03. 2014年9月08日 10:42:29
: nJF6kGWndY
どう対応しようと、先の見通しは厳しいなhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41675 攻めるプーチン大統領、守勢に立たされるオバマ大統領 2014年09月08日(Mon) Financial Times (2014年9月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 露大統領、ウクライナ和平への行動計画を発表 オバマ大統領が年内最後の記者会見、銃規制強化失敗に悔い プーチン大統領(上)がすべてのカードを握り、ジレンマを突き付けられるオバマ大統領(下)〔AFPBB News〕 8月末に2人の米国人の首をはねたシリアのイスラム過激派に対処するための「戦略を我々はまだ持ち合わせていない」と認めた後、バラク・オバマ米大統領は9月初めに欧州を訪問した際、より自信に満ちた調子で語った。 オバマ氏は9月3日のエストニア訪問を利用し、「タリンやリガ、ヴィルニアスを守ることは、ベルリンやパリ、ロンドンを守ることと同様に重要である」と明言した。 だが、過去数十年間で最も重要な北大西洋条約機構(NATO)首脳会議と言われてきた会合が始まった時、オバマ氏が欧州の国境で勃発したウクライナ危機のための戦略を立てるのにも四苦八苦しているというのが、気まずい現実だった。 ロシア軍がウクライナ南東部で親ロシア派勢力とウクライナ軍との間で新たな戦線を切り開く助けをしているという証拠が次々と出てくる中、ウラジーミル・プーチン大統領は機内のナプキンの上に停戦計画を走り書きしながらも、紛争の危険性を劇的に高めてきた。 このことが、オバマ氏を受け入れ難い選択に追い込んだ。キエフに武器を送って紛争をエスカレートさせ、NATOの結束を危険にさらすか、それとも米国内の多くの人が屈辱的な譲歩と見なす外交取引を追求するか、という選択だ。 どれも困難なオバマ大統領の選択肢 シリアの場合と同じように、オバマ氏の選択肢はどれも困難だ。これまでオバマ氏は、外交的解決を望んでいると発言する一方で、制裁を通じてロシアへの圧力を徐々に強めることによって、自身の政権内部のタカ派とハト派の相違や同盟国間の相違に何とか折り合いをつけることができた。 だが、プーチン氏の最新のギャンブルは、こうした矛盾するアプローチの違いを際立たせ、オバマ氏を分裂の拡大という状況に陥らせている。 ハト派は、ロシアによる事実上のウクライナ侵略は、親ロシア派の明白な敗北を伴う紛争の軍事的解決が決してあり得ないことを示していると主張する。これはドイツ政府が支持する見方だ。 プーチン氏は隣国に住み、ウクライナを死活的な利益と見なしているため、常に、西側が安心していられる以上のレベルまで紛争をエスカレートさせる用意がある。ウクライナを手中に収めたい気持ちは、断然プーチン氏の方が強いのだ。 冬が近づいてきており、それに伴ってロシアがウクライナと欧州へのガス供給を停止させる可能性が高まっていく。一方、ウクライナ国内で経済的、社会的な圧力が高まっていることは、ウクライナが東部で長期にわたる軍事的対立を続けられる立場にないことを意味している。 危機が始まって以来、ヘンリー・キッシンジャー氏やズビグネス・ブレンジンスキー氏といったワシントンの重鎮は、ロシアと西側の双方に受け入れ可能なウクライナ東部の自治拡大を含む取り決めの青写真を提言してきた。 その最新版は、米ロの元高官が先月フィンランドの小島で徹底的に議論した24項目から成る計画で、国連が監督する停戦とウクライナが中立的立場にとどまるという保証を求めていた。 だが、この計画は、民主、共和両党の別の元米政府高官のグループによってすぐさま非難された。ウクライナのNATO加盟を阻止することはウクライナの主権侵害だと彼らは不満を述べた。 厳しい対応を求めるワシントンのタカ派 ワシントンのタカ派からすると、プーチン氏の最近の動きに対しては、断固とした西側の対応を講じなければならない。提案された対策の一部には、ロシアの最大手銀行に対する制裁強化が含まれている。 だが、彼らは、東部で戦っているウクライナ軍の部隊が、ロシアの支援を受けた勢力に反撃できるよう、軍に対戦車火器その他の重火器を提供することも提言している。プーチン氏は、遺体袋が帰還するのをロシア国民が目にして初めてロシア軍を撤収するとタカ派は主張する。 ウクライナの外交政策の条件を意のままに操れるのだとすれば、プーチン氏がそこで止まることはないだろうと彼らは言う。プーチン氏はその余勢を駆って、エストニアなど東部の加盟国を守るNATOのコミットメントを弱体化させる方法を見つけようとする。ほどなく、ロシア指導者のやくざまがいの戦術は、国際秩序と米国の権威を弱めることになる、というのだ。 危機の早い段階では、オバマ氏は、プーチン氏に反撃する個別の政策を選択するという観点から考えることができた。ある時はいくつかの制裁を課し、ある時はモスクワに電話するといった具合だ。 オバマ氏は今、はるかに難しい選択に直面している。プーチン氏が勝利したように見えることを避けるために、ウクライナの潜在的な破壊という危険を冒す覚悟がオバマ氏にあるだろうか? By Geoff Dyer in Washington
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41674 ウクライナとロシアと欧米:長い闘い 2014年09月08日(Mon) The Economist (英エコノミスト誌 2014年9月6日号) 悲しい現実だが、ウクライナではロシアのウラジーミル・プーチン大統領が勝利を収めつつある。欧米は長期戦を覚悟しなければならない。 露大統領、ウクライナ和平への行動計画を発表 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領〔AFPBB News〕 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、宣戦布告も正当な理由もないままウクライナで忌まわしい戦争を進めている。この戦いで、大統領はいくつかの有効な強みを持っている。 言い争いが絶えないせいでプーチン大統領の抑え込みに失敗している欧米の指導者たちとは違って、プーチン大統領は自分以外の者に行動を説明する義務を負っていない。 プーチン大統領には本当の意味での同盟者がいない。そして、隣国への主権侵害と同様の無慈悲さで自分への批判の声を抑え込んでいるため、国内の制約もほとんどない。 羞恥心に縛られていないことも明らかだ。その証拠に、ウクライナの戦闘におけるロシアの役割について信じ難いほどの嘘をつき、MH17便が自身の代理人により撃墜された後でさえ、さらなる戦車と部隊を送り込む決定を下した。 何よりもプーチン大統領は、欧米の指導者たち以上に結果を重視している。プーチン大統領の地政学的な被害妄想、冷戦終結時に失った領土への執着、勝利に懸けた個人的な名声を考えれば、そうなるのも当然だ。そして、大統領には、使うことを厭わない現代的な軍隊がある。 ロシアと欧米のこうした姿勢の違いの結果、プーチン大統領は勝利を収めつつある。少なくとも、プーチン大統領の歪んだ論法に沿えば、勝利を収めているように見える。 だが、そうした行動により、プーチン大統領は、ごく最近まで、長すぎるほど握ってきた別の強みを失った。欧米の一部で、プーチン大統領を理性的な対話者、場合によってはパートナーとさえ見なしてきた騙されやすい連中が、そう考えようとしなくなったのだ。今では、どんなに鈍い人でも、プーチン大統領の本性を知っている。政治家というよりは山賊であり、パートナーではなく敵だということを。 それが明らかになるのが遅きに失したとはいえ、欧米はそうした明快な事実を踏まえて、ウクライナを巡る闘いを進めるべきだ。そして、欧米の指導者たちは、ロシアとの長く大がかりな対立が待ち受けていることを覚悟しなければならない。その対立は、ロシア国境全域に広がる可能性がある。 ハイブリッド戦争を覆う霧 9月初旬に生まれたウクライナ停戦の希望は、ロシアは交戦当事国ではないというプーチン大統領のばかげた主張のせいで台無しになった。だが現状では、どのような停戦でも、プーチン大統領の思うような形にできるはずだ。 ロシアの正規軍の支援を受けた寄せ集めの分離派が圧倒的な力でウクライナ軍を押し戻したことから、ウクライナ軍幹部の関心は、反政府勢力の制圧よりも、むしろ全面的なロシアによる侵略の阻止に向けられている。「2週間もあればキエフを落とせる」というプーチン大統領の荒っぽい大言壮語には、恐ろしいほどの説得力がある。 恐らく、依然としてプーチン大統領の狙いは、ウクライナに連邦制を導入し、東部をロシア政府が支配するというものだろう。もしくは、それに失敗した場合には、断続的な低強度紛争も視野に入れていると思われる。いずれの場合でも、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)に加盟するというウクライナの夢は砕かれる。 欧州の一部の者は、わずかな和平の気配が漂うだけでも、プーチン大統領をこれ以上罰する必要はないと主張することだろう。プーチン大統領が紛争への関与を否定していることを口実に、言葉を濁してきた者たちがいたのと同じことだ。だが、それは許しがたい過ちとなるだろう。 ドイツのアンゲラ・メルケル首相が言っているように、隣国に侵攻し、欧州の国境を変えたロシアを何の咎めもなく許すことは、到底できない。米国と欧州では対策が協議されているが、その内容は、クリミア併合に対する弱腰の反応をはじめとする過去の制裁よりもはるかに厳しいものにする必要がある。 ロシアの臆病な議会、保安当局、政府に属する全員に対して、ビザの発給停止と資産凍結の措置を取るべきだ。私腹を肥やす上級官僚の国外資産についても、特定して差し押さえるべきである。エネルギーおよび防衛分野には圧力をかけなければならないし、ロシア国債に手を出さないようにする必要もある。欧米の金融機関は、プーチン大統領の戦争挑発行為に資金を提供すべきではない。 そうした諸々の措置の狙いは、1つには、遅かれ早かれ始まることになる交渉の席で、ウクライナの立場を強めることであるべきだ(急速に悪化する経済を立て直し、エネルギー代金の支払いを支援するために、もっと気前のいい財政援助をする必要もある)。 また、プーチン大統領に圧力をかけることにも狙いを置くべきだ。ウクライナでの戦争やプーチン大統領に対するロシア国民の支持率は、ロシア国営のテレビ局が流すプロパガンダのおかげで保たれている。だが、通貨ルーブルが下落し、モスクワから資本が流出し、ロシア兵士の遺体袋が密かに帰還してくる中、プーチン大統領の政治的な問題は膨らんでいくはずだ。 そして、欧米の制裁が短期的にはプーチン大統領の行動を改められないとしても、将来的にプーチン大統領を(恐らくその後継者も)手なずけることを根本的な目標に据える必要がある。なぜなら、ウクライナだけで終わらないのは間違いないからだ。 キエフとその先 プーチン大統領の第1の選択肢は、侵攻せずにウクライナを手中に収めることだった。だが、武力行使を厭わない姿勢を示すことで、プーチン大統領は恐怖の種をまいた。そしてプーチン大統領にとって、恐怖は政治上の基準通貨だ。 足並みのそろわない弱腰な対応は欧米の力を奪った。プーチン大統領の目には、欧米はロシアの弱体化と封じこめに躍起になっているように映っている。プーチン大統領にすれば、ソビエト連邦崩壊後のロシアの歴史は、米国により与えられた屈辱の連続で、それを逆転させることが自分の使命なのだ。 プーチン大統領はロシア国民の繁栄以上に、隣国の弱体化を望んでいる。同盟者ではなく服従者を求めている。 そうした世界観――ソ連国家保安委員会(KGB)的な冷笑主義と、救世主信仰色を強めるロシア国家主義の有毒化合物――が、プーチン大統領をウクライナへと駆り立てた。その冒険主義がウクライナ東部のドンバス地方で終わると考えるのは、2008年にロシア軍がグルジアからアブハジアと南オセチアを奪った際に、これでプーチン大統領も満足するはずだと主張した者たちに劣らず世間知らずだ。 9月初め、プーチン大統領はカザフスタンを威嚇した。カザフスタンは現在でも高齢のヌルスルタン・ナザルバエフ大統領が治めている。後継者争いが起きれば、プーチン大統領にとって恰好のチャンスになるだろう。エストニア、ラトビア、リトアニアといった旧ソ連の小国には、プーチン大統領が「保護」を約束したロシア語を話す少数の人々がいる。 バルト三国は2004年にNATOに加盟している。仮に、これらの国でロシアを資金源とする分離運動が起き、いずれかの政府がそれを侵略行為だと主張し、NATOの同盟国が支援を拒んだらどうなるのか? 相互防衛の約束という同盟の根幹が砕け散るだろう。 したがって、プーチン大統領の失地回復政策は、ウクライナで食い止めなければならない。米国のバラク・オバマ大統領は9月初め、英ウェールズで開催されたNATO首脳会議へ向かう途中でエストニアを訪問し、バルト海沿岸の同盟国に対する米国の支援を約束した。米軍の一旅団を派遣すれば、さらに心強いだろう。 NATOは、これまでよりも迅速に動ける緊急部隊の創設を承認する予定だ。緊急部隊の軍備は、ポーランドにあらかじめ配備される。だが、NATOがバルト三国に軍隊を配置しないというロシアとの約束を反故にすべき時は、すでに来ている。その約束は善意の時代に結ばれたもので、それを踏みつぶしたのは、ほかならぬプーチン大統領だ。 何もしない代償の方が大きい 欧州はロシア産の天然ガスから脱却するために、もっと多くのことをしなければならない。例えば、供給源の多様化や、欧州でのエネルギー貿易のための新たな規則とインフラの導入などが考えられる。プーチン大統領は良好な商業パートナーではない。 最終的に、そうした措置の効果が積み重なった結果、プーチン大統領が自らの無謀さを反省するかもしれないし、ロシアの国民やエリートがプーチン大統領に対する見方を変えるかもしれない。もちろん、欧米も代償を払うだろう。だが、闇に包まれた哀れなウクライナが示しているように、何もしない方が常に大きな代償を払うことになるのだ。
|