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(ニューヨーク)― シリアのイドリブ県で米軍が行ったとみられるミサイル攻撃で、少なくとも7人の一般市民が死亡した。武力紛争法違反の可能性を念頭においた調査が必要だ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2014年9月25日のマスメディアに対する声明内で米国防総省のジョン・カービー報道官は、米国による攻撃でシリアの一般市民に死傷者が出たという報告を検証したが、一般市民の死について「現地から信頼に足る報告」を米軍は受けていないと述べた。
地元住民らがヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところでは、9月23日早朝にイドリブ県北部の村落Kafr Deryanで、少なくとも男性・女性がそれぞれ2人、子ども5人が死亡した。未確認ではあるが、男性2人はイスラム過激派組織アルヌスラ戦線のメンバーだったという情報がある。これら一般市民が、米国の保有するトマホーク巡航ミサイルにより殺害されたという目撃者証言と一致する動画もある。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東局局長代理のナディム・アウリーは、「シリアにおいて米国および有志国は、一般市民への危害を避けるために実行可能な措置をすべてとるべきだ」と述べる。「米政府は一般市民が犠牲となったことで、不法の可能性がある当該攻撃を調査し、その結果を公表すべきだ。その上で、不正行為が認められた場合には適切な救済措置を約束すべきだ。」
ヒューマン・ライツ・ウォッチにスカイプを通じて証言した地元住民たちは、午前3時半ごろ、武器庫を含むアルヌスラ戦線の施設に一連のミサイルが直撃したという。当該施設はKafr Deryanから約1キロに位置していた。村の住民2人は、その後間もなくして今度はミサイルが村内を直撃し、少なくとも子ども5人、女性2人、男性2人が死亡したと証言。犠牲者の名前もすべて挙げた。証言した住民のうち2人は、死亡した男性2人は一般市民だったとした一方で、3人目の証言者は彼らがアルヌスラ戦線のメンバーだったとしている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは独自にこれら男性の身元を特定できず、また攻撃対象に該当する戦闘員だったかについても確認できていない。攻撃時に周辺には正当な軍事目標がなかった可能性のあるなか、少なくとも7人の一般市民の犠牲が明るみに出たことで、当該攻撃が武力紛争法に抵触するのではないかという懸念が深まる。それゆえ調査が実施されるべきだろう。
アルヌスラ戦線部隊は村から1キロほど離れたところにある施設を拠点にしていた(最初にミサイルが直撃した施設)が、村内の直撃現場周辺には同戦線の建物や検問所、車両などは全くなかったと3人の地元住民全員が証言している。9月24日付けのワシントンポスト紙によると、「シリアのイドリブ県北西部にある村落Kafr Deryanで今週あった空爆で、アルカイダ系過激派組織アルヌスラ戦線の拠点にいた約50人の戦闘員が死亡した」と反体制派の戦闘員たちが語ったという。地元の監視団体「違反行為の収集・検証センター (The Violations Documentation Center)」もまた、9月23日にKafr Deryanで死亡した11人の戦闘員を特定したと述べている。同センターはこれら戦闘員の氏名を公表せず、死亡した正確な位置および状況についても明らかにしなかった。
ヒューマン・ライツ・ウォッチに犠牲者9人の氏名を提供した3人の住民によると、犠牲になったのは当時ある2軒の民家にいた人びとだ。最初の家で死亡したのは、ラムジャさんと彼女の息子マフムード・ジュマ・モアズさんほか2人の子ども、ザイナブ・ムハンナ・バラカットちゃんおよびサファ・ムハンナ・バラカットちゃんの4人。2軒目ではリーム・アルハジさんと彼女の息子モハマドとバスムラ・ジャージャジさん、そして夫のアブデル・ハミド・モハマド・ジャージャジさん、そして第2の男性サフワン・ヤーヤ・イスカフさんの5人が死亡した。
ヒューマン・ライツ・ウォッチと話したある地元活動家が9月23日にユーチューブに投稿した動画には、負傷した一般市民数人と攻撃直後の様子が映っている。シャム・ニュース・ネットワークが投稿したほかの動画には3人の子どもが映っており、ミサイル攻撃でうち2人は死亡、1人は負傷したように見受けられる。前述の活動家がユーチューブに投稿したもう1つの動画には、子ども2人が攻撃後に急いで医療手当を施されている様子、別の動画では男性の犠牲者ががれきの中から引っ張りだされる様子が確認できる。この男性は、地元住民の1人がラムジア・マフムード・ジュマ・モアズさんと特定した。
前述の活動家は、更に3人の子どもを含む6人の一般市民が攻撃で死亡したとしているが、ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれについて確認できていない。彼はまた、女性と子どもを含む15人ほどが負傷したと述べている。
米国防総省は9月23日にフェイスブック上で声明を発表。同日に米中央軍が、アレッポ県西部を拠点にするアルカイダ系過激派組織「ホラサン集団」に8回の攻撃を実施し、同省がいうところの「米国および西側諸国の利を損なう差し迫った攻撃構想の粉砕」をしたと認めた。同省は空爆地域の特定をさけ、アレッポ県西部に位置するKafr Deryanへのいかなる攻撃についても詳細を発表しなかった。
「人権のためのシリア・ネットワーク(SNHR)」の報告によると、Kafr Deryanへのミサイル攻撃で直撃を受けたのは、武器庫を含むアルヌスラ戦線本部だという。同ネットワークはしかしながら、武器の隠し場所への米軍攻撃で起きた二次爆発で、100メートルほど離れたところにある民家が崩壊し、12人の一般市民も犠牲になったとしている。これら犠牲者の氏名にはヒューマン・ライツ・ウォッチが収集した目撃者証言と一致するものも含まれる。
一方で証言した3人の地元住民は、死亡した一般市民は全員自宅を直撃されたとしている。うち2人は破壊された民家の現場で武器の残骸を見たと述べており、これはミサイルの直撃が死亡者を出したことを示すものだ。
ヒューマン・ライツ・ウォッチと話した前述の活動家は、攻撃の約10分後には現場となった2軒の民家に到着し、ほかの活動家たちとともに攻撃で使われた武器の残骸を収集、それを攻撃後の様子と併せてビデオにおさめ、ユーチューブに投稿したと述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは彼のビデオ画像を検証し、米国および英国政府のみが保有するトマホーク巡航ミサイルのターボファン・エンジンの破片を特定した。米国防総省によると、9月23日の攻撃では空爆と併せて駆逐艦アーレイ・バークおよびフィリピン・シーから47発のトマホーク巡航ミサイルを発射したという。同日の攻撃に英軍は参加していない。
村への攻撃が軍事目標を直撃せず、一般市民に危害を与えたことを複数の目撃者証言が示しており、そうであればこの攻撃は戦闘員と一般市民を区別しなかったという理由又は期待される軍事的優位性に見合わない、一般市民への不当な重過失を犯したという理由で、武力紛争法違反である。米政府はこのKafr Deryanへの攻撃をはじめ、武力紛争法違反の可能性が高い事案はしっかり調査し、結果を発表すべきだ。そして過失が認められた場合には、確実にアカウンタビリティ(真相究明・責任追及)を実現し、適切な救済措置をとる必要がある。更に、今後の攻撃において一般市民への危害を最小限に抑えるため、実行可能なすべての予防措置を講じるべきだ。
前出のアウリー中東局長代理は、「シリアの多くの地域で一般市民は、シリア政府による空爆の絶え間ない脅威にさらされ続けている」と述べる。「米国政府は、米国の攻撃からこれらの人びとを守るのに欠かせないあらゆる措置をとる必要がある。」
http://www.hrw.org/ja/news/2014/09/28-0
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