10. 2014年9月17日 11:12:26
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22世紀になって、国家は入れ替わっても、この手の紛争は無くなりそうもないな http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41727 イスラム国との戦い:茨の道 2014年09月17日(Wed) The Economist (英エコノミスト誌 2014年9月13日号)
米国の計画は悪くはないが、成果を上げるまでには不安になるほど長い時間がかかるだろう。 シリアで対イスラム国空爆の用意、米大統領が表明 9月10日、ホワイトハウスで国民向け演説を行うバラク・オバマ米大統領〔AFPBB News〕 バラク・オバマ大統領が9月10日に米国民向けに演説を行った際、その言葉はイスラム国(IS)のみに関わるものではなかった。 アルカイダ以来最も深刻なテロリストの脅威、ISという「がん」に対抗する大統領の戦略は、自らを飲み込んだ混沌の克服に中東自身が取りかかることができなければ機能しない。 同様に米国も、、外交政策を縮小したこれまでの年月の間に失った地位を多少なりとも回復できなければ、持続的な対IS連合のリーダーとして振る舞うことはできない。 それゆえ、オバマ大統領が言うところの「米国の最高のリーダーシップ」は、テロとの戦いであると同時に、米国の力に疑問を抱く人々に対する反撃でもある。 オバマ大統領の戦略は、ISを軍事的、財政的、思想的に「弱体化させ、最終的には撲滅する」ために、西欧とアラブ諸国からなる連合の結成を呼びかけるものだ。たとえ国連の承認がなかったとしても、この連合はアラブおよびイスラム教徒の支援を根拠として、正当性を得るというわけだ。 米国はイラク、さらに必要な場合はシリア領内においても、ISを空爆攻撃する。米国はクルド人を支援するほか、シーア派偏重により弱体化し、ISに敗北して壊滅状態にあるイラク軍を立て直す。さらに米国は、シリアで穏健派の反体制勢力を結集させる。海兵隊は派遣されないが、米国人の教官と特殊部隊が大きな役割を担うはずだ。 オバマ大統領が積極策に出たのは正しいし、こうして計画もできた。しかし、米国人は覚悟を決めるべきだ。仮に成功するとしても、その前に長い苦闘の日々が待ち構えていることは確実だからだ。 ISは過去の存在になるか? これまで、オバマ大統領はイラクが「主権を回復し、安定し、自立した」という誤った判断を下してISの脅威を軽視し、バシャル・アサド政権に対する一般市民の反乱が起きた後も、シリア情勢の悪化を放置してきた。 こうした姿勢も原因となって、ISが中東を混乱に陥れている。ISはシリアのかなりの部分を占領し、不満を抱えるスンニ派に訴えかけて隣国のイラクを破壊しようとしている。野放しにすれば、ヨルダン、レバノン、さらにはイスラム教で最も重要な聖地(と広大な油田)が存在するサウジアラビアにまで進出するかもしれない。 ISは既に、その進路に迷い込んだあらゆる欧米人にとって脅威になっているうえ、欧米出身の聖戦(ジハード)戦士が、生まれ育った欧米諸国に戻って攻撃を仕掛けてもおかしくない。 イスラム国、「英国人の人質を処刑」 動画公開 イスラム国のメンバーによる米国人殺害で、米国の世論は介入支持に大きく傾いた〔AFPBB News〕 オバマ大統領が自らの計画に勝算があると考えるのには根拠がある。 米国の世論は、以前は中東の悲惨な争いに再び関与することには反対だった。しかし、最近になって2人の米国人が斬首により殺害されたことで、国民は今では介入を支持している。 同様に、米国の存在感低下に乗じて勝手な振る舞いを見せていたイランやサウジアラビア、トルコ、カタールなどのイスラム諸国は、いずれもISに恐れるべき要素を見いだしている。これらのイスラム諸国は、ISを制止するための幅広い軍事行動を組織できるのは米国のみであることを認識している。 米国のジョン・ケリー国務長官は支持を取り付けようと、中東諸国を歴訪した。サウジアラビアはシリアの穏健な反体制派向けの訓練キャンプ設置に同意している。 そして最後に、オバマ大統領は、ISが実際には見かけよりも脆弱であることを期待するだろう。ISが成功した1つの要因は、急速に勢力を伸ばした神秘性にある。もし戦闘で敗北して無様な姿をさらせば、消滅するかもしれない。 行く手に待ち受ける難題 しかし、オバマ大統領に託された課題は極めて困難なものだ。大統領にはアラブ諸国からの幅広い支持が必要だ。ISはイラクとシリアの国内に押し込めておかなければならない。さもないと、ISは逃げ場を確保して立て直しを図るはずだ。 イラクでは、オバマ大統領はISと共闘しているスンニ派の一部を引きはがして、ISを弱体化させる必要がある。スンニ派を説得し、ISと共闘する代わりにイラク政府と運命を共にする道を進んでもらいたい、というわけだ。しかしハイダル・アバディ氏率いるイラクの新しい「挙国一致」内閣は脆弱で、スンニ派の政権参加も形ばかりになっている。 シリアでは、アサド大統領と戦っていて、なおかつISを打ち破る必要性を理解している穏健な反体制派を増強する構想だ。ゆえに、仮にアサド大統領と同盟を組むようなことがあれば、これはモラルの面で一貫性に欠けるだけでなく、自滅につながっただろう。 しかし、穏健なシリア反体制派を結集する努力はこれまで十分とは言えない。ISやアサド大統領に対抗できる存在になれるかどうかは、まだ不透明なままだ。 それゆえ、オバマ大統領は時間を必要としている。イラクがスンニ派も信頼できる国家を築き、米国が新生イラク国軍を訓練して同国が再び自国軍の支配下に置かれ、シリア反対派がアサド大統領に政治的解決策の受け入れを迫れるほど強大な勢力になるまでの間、オバマ大統領は空軍力を使ってISを抑え込まなくてはならない。 これらの課題を成し遂げるには、イラクでは何カ月、そしてシリアでは何年もかかるだろう。 ある点で、時間はオバマ大統領に味方している。ISの残虐性と不当性は、最も強硬な立場を取る人々以外には全く受け入れられていない。しかし、他の点では、時間は大統領の敵だ。米国の政治が、忍耐心という美徳を発揮することはまずない。 ISに集団で対抗しようとしている国々にしても、一時的に利害関係が一致しているにすぎない。遅かれ早かれ、これらの国々は再び対立し始めるはずだ。連携が弱まれば、計画全体の勢いと正当性が失われてしまう。 オバマ大統領に何より求められること 成功の可能性を最大にするためには、どんな連合であれ団結が不可欠だ。ゆえにオバマ大統領は、これまでの在任期間には見られなかった、大統領個人による持続的な外交への関与を示す必要がある。また、米国の攻撃力に関する潜在能力を誇示しなければならない。これは各国がオバマ大統領に背を向けるのをためらうよう仕向けるために必要だ。 しかし何より、国内問題に集中することを望んでいた大統領に必要なのは、国外においても最後までやり遂げようとする決意である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41715 イスラム国との困難な戦い:武器供与のジレンマ 第2次大戦後の方針を転換したドイツ、日本にも他人事ではない? 2014年09月17日(Wed) 川口マーン 惠美 中東の混乱は激しい。イラク、シリアで猛威を振るっている武装テログループ「イスラム国」の伸長が日に日に明確になってくるにつれて、イスラエルとハマスの戦闘も、ウクライナの内戦も霞んでしまった。 シリア内戦で対応を誤った西側諸国と”優秀な”イスラム国 西側はこの期に及んで、イスラム国を駆逐するため、シリアのアサド大統領と共闘しようかと考えだした。 ドイツメディアは、“さらに悪辣な敵(←イスラム国のテロリスト)を成敗するための悪魔(←アサド大統領)との結託”などと書いているが、非常に言い訳がましい。アサド大統領は最初から、「私の敵は民主勢力ではなく、イスラムテロリストだ」と言っていた。 アサド大統領が民主的な大統領だとは言わないが、イスラム国よりは民主的だろう。アサド政権下では、キリスト教が禁止されていたわけでもない。 イスラム国、シリア北部の空港掌握 激戦で500人死亡 NGO シリア北部ラッカを戦車で行進する「イスラム国」の戦闘員たちを写したとされる画像 ©AFP/HO/WELAYAT RAQA〔AFPBB News〕 そもそも、イラクのフセイン大統領やリビアのカダフィ大佐を除き、エジプトのムバラク大統領を失脚させても、その中の一国たりともアメリカの言う民主化など実現できていない。それどころか、もっと酷くなった。 なのに、なぜ、西側はアサド大統領を叩くことを止めないのだろうか。毒ガスが使用されたときも、下手人はテロリストではないかという情報がたくさん上がっていたが、西側はそれさえ完ぺきに無視して、犯人はアサド政府軍であると最初から決めつけていた。 ようやく最近になって、アサド政権に立ち向かっている民主勢力はいるにはいるが、極めて脆弱で、政府軍が戦っているのは主にイスラム国であるという報道が為され始めた。しかし、時すでに遅しだ。シリア国土の3分の1は、もうイスラム国に掌握されている。 イスラム国は、中世のような精神世界を構築しようとしてはいるが、その思想とは打って変わって、組織の運営力は決して前近代的とはいえない。それどころか、最新の知識を持つ優秀な人材を抱え、高度なロジスティック展開と、超近代的な軍事システムを扱う能力を持っているらしい。 そうでなくては、砂漠の中、シリアからイラクに続々と武器を輸送したり、これほど広大な地域をここまで迅速に掌握したり、空港やら油田やら水力ダムを問題なく制御することはできなかっただろう。 彼らがタリバンと違う点は、住民を味方に付ける方針が明らかなことだ。掌握した地域では、即座にインフラを改善し、税制(貢納金?)を整備し、住民がそれまで行っていた仕事をそのまま続けられるように新しい法律を敷いていく。 もちろん、女性は頭のてっぺんから足の先まで隠さなければならず、おそらく教育も満足に受けられなくなるのかもしれないが、元々、女性の権利はそれほど強くなかった場所だ。抵抗は私たちが考えるほどはないのかもしれない。 それよりも住民にとっては、ようやく秩序と平和が戻ってきたことの方が喜ばしいはずだ。だから、イスラム国はさらに力を付けていく。しかし、そのようなことはほとんど報道されない。 報道されるのは、イスラム国の残酷な面ばかりだ。残酷なシーンには、もちろん事欠かない。これが現在進行形の出来事であるということが、にわかには信じられないほどだ。アルカイダが、イスラム国は残忍だと非難している。 クルド族への武器供与を決めたドイツ 彼らは、イスラムの、しかもスンニ派の教義以外は受け付けず、逆らう異教徒を世界から消そうとしている。異教徒の男は殺し、女は彼らの子供を産ませるか、奴隷にするか。もちろん、西側としては放っておくわけにはいかない。 そこでアメリカは空爆を始め、イギリスとフランスも軍事介入を決めた。ドイツはというと、軍事介入はしないが、かといって、人道的な物資を送るだけでは切り抜けられなくなり、イスラム国の攻撃の的となっているクルド族に武器を供与することにした。 現在、計画されているのが、500台の対戦車ミサイルと1万6000丁の主に小火器などで、計700億ユーロ分。その他に、500億ユーロの人道的援助物資、難民受け入れも予定している。 しかし、人道的援助はいいとして、武器援助の是非をめぐる論議は、すでに供与が決まった今も続いている。武器を援助するということは、これを使って反撃してくださいということで、火に油を注ぐ効果はあっても、戦闘の鎮静にはつながらないからだ。 クルド族は、イラク、シリア、トルコ、イランにまたがった地域に推定2500万人から3000万人住んでいると言われている。国を持たない民族では世界最大だ。しかし、このままではイスラム国の暴虐のせいで滅亡に追い込まれる可能性が高い。滅亡はしないまでも、クルド族として存在することはできなくなるだろう。 ドイツ政府としては、目の前で起こっているジェノサイドを黙って見ているわけにはいかない。とはいえ、派兵は難しいので、せめてクルド族が反撃できるための武器を送るという苦渋の策が、今回の援助だ。反撃しても滅亡するかもしれないが、黙って滅亡するよりは戦ったほうがよいということだろう。 平和な日本で、戦争は悪だと言っている人たちは、こういう究極の状態に陥った時のことを、もっとちゃんと考えてみた方がよい。ドイツ人だって、戦争は良いことだなどと思ってはいない。当のクルド族だっておそらく思ってはいないだろう。 しかし、イスラム国で異教徒の首を切っている人たちに向かって、「戦争は悪いことです。私たちは武器を持ちません。話し合いで解決しましょう」と言っても、それが通用しないことは火を見るよりも明らかだ。 供与した武器が自らに向けられる茶番 武器供与に関する問題は他にもある。クルド族には、イラクのペシュメルガとトルコのPKKという二つの大きなグループがあり、ペシュメルガは、イラク北部のクルド自治区のいわゆる軍隊だ。 ペシュメルガはクルド族の独立をめざしており、何十年にもわたってイラク政府と対立してきた。サダム・フセイン大統領の生きていたころから、イラク政府の宿命の敵である。 ドイツ政府は、このペシュメルガに武器を援助しようとしている。現在、イラク政府はほぼ解体しており、何の力も無いとはいえ、一応まだ一個の国家であり、ドイツ軍がペシュメルガへ武器を与えるなどとは迷惑千万。武器の矛先がいつ自分たちに向かってくるかわからないからだ。 そもそも、ドイツが外国の一武装グループに武器を供与するというのも変な話で、それが許されるなら、ロシアがウクライナで親ロシア勢力を人的・物的に援助するのも問題ないし、チベットやウイグルにも、民族のアイデンティティーを懸けて戦っている武装グループはあるのだから、そこにも武器援助をしてよいということになる。 一方、トルコもドイツがクルド族に武器を供与することを快く思ってはいない。ドイツがペシュメルガに与えた武器は、共闘中のPKKに渡る可能性が高い。PKKはトルコでは禁止されており、EUもアメリカもPKKをテロ組織と認めている。PKKが強くなることをトルコは嫌う。そのトルコを同盟国として持つドイツは難しい立場にいる。 さらに考えられるのは、イスラム国がますます優勢になり、クルド族が武器を奪われてしまうことだ。今でさえ、アメリカがイラク政府に供与した武器の一部は、闇市へ流れたり、あるいは、イスラム国に奪われてしまったりしているという。 西側が、これ以上、自分たちが供与した武器を相手に戦わなければならないとすれば、間抜けな話だ。 そこでドイツ政府は、これからは武器を奪われないようにと、武器庫を作らせない方針だそうだが、腐敗が進めば、武器はどこへ流れるかわからない。 もっとも、10日の報道によれば、ドイツの武器は、すでに何年もの間イラクやアフガニスタンといった紛争地域に流れているらしい。帳簿上はたいていアメリカに輸出したことになっているだけなのだそうだ。 紛争地域は新型兵器の実験場に? 紛争の鎮静化を試みる国々が武器の商人を兼ねているというのは、考えようによっては、大変わかりやすい構図だ。同盟国であろうが、なかろうが、どの国も他国を援助するときは、他国の国民のことだけではなく、自国の利益をもちゃんと考えているのである。 そのうち、イラク政府に空爆の強化を頼み込まれれば、米軍は自軍の犠牲軽減を理由に、無人戦闘機の展開を認めさせ、思い存分、実戦での実験をし始めるのではないか。 9月10日、オバマ大統領は、ものすごく力強いスピーチをぶって、イラクだけでなく、シリアへも空爆を行うことを発表した。この勢いで、イスラム国を全滅させるのだそうだ。 無人攻撃機は今まで間違った人間を殺してしまうことが多く、そのたびに非難を浴びていたが、イスラム国がここまで強大になり、イラク政府やシリア政府がここまで弱体化していると、少々間違っても文句は言われないだろう。 地上戦は絶対に行わないと言っているアメリカが、いったいどんな爆撃機で空爆を行うのか、しっかりフォローしたいと思う。 https://www.youtube.com/watch?v=FJx0zBc6NfA
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