとシリアでの戦争の模様を伝えている。19日に国連安全保障理事会が、イスラム国を非難する議長声明を発表したことを受け、フランスがイラクにおけるイスラム国の拠点に対する空爆を始め、英国、ベルギーやオランダも軍事作戦への参加を表明するなど、米国を支持する有志連合の輪が拡大している。 しかしその一方で、アルジェリアのイスラム系武装勢力が「イラク空爆への報復」として仏人男性を殺害したり、フィリピン南部でもイスラム過激派集団「アブサヤフ」が人質に取っていたドイツ人2人を殺害すると警告するなど、イスラム国を支援するイスラム過激派勢力の「報復」テロも世界的な広がりを見せている。 米国を中心とする多国籍軍による軍事作戦は「イスラム国」を壊滅させることになるのか?それとも新たな泥沼の戦争への序章となるのか? 中東の安全保障やイスラム国の動向に詳しい国際政治アナリストの菅原出氏に話を聞いた。 (聞き手は瀬川明秀) 菅原 出(すがわら・いずる)氏 ジャーナリスト/国際政治アナリスト 1969年、東京生まれ。中央大学法学部政治学科卒。94年よりオランダ留学。97年アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。国際関係学修士。在蘭日系企業勤務、東京財団リサーチフェロー、英国危機管理会社役員などを経験。会員制ニュースレター『ドキュメント・レポート』を毎週発行。著書に『戦争詐欺師』(講談社)、『ウィキリークスの衝撃』(日経BP)、『秘密戦争の司令官オバマ』(並木書房)、『海外進出企業の安全対策ガイド』(並木書房)、『リスクの世界地図: テロ、誘拐から身を守る』(朝日新聞出版) オバマ大統領の安全保障政策に関してはこれまで連載やインタビューなどで、いろいろ紹介してきました。実は、菅原さんには3カ月前にも取材させて頂きましたが、最近まで、オバマ大統領は「他国への軍事介入には消極的」とのイメージがありました。それが、なぜいま、オバマ大統領は武装勢力「イスラム国IS」の壊滅を掲げた戦争に踏み切ったのでしょう。日本人にとっては唐突な感じがするのですが、その背景には何があったのでしょう? 菅原:オバマ大統領がイラク北部のイスラム国の拠点に対する空爆を命じたのは8月8日だったのですが、この時の作戦目標は「米国人の保護」と「人道支援」でした。この時オバマ大統領は、「米国人の職員たちを守り、山頂に追い詰められ食料や水もなく死に直面している数千ものイラク人市民の命を助ける人道的努力のために、限定された空爆作戦を行うことを命じた」と述べていました。 8月までは「壊滅」は想定してなかった? ええ。 菅原:当時イスラム国の武装民兵たちがエルビルに迫っていました。このエルビルというのはクルド自治区の首都がおかれているイラク北部の大都市で、過去10年間、イラク国内の内乱とはほとんど無縁の独自の発展を遂げ、イラクの都市とは思えないほど治安がよく、外国企業の進出も進んでいる都市です。当時、イスラム国がエルビルまで攻撃できるほどの能力を持っているとは思われておらず、多くの専門家が「エルビル危うし」の報道に衝撃を受けました。ここには米国のビジネスマンや政府の職員だけでなく、多数の欧米人や日本人も駐在していましたので、もしここがイスラム国に占拠されるようなことになれば、多くの外国人が人質にとられたり殺害されたりするリアルな危険がありました。 ですからこの時点での介入は、オバマ大統領が明言している通り、領事館で働く米国人外交官や文民たち、それに米軍のアドバイザーといった米国人たちを守るという自衛的なものだったと思います。当時の軍事目標も、「イスラム国のエルビルへの侵攻を止める」という防衛的なものであり、イスラム国を「壊滅」させるなどという攻撃的なものではありませんでした。しかし…。 オバマ大統領の「無策」ぶりに批判 ところが、その後事情が変わった? 菅原:はい。一つはメディアでも大々的に報じられた米国人ジャーナリストの殺害です。イスラム国は「米軍がイラク空爆を中止しなければ拘束していたジャーナリストを殺害する」と警告し、実際その通り実行しました。インターネットを通じてオバマ大統領を挑発して、米国人を惨殺する映像が世界中に流されると、米国内の世論はオバマ大統領の「無策」を非難する方に流れました。 ちょうど今年11月の中間選挙前ということもあり、共和党は「オバマ大統領のリーダーシップの欠如と弱腰が米国民の安全脅かしている」、として大々的なオバマ批判を展開しました。9月15日にニューヨーク・タイムズとCBSニュースが実施した世論調査では、オバマ大統領の外交政策に対する支持率は34%という過去最悪を記録し、オバマ氏が自信を持っていたテロ対策においても支持率は41%と過去最低まで下がってしまいました。オバマ大統領に対する全般的な支持率も下がり、2006年11月の中間選挙で大敗したブッシュ大統領の当時の支持率と同じくらいまで下がってしまったのです。ホワイトハウスは相当危機感を抱いたことでしょう。 基本的にこれ以上対外軍事介入をしたくないオバマ大統領が、今回このような「戦争」に踏み切った背景には、このイスラム国の問題で米国がリーダーシップを発揮しなければ、米国民の支持を失い、中間選挙で大敗してしまうという国内事情があったのだと思います。 実際今回、オバマ政権がイスラム国に対する空爆作戦を開始したことを、共和党は概ね支持しており、オバマ大統領に対する批判は、軍事オプションをとらないことではなく、地上軍を送らないことにシフトしています。しかし、米国民の大多数はいまだに地上軍の派遣には消極的な態度を維持していますので、今後共和党がオバマ批判を続けても、それが共和党支持に繋がるかどうかは微妙になってきました。 イラク戦争の悪夢再来? その地上軍の派遣ですが、結局のところ、米軍は地上部隊も派遣することになり、かつてのイラク戦争のような泥沼に入ってしまうのでしょうか? 菅原:オバマ大統領は繰り返し、「地上部隊は派遣しない」と明言し続けており、地上軍を派遣する可能性は低いと思います。9月17日にオバマ大統領はフロリダ州タンパにある米中央軍司令部を訪れて、集まった軍人たちに次のように述べています。 「イラクに派遣される米軍は、決して戦闘任務につくわけではないということだ。彼らは地上において自らの敵であるテロリストから自身の国を守るために戦うイラク軍部隊を支援するために行くのである。最高司令官として、私はあなたがたや残りの軍部隊を新たなイラクにおける地上戦に送ることはしない。10年におよぶ大量の地上軍の派遣の後、我々の持つ独特の能力を地上にいるパートナーたちの支援のために使い、パートナーたちが自分たちの将来の安全を確保できるようにすることの方が効果的なのだ。そしてそれしか長期的に持続する解決策はないのである」 ここまで明言している政策を変更するのは簡単なことではありません。ただここで問題なのは、「地上にいるパートナー」とは誰なのかということです。イラクにおいてはイラク政府があり、イラク軍が存在します。現在のイラクと米国は安全保障協定を締結しておりますので、イラク政府の要請に基づいて米国がイラクに軍事介入し、イラク政府に武器支援をしたり軍事訓練をすることができます。 「政府関係施設を警備するイラク軍」(撮影:菅原出) つまり、米国は基本的には「地上にいるパートナー」であるイラク軍を支援する形で空からの軍事作戦をすればいい?
菅原:いや。事はそんなに単純ではなく、クルド地域、スンニ派地域、スンニ派とシーア派の混在地域で地上のパートナーの能力が異なりますので、作戦の進展にも大きな差が出ています。特にスンニ派多数の地域において、米国は「パートナー探し」に苦労しておりまして、いまだ効果的な作戦ができずにいます。 またイラク軍の能力にも問題が多く、最近マーティン・デンプシー米統合参謀本部議長が議会証言で、「イラク軍50個旅団のうち、パートナーとして信頼できるのは26個旅団に過ぎず、残りの部隊は敵の浸透を受けていたり、リーダーシップが欠如していたり、宗派抗争があったりなど問題が多い」と証言しています。 シリアはイラク以上に困難 シリアは? 菅原:それ以上に困難なのがシリアです。シリアではイラクと違い、米国はアサド政権を支援することができません。イスラム国はアサド政権と敵対していますので、アサド政権の軍隊を支援してイスラム国を鎮圧させることができればシンプルなのですが、米政府は「民衆を弾圧するアサド政権は正統性を失っている」という政治的な立場をとっており、アサド政権と敵対しています。つまり、シリア内戦においてアサド政権とイスラム国いずれの勢力とも敵対しています。 オバマ政権はシリアでは地上のパートナーなしで空爆を開始してしまったということですか? では結局米軍の地上部隊を派遣せざるを得なくなるのではないでしょうか? 菅原:オバマ政権は、シリアでアサド政権に対する反政府武装闘争を展開している勢力の中で、イスラム国ではない穏健な組織を支援・育成してアサド政権及びイスラム国と戦わせるという方針を示しています。 アサド政権と敵対する反政府勢力の中には、イスラム国の他にもアルカイダ系の「ヌスラ戦線」や「コラサン・グループ」といったイスラム過激派が多数いるのですが、米政府はその中でも「穏健派」の「自由シリア軍(FSA)」の戦闘員たちを支援・訓練するとしています。実際米政府の計画では、今後1年くらいかけてFSAの要員5,000名をサウジアラビアで訓練する予定だということです。 FSAはシリア反政府勢力の中でも一番弱い勢力で、その支配地域はシリア全体の国土の5%にも満たないと言われています。とてもではないが、アサド政権やイスラム国を倒せるような組織ではなく、これから1年かけて5000人訓練したとしても、その状況が変わるとは思えません。 これまでの米軍の空爆作戦は、上空から見えるイスラム国の軍事拠点、例えば軍事訓練施設だとか検問所や監視施設、それに軍用の車両や装甲車などを潰すことを目的にしています。それから「イスラム国」の石油密輸を阻止するために、彼らが利用している中小の違法な製油所なども破壊しています。もちろん、こうした攻撃はそれなりに効果がありますが、イスラム国とすれば重要な拠点を地下の施設に移したり、一般市民の多数居住する市街地に移したりするでしょう。 上空から見える軍事施設にはイスラム国の末端の戦闘員はいるでしょうけれど、指揮官や幹部はより安全な場所にいるはずです。 彼らがどこに隠れていて、そうした隠れ家を攻撃する第二段階の攻撃には、地上のパートナーがどうしても必要になってきます。敵の居場所を発見するためのインテリジェンス活動だとか、一般市民と同じエリアに居住するイスラム国幹部だけを急襲するような作戦には、機動的で優れた地上の部隊が必要になりますから。 でもオバマ大統領は「地上部隊は派遣しない」と言いきっていますし、政治的にも再び大規模な地上軍を中東に派遣するような作戦は支持を得られないでしょう。そこでオバマ大統領がしきりに言っているのが、近隣のアラブ諸国に軍隊を出してくれ、ということなのです。9月7日に米NBC放送の人気番組「ミート・ザ・プレス」のインタビューに答えたオバマ氏は、「我々はスンニ派国家の関与を必要としている。サウジアラビアだけでなく、我々のパートナーであるヨルダン、アラブ首長国連邦、そしてトルコだ。ここは彼らの近隣であり彼らこそ脅威にさらされているのだから、彼らがもっと関与すべきだ」と述べていました。要するに地上部隊はこれらの国々に出させようと考えているのです。 どの国が地上部隊を派遣するのか? しかし、今のところ欧州諸国だけでなく近隣アラブ諸国からも地上部隊を派遣するという提案はありませんよね? イスラム国はシリアとイラクをまたがる広大な地に事実上の国家を維持することになるのでしょうか 菅原:近隣諸国のトルコ、サウジアラビアやカタールは、イスラム国よりもむしろアサド政権が大きな脅威だと考えているので、米国の要請に応じてホイホイと地上部隊を派遣することはできません。これらの国々では「今、イスラム国だけを攻撃してしまえばアサド政権を強くすることを助けるだけ」との見方がいまだに根強くあります。またこれらの国々はいずれも国内に相当数の「イスラム国支持者」を抱えていますので、米国の軍事作戦に深く関与してしまうと、国内で報復テロを招く恐れもあり、米国への協力はほどほどにという力学が働いてしまいます。 いろんなベクトルが合成された結果、どちらに向かうのでしょう? 菅原:こう考えていくと、当面シリアにおいては、派手な軍事作戦よりも、イスラム国の資金源を止めたり、シリアへの外国人の流入をストップさせるといったインテリジェンス作戦が中心になると思います。ここで鍵を握るのはシリアと長い国境線を有し、イスラム国の事実上の補給ラインを提供しているトルコの存在だと思われます。 イスラム国はシリアやイラクで占拠した油田や製油施設から石油を密輸出して莫大な富を稼いでいると言われていますが、トルコ南部の港を通じてタンカーで石油を密輸出するネットワークを通じて、イラク・シリアの石油を売りさばいているとされています。この密輸ルートは、サダム・フセイン時代から続いていて、長年にわたって構築されてきた非常に強固で組織化されたネットワークです。 この密輸にかかわる組織もトルコ国内に広範囲に及んでいると言います。トルコ南部からタンカーでアジア方面に輸出されていると言われており、トルコ国内でも秘密裏に販売されているとされていますので、このイスラム国の密輸利権に絡んで莫大な利益を得ている人や組織が広範囲に存在していると考えるべきでしょう。つまり、オバマ政権は「イスラム国を壊滅させる」ためには、このブラックマーケットを潰さなければならないことになり、外交や諜報協力を通じてこうした国際的な取り組みを進めていかなければならないでしょう。 中東の日本企業は なるほど、そう考えるとこの戦争は長引きそうですね。中東で活動する日本企業はどんなことに注意しなくてはならないのでしょうか? 「イラク南部バラスの石油地帯」(撮影:菅原出) 菅原:9月26日にヘーゲル米国防長官が、「我々の外交、経済、そして軍事作戦を持続させるには長期にわたる米国及びそのパートナーや同盟国の関与を必要とします。これは簡単で短期間の努力では済みません」と述べています。当然今後数年間、軍事作戦だけでなくあらゆる方面でイスラム国の活動を封じ込める作戦が展開されることになるでしょう。
しかしそうなれば当然、イスラム国やその支持勢力は米国やその同盟国や協力国に対して報復攻撃を行う可能性が高まるでしょう。すでにアルジェリアでフランス人がイスラム過激派組織に殺害されていますが、これはほんの始まりに過ぎないのかもしれません。ここで注意しなくてはならないのは、イスラム国の影響力が中東やアフリカに止まらず、欧州やアジアにも広がっている点です。 すでに英国やオーストラリアでテロ警戒レベルが上げられていますし、マレーシアでもイスラム国に感化されて「東南アジアのイスラム国」をつくろうと考える新興イスラム過激派組織が出来ており、先日当局がテロ容疑で同組織のメンバーを逮捕する事件が起きています。また、イスラム国と実際に関係を持ったり感化された組織だけでなく、全く関係がなかったとしても、「イスラム国の同盟組織や関連組織」を名乗って事件を起こせば、世間の注目を集めることができるようになりました。騒ぎを起こして注目を浴びようと考える様々な勢力が、今後「イスラム国」という「ブランド名」を使って騒動を起こす可能性も排除できないでしょう。 それと逆に国家が反政府勢力を弾圧する理由として、その反政府勢力や少数民族と「イスラム国」の関係をでっちあげて弾圧を正当化するといった行動をとる可能性も十分に考えられるでしょう。 海外で活動する日本企業は、この新しい対テロ戦争がシリアやイラクに限定されるのではなく、欧州やアジアを含めていろんな地域に波及をする可能性を考慮して、海外情報に注意を払う必要があるでしょう。 このコラムについて キーパーソンに聞く 日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。 |