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欧米の偽善とロシアの立場―ユーラシア連合と思想の衝突:ウクライナNATO加盟表明:ウの「フィンランド化」を求める露
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投稿者 あっしら 日時 2014 年 9 月 01 日 16:09:38: Mo7ApAlflbQ6s
 


『フォーリン・アフェアーズ・レポート』2014−No.7
P.6〜13

「欧米の偽善とロシアの立場―ユーラシア連合と思想の衝突

アレクサンドル・ルーキン:ロシア外務省外交アカデミー副学長


冷戦が終わると、欧米の指導者たちは「ロシアは欧米と内政・外交上の目的を共有している」と考えるようになり、何度対立局面に陥つても「ロシアが欧米の影響下にある期間がまだ短いせいだ」と状況を楽観してきた。だが、ウクライナ危機がこの幻想を打ち砕いた。クリミアをロシアに編入することでモスクワは欧米のルールをはっきりと拒絶した、しかし、現状を招き入れたのは欧米の指導者たちだ。北大西洋条約機構(NATO)を東方に拡大しないと約束していながら、欧米はNATOそして欧州連合を東方へと拡大した。ロシアが、欧米の囲い込み戦略に対する対抗策をとるのは時間の問題だった。もはやウクライナを「フィンランド化」する以外、問題を解決する方法はないだろう。ウクライナに中立の立場を認め、親ロシア派の保護に関して国際的な保証を提供しない限り、ウクライナは分裂し、ロシアと欧米は長期的な対立の時代を迎えることになるだろう。

■「ポストソビエト・コンセンサス」

 1991年のソビエト崩壊からしばらくすると、欧米の指導者たちはロシアをパートナーとみなし始めた。真の同盟国とみなすことは決してなかつたが、それでも、アメリカとヨーロッパは 「ロシアは欧米と内政・外交上の目的を共有している」と考え、いずれ、国内で欧米流の民主主義を確立し、対外的にもリベラルな規範を受け入れるようになると期待するようになった。
 もちろん、話はそう簡単ではなかった。それでもワシントンとブリュッセルは、ロシアの政治的特異性は国家的な特質とまだ民主主義の経験が十分ではないためだと状況を楽観した。旧ユーゴスラビア、イラク、イランをめぐってロシアと対立しても、欧米の指導者たちは、ロシアが欧米の影響下にある期間がまだ短いせいだと考えた。こうした一連の理屈を、ロシアに関する欧米の「ポストソビエト・コンセンサス」と呼ぶこともできるだろう。
 現在も進行しているウクライナ危機がこの幻想をついに打ち砕いた。クリミアをロシアに編入することで、モスクワは欧米のルールをはっきりと拒絶し、このプロセスを通じてロシアの動機に関する欧米の間違った思い込みも粉砕された。
 いまやアメリカとヨーロッパの政府関係者は、ロシア外交をどう解釈するかについての新しいパラダイムを必要としている。ウクライナ危機を解決し、似たような展開が今後起きないようにするには、欧米はロシアの立場になってものを考える必要があるだろう。


■欧米のダブルスタンダードと偽善

 ロシアの視点でみれば、ウクライナ危機の種がまかれたのは冷戦終結直後だった。ソビエトが崩壊した後、欧米は実質的に二つの選択肢を手にしていた。
 「ロシアを欧米のシステムに統合していくために大きな努力をするか、それとも、旧ソビエトの影響圏を少しずつ削り取っていくか」
 アメリカのロシア専門家、ジョージ・ケナンやロシアのリベラル派を含む人々は「反ロシア的な路線をとればモスクワの敵意を買う。一方で何もしなければ、欧米の一部となるいくつかの小国を取り込める だけで、大した成果は得られない」と警告し、ロシアを欧米のシステムに統合していくことを提言した。
 だが彼らの警告と提言が顧みられることはなく、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュという二人の米大統領は二つ目の路線を選択した。ドイツ統一後、欧米の指導者たちはミハイル・ゴルバチョフに対して北大西洋条約機構(NATO)を東方に拡大しないと約束していた。だがこの約束を忘れたのか、アメリカとその同盟諸国は、冷戦期にはソビエトの抵抗によって実現できなかったこの構想に着手した。彼らはNATOを東方へと拡大し、旧ソビエト諸国を含む12カ国をメンバーに迎え入れた。

 それだけではない。欧米はモスクワに対して 「エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ルーマニアなど、ロシア国境に近い地域にNATO軍を駐留させても、ロシアの安全保障は脅かされない」とモスクワを説得しようとさえ試みた。NATOだけでなく、欧州連合(EU)も、これと同じ時期に16カ国を新たにメンバーに迎え入れた。
 ロシアの指導者は虚を突かれた。「ロシアと欧米は互いに協調路線を強化し、相手の利益に配慮し、ともに受け入れられる妥協を試みる」と考えていたからだ。モスクワは「自分たちは十分に協調した」と感じていた。国益概念を放棄したことは一度もなかったが、それでも支配的な欧米秩序への仲間入りを果たすためなら、一定の譲歩をすることにも前向きだった。だが、われわれを勇気づけるような言葉を何度も発しながら、欧米がロシアの協調や妥協に応じることはなかった。それどころか、欧米の指導者たちは、彼らが勝利を収めたと考えていた冷戦期のゼロサム関係の心理から脱しきれずにいた。

 ロシアを含む旧ソビエト諸国に実際とは異なるアプローチをとっていれば、欧米にとつてより好ましい結果がもたらされていたかどうかはわからない。だが、クリントンとブッシュがとった路線が、欧米のシステムを拒絶して独自の道を歩み、新たな多極世界における欧米と競い合う拠点になることを求めるロシア人に力を与えたのは事実だろう。

 現在も、欧米はロシアの国境地帯を引き裂く路線をとつている。このせいで、モルドバとグルジアの領土は分裂し、いまやウクライナもわれわれの目の前で引き裂かれようとしている。文化的な境界線がこれらの諸国を分断し、ヨーロッパに魅了される市民、一方でロシアとの関係から得られる利益を維持することを求める市民の双方を満足させない限り、指導者たちは国や社会の統合を維持できない状況に陥っている。

 (周辺諸国におけるロシア民族は窮地に立たされている)例えば、ソビエトが崩壊して20年が経った今も、エストニアの人口の6%強、ラトビアの12%を上回る人口はロシア民族によって構成されているが、彼らは依然として十分な市民権を与えられていない。選挙で投票することも、ロシアの学校に入学することも、ロシアメディアへのアクセスも閉ざされている。域外での人権問題に熱心なEUも、ロシア民族が基本的な市民権を奪われている現実に見て見ぬふりをしている。
 ウクライナ、そして、ロシア人が特別な感情をもち、その多くが自らをロシア人とみなしているクリミアに忍び寄るNATOの脅威を前に、モスクワはウクライナのマイノリティであるロシア民族が逃げ込める場所がなくなると危機感を募らせた。ロシアは(ウクライナからの分離を望む)クリミア住民の意思を尊重し、NATOがロシア海軍を黒海から締め出そうと明らかに試みる事態を前に、この半島をロシアに編入した。

 欧米の指導者たちは、モスクワの迅速な動きに不意を打たれたようだ。2014年3月末、フィリップ・ブリードラブNATO欧州連合軍最高司令官は「ロシアはパートナーではなく、むしろ敵のように振る舞っている」と驚くべき発言をした。だが、冷戦終決以降もNATOが設立期以降の(ゼロサム的)アプローチを変えなかった以上、モスクワの行動は十分に予想できたはずだ。実際、ロシアが欧米の囲い込み戦略に対する対抗策をとるのは時間の問題だった。ウラジーミル・プーチンが、ウクライナ情勢に対する欧米の抗議を「この上ない偽善だ」と考えたのはこのためだ。実際、そう考えないほうがおかしかった。

 ウクライナの右派に対するEUの最近の批判を例に考えてみよう。2014年3月、EUのキャサリン・アシュトン外務・安全保障政策上級代表は、武装ナショナリスト集団「ライトセクター」はキエフの議会ビルを占拠しようと試みていると批判した。だがわずか数カ月前にライトセクターがウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒そうと街頭デモに繰り出していた当時、ヨーロッパはこの集団を実質的に支持していた。
 もちろん、このダブルスタンダードに驚くことはない。欧米の指導者たちは、自分たちにとつて都合が良ければ、こうした過激派を支援することを躊躇しないものだ。欧米は1995年にセルビアのクライナ・セルビア人共和国の樹立を宣言したクロアチア人武装勢力を支援し、1997−98年にもコソボのナショナリストを支援している。
 欧米の偽善はこれだけではない。ワシントンはこれまでもロシアはウクライナの国境線を犯していると何度も激しく非難してきたが、アメリカとその同盟諸国は、既存の国境を前提とする領土保全原則を主張できる立場にはない。結局のところ、2008年の「コソボの一方的な独立宣言は国際法を犯していない」とした国際司法裁判所の判断を支持したのは、ロシアではなく、欧米諸国だった。

 モスクワは、コソボ、セルビア、イラク、リビアへの欧米の軍事介入が作り出した先例は、1975年のヘルシンキ合意に盛り込まれた主権原則を含む、現在の国際法システムを損なうことになると繰り返し警告してきた。欧米は、ヘルシンキ合意でソビエト、旧ユーゴスラビア、ワルシャワ条約機構加盟国の国境線を尊重することに明確に合意している。
 こうした欧米のダブルスタンダードにもかかわらず、モスクワはウクライナ危機の解決に向けて多くの提案をしてきた。東部と南部の利益にも配慮する連立政権の樹立、連邦制の導入、公用言語としてのロシア語の容認などだ。だが、欧米のイデオローグたちはこうした提案を受け入れそうにない。「(提案を前提に)ロシアと協調すれば、欧米世界の外にいるプレイヤーが、他の社会にとつて何が良く、何が悪いかを決めることになる」と考えているようだ。


■ウクライナ危機

 ロシアと欧米の立場の違いが先鋭化していた以上、二つの異なるアプローチが、東と西の間を長く揺れ動いてきた境界国家であるウクライナで衝突するのは時間の問題だった。最初の抗争はウクライナの政治派閥間で繰り広げられた。一方はEUとの連合条約への調印を求め、他方はベラルーシ、カザフスタン、ロシアをメンバーとする関税同盟への参加を望んだ。

 欧米の指導者たちは、ロシアが主導する地域統合の試みを「ソビエトを復活させ、欧米のシステムへの代替策を提供することを目的とする敵対的な行動」とみなした。欧米政府の高官の多くは、一方で 「ウクライナをEU加盟コースに載せれば、こうしたロシアの計画に大きなダメージを与えられる」と考えた。EUとの連合条約の締結を先送りしたヤヌコビッチの決定を「ロシアの勝利」とみなし、対抗策をとる必要があると考えたのは、こうした思惑をもっていたからだろう。
 だが、欧米の指導者たちは、ユーラシアの統合に関してひどく間違った概念をもっている。ロシアも他のユーラシアシステムへの参加を望む諸国も、ソビエトを復活させたり、欧米との公然たる対決路線をとったりしようとは考えていない。

 もちろん、多極化した世界における自由な国家は、独自の連帯を組織する権利をもっている。実際、多くの旧ソビエト諸国の指導者たちは、関係諸国とのつながりを維持するか、新たに協力のためのフォーラムを作ることをかねて望んできた。1991年、われわれは独立国家共同体(CIS)を組織した。15の旧ソビエト諸国のなかで、ソビエトの崩壊を機にかつての絆を断ち切って、欧米の政治・経済連合への参加を明確に選んだのは、バルト諸国を中心とする一握りの諸国だけだった。
 他の多くの旧ソビエト諸国は、CISがどのような役割を果たすべきかについてのコンセンサスの形成に取り組んだ。一部の旧ソビエト諸国の指導者たちはベラルーシ、カザフスタン、キルギス、ロシア、タジキスタンをメンバーとする「ユーラシア経済共同体」などの統合のための新フォーラムを組織した。一方、グルジア、トルクメニスタン、ウクライナの指導者たちは、CISのことを「ロシアとの文明的離婚を勝ち取り、これまではモスクワが一元管理してきた権利と権限を分割するための手段」とみなした。
 それでも、これらの諸国のほとんど、特に指導者の一部と民衆の多くはロシアや他の旧ソビエト諸国との緊密な関係を維持することを望んでいた。例えば、グルジアとモルドバ内のさまざまな民族マイノリティ集団は、次第に攻撃色を強めていた多数派ナショナリスト勢力の動きを警戒し、ロシアが自分たちの権利を守ってくれることを望むようになった。ベラルーシやウクライナを含む他の諸国でも、民衆の多くはロシアとの緊密な経済、文化、家族間のつながりをもっていた。彼らにとつて、ロシアと明確に決別することなど考えられぬことだった。

 だが、目の前にある経済問題がユーラシアの統合を阻む障害となった。ロシアの権力者となった当時のプーチンは「ソビエトの崩壊は20世紀における最大の地政学的悲劇だ」と確信していたが、具体的な行動を起こすまでに10年もの時間を待たなければならなかった。まず、十分な政治・経済的パワーを復活させる必要があつたからだ。
 実際、ベラルーシ、カザフスタンとロシアが、旧ソビエト諸国間の有意義な経済協調の枠組みに向けた関税同盟を立ち上げたのは2010年になってからだ。この同盟は域内の関税と経済障壁を撤廃し、現在では、域外との貿易をめぐつて共通の関税と障壁を導入している。現在もアルメニア、キルギス、タジキスタンが関税同盟への参加を交渉している。

 経済的利益だけでなく、ユーラシア統合プロジェクトは安全保障領域の協調も育んできた。NATO同様に、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、ロシア、タジキスタンを含む「集団安全保障条約(CSTO)」は、加盟国に対して 攻撃を受けたメンバー国を集団的に支援すること」を義務づけている。ユーラシア諸国の多くは特にCSTOを重視している。多くの国や国際組織の保証があっても、宗教過激派やテロリストによる本当の脅威にさらされたときに、本当に頼りになるのはロシアとその同盟国であることを指導者たちが知っているからだ。


■思想の衝突

 関税同盟を通じた経済協調を成功させた各国の政治エリートたちは、現在、ユーラシア政治連合の立ち上げを議論している。2011年にイズベスチヤ紙に寄せた記事でプーチン大統領が指摘したように、モスクワは新しい政治連合を、EUはもちろん、東南アジア諸国連合(ASEAN)、北米自由貿易協定(NAFTA)のようなその他の国際フォーラムのライバルではなく、パートナーとすることを望んでいる。さらに大統領は、政治連合を立ち上げれば、そのメンバー国は「グローバル経済における自国の地位を確立し、ルールの設定や今後を規定する意思決定に実体的な役割を果たせるようになる」と指摘している。

 だが、そのようなユーラシア連合を効率的に機能させるには、自然かつ自発的に連合が進化できるようにしなければならない。さらに、統合を新たなレベルへと進化させれば、その基盤にどの程度奥深い価値が存在するかが問われるようになる。ヨーロッパ諸国が、民主主義、人権、経済統合の価値を基盤にまとまったとすれば、ユーラシア連合も、独自の理念をもつ必要があるだろう。一部の政治思想家は、そうした連合のイデオロギー基盤を歴史のなかに見いだしている。ユーラシアという空間とアイデンティティに関する概念を最初に考案したのは、1920年代に共産化したロシアから西ヨーロッパへの逃れたロシアの知識人たちだった。

 19世紀の汎スラブ主義者同様に、当時のユーラシア主義者たちは、ロシア文明の特質、ロシアとヨーロッパ社会との違いを重視したが、目指す方向は違っていた。19世紀のスラブ主義者がスラブ民族の連帯を強調し、ヨーロッパの個人主義とロシアの農耕社会の集団主義を対比させたのに対して、ユーラシア主義者たちはロシア人を広大な中央アジア草原地帯のテュルク語を話す民族と結びつけた。

 ユーラシア主義者たちによれば、古代ペルシャにルーツをもつテュルク文明は、本質的に権威主義的な独自の政治・経済モデルをもっている。彼らは、民間のイニシアティブを評価しつつも、西洋における市場経済主義は行き過ぎだと批判し、むしろ、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、仏教などの伝統的な宗教の役割を重視した。
 テュルク文明に関するユーラシア主義者の歴史的主張の根拠ははっきりしないが、この理論はいまやロシアの政治エリートだけではなく、テュルク語系民族が暮らすカザフスタン、キルギス、その他の中央アジア諸国でも支持されている。
 今日のユーラシア主義者が標樗する古い概念には少しばかり後知恵が入り込んでいるかもしれないが、ユーラシア政治同盟を立ち上げる構想はそれほど現実離れしていない。旧ソビエトの多くの諸国における文化と価値は、欧米世界におけるそれとは明らかに違っている。
 伝統的な宗教がもつ絶対的価値を拒絶する「リベラルな世俗主義」が西ヨーロッパやアメリカでは台頭しているかもしれない。だが旧ソビエト地域では、東方正教会、イスラム、ユダヤ、仏教などのすべての主要宗教が復興しつつある。それぞれに大きな違いがあるが、これらの宗教のすべては欧米の社会規律を柔軟に唱える寛容性と道徳的相対主義を拒絶している。これは、現実的な理由からというよりも、行き過ぎた寛容性や道徳相対主義が宗教的に認められないか、明確に禁止されているために、人々はこれを罪深い思想とみなしているためだ。

 旧ソビエト地域の人々は、欧米が自分たちのことを遅れており、反動的とみなしていることにも反発を感じ、ますます頼りにされ、影響力も高まっているユーラシアの宗教指導者たちも、同じ感情を共有している。
 結局のところ、進化をどう捉えるかについては、さまざまな考えがある。人間が存在する理由がより多くの政治的自由と物質的富を手に入れることだとすれば、欧米社会は進化しているかもしれない。だが、伝統的なキリスト教徒のように、キリストがこの世に資を現したのは人類にとってもっとも重要な出来事だったと考えるのであれば、物質的な富はそれほど重要ではない。

 人生ははかなく、苦しみが人々を永遠の世界に導いてくれるのなら、むしろ物質的な豊かさはその妨げになる。宗教的な伝統主義者は、安楽死、同性愛、その他の新約聖書で何度も批判されている行為を認めるのは、進歩ではなく、無神論の時代への逆行を意味すると考えている。この視点でみれば、欧米社会は完壁な姿からはほど遠く、むしろ罪に覆い尽くされている。
 ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、モルドバの東方(ロシア)正教会信徒の多くは、中央アジアの人々同様に、このような欧米観をもっている。こうした信条が旧ソビエトの統合を支持する指導者たちに力を与えている。彼らは、プーチンがユーラシアにおけるパワーセンターを確立することも支持している。欧米世界が干渉しても、ユーラシアにおける中核パワーはますます強化されていくだろう。


■ウクライナの「フィンランド化」を

 ウクライナ情勢は依然として緊張している。(実質的に沿ドニエストルが分離独立している)モルドバのように、ウクライナも二つの国家に分かれていくかもしれない。ワシントンは、モスクワによる対話要請を「受け入れられない条件を突きつけられるだけだ」と退けている。ウクライナの混乱(と欧米との対立)が続けば、ロシアでもナショナリストと権威主義者が台頭してくるだろう。特に権威主義的集団が最近では積極的に活動するようになり、「ロシアの利益を守れるのは自分たちだけだ」とアピールし始めている。

 対立が制御不能となってエスカレートしていけば、全面的な戦争になるかもしれない。アメリカとその同盟国にとつての唯一の解決策は、ウクライナをめぐる立場を対決路線から建設的なエンゲージメントへと変えていくことだろう。

 ウクライナ危機は現状でも外交的に解決できる。冷戦期にモスクワと西側がオーストリアとフィンランドの中立をともに受け入れたことを思い出すべきだ。この了解によって、両国の民主的なシステムや欧米志向が損なわれることもなかつたし、そうした中立的な立場は両国の経済にとつても国際的名声にとつてもプラスに作用した。
 中立国として西側とソビエトの双方との大きなつながりをもつフィンランドが、冷戦期の緊張緩和に大きな役目を果たしたヘルシンキ合意につながる東西交渉のホスト役を務めたのも偶然ではないだろう。現在の危機に対する解決策も、ウクライナに中立の立場を認め、親ロシア派の保護に関して国際的な保証を提供することだ。そうしない限り、さらに悪い事態が待ち受けている。ウクライナは分裂し、ロシアと欧米は長期的な対立の時代を迎えることになるだろう。


Alexander Lukin:ロシア外務省外交アカデミー副学長。モスクワ国際関係大学・東アジア・上海協力機構研究センター所長。


 

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コメント
 
01. 2014年9月01日 16:58:31 : nJF6kGWndY

>ウクライナ危機は現状でも外交的に解決できる。冷戦期にモスクワと西側がオーストリアとフィンランドの中立をともに受け入れたことを思い出すべき

古い冷戦時代のパワーゲームの発想だな

それが実現できれば、全体の犠牲は最小化できるが


現在は偏狭なナショナリズムと宗教原理主義の時代に逆戻りしており、

軍事覇権国が、彼ら弱小国民の意思を無視して

意のままに分割・統治しようとしても

紛争やテロの応酬が続くだけだということを無視しているな



02. 2014年9月01日 17:15:37 : TGgfYEbPRU
纏まる見込みの無い国家を中立国家とするより、東南部を独立させて中立国家にした方が後々の戦争発生リスクを減らせると思うがな・・・。
エネルギー資源が目的で無いなら折り合い付けられるだろ・・・。

03. 2014年9月01日 17:15:38 : 2AWHfZOFsY
>紛争やテロの応酬が続くだけだということを無視しているな

引き起こしてるのが誰なのか?だねw 偶然ではないからね。


04. 2014年9月01日 23:52:52 : 81Pg2NNJcU
東西ウクライナと南北朝鮮はフィンランド化が最良の処分ではないかな

05. Silverfox 2014年9月02日 01:37:54 : DiI5lSKh.N61A : lbZtosniAg
おおむね同意できるし、良くまとまっている。
冷戦の本質はイデオロギー対立などではなかったということにそろそろ皆が気づくべきでしょう。
世界が乱れているというのは、いわゆる西側の考える秩序にそぐわないだけの話です。

06. 2014年9月02日 13:07:55 : nJF6kGWndY

ま、ロシアはそうやって西側を排除して

実際は、介入してくるだろうけどねw


07. 2014年9月02日 16:58:13 : sAWMBQu6Mw
ウクライナのEU加盟が認められたら
欧州は再びカオス状態に陥り
欧州の未来は真っ暗

08. 2014年9月02日 22:06:31 : Zyi3Pzd7xE
西側がロシアを排除しようとしておるのだよバカコメの>>01>>06よ。
この論文は排除の論理を価値観の拡大に見立てて、世界を画一化しようとする欧米のやり方があちらこちらで紛争を生んでいる現実でありそれをロシアにも当てはめようとしているから、それに対して明確に防衛する権利があると言っているだけだ。
冷戦のブロック化を懲りずに推しすすめているのはアメリカNATOであり、多極化世界を押し立てて抵抗しようとしているのはロシアなのだ。
欧米の価値観で世界を埋めてしまおうとすれば、価値観にそぐわないロシアは異邦人の国でロシアの価値観で逆に世界を埋めてしまえと映るのだろうが、現実はロシアは防衛に回っているのである。
それが見えないのは頭が冷戦的思考で固まっているからである。
ご愁傷様。

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