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米英によるイラク北部のイスラム国への空爆は、西側諸国で生まれ育ったテロリストによる「危機を増大させる」と、元MI6のテロ防止対策部長が警告を発した。
9.11テロの前後にイギリス秘密情報部(MI6)でテロ防止活動を行っていたリチャード・バレット氏が、ハフィントンポストUK版の取材に応じた。最近の西側諸国による軍事介入は、「悪の政権は外からの力による支援を受けており、それゆえにイスラム政府を転覆させようと介入し過ぎたら、外からの力によって打ち負かすというイスラム聖戦士の文脈に沿った形で作用するだろう」と彼は述べる。
「シリアのアサド大統領やイラクのマリキ元首相と戦っていた戦士は、今ではアメリカおよびイギリス政府など、より広範な敵の存在をターゲットにしている。彼らが西側諸国の『テロ攻撃』を受け、同じような攻撃をやり返そうという議論をする可能性は、不可避とは言わないまでも強まっている」。
アルカイダなどイスラム原理主義組織の専門家からこのような警告が出されたことは、アメリカのオバマ大統領とキャメロン首相にとっては痛手になるかもしれない。というのも、米英両首脳はイラク北部でイスラム国に対抗するイスラム軍事組織に対し、軍事行動を認める動きを続けているからである。
キャメロン首相はイギリスの新聞「サンデー・テレグラフ」に寄稿し、「非常に危険なテロの動きが多数確認されている中で、阻止するための行動を起こさなければその力は強まる一方だ。そうなれば、いずれはイギリスの街も狙われることになってしまう」と述べている。
だがバレット氏は、軽率な軍事行動は西側に住む人々への脅威を増大させることになると警鐘を鳴らす。「もし空爆によってイスラム国からモスルなどの都市を奪還しても、彼らが消えることはなく、依然として存在しつづける」。イギリスやヨーロッパ諸国からやって来た戦士たちは国に戻り、西側諸国を標的とした攻撃を開始することになるはずだと、彼は指摘する。
「彼らはこう正当化するだろう。空爆がなければ俺たちは何の問題もなくイラクにカリフ制を打ち立てられるのに、なんで俺たちの邪魔をするんだ? ならこちらだってやってやる、と」。
現在は英国王立統合軍防衛安全保障問題研究所 (RUSI) の理事であるバレット氏は、国連のアルカイダ/タリバン監視チームのコーディネーターを務めたこともある。「適切な計画がないまま軍事介入を続けると、意図しない結果を招き、混乱と不安定を生じさせる」と、リビアを引き合いにして状況を指摘する。
彼はまた、キャメロン首相はイスラム国とイスラム原理主義組織に対する戦いは、究極的にはイスラム諸国内での穏健派と過激派による戦いになると認めていることにも言及している。「では私たちはそこで何をしているか? サウジアラビアの戦闘機はどこにいるか? キャメロン首相は言っていることとやっていることが違うのです」。
キャメロン、オバマの両首脳は、派兵を行わないことを言明しているが、元MI6の対テロ部長は、アメリカ、イギリス両政府はイラク北部で「滑りやすい坂」を転げ落ちていくことになるだろうと見ている。
「最初は小規模な空爆から始まり、それから規模が拡大します。それから標的を伝えるために特殊部隊が投入され、その彼らが困難な状況に立たされ軍事力による援護が必要になるでしょう。自分たちが気づくよりも先に、私たちははっきりとした終わりのない道を転げ落ちていっているのです」と、バレット氏はハフポストUK版に述べた。
軍事行動は常に最終手段であるべきだとバレット氏は述べる。「軍事行動はイスラム国の問題を解決し得る道具ではありません。リビアやアフガニスタン、それに2003年のイラクを思い出してください。手の届く所にあるからというだけで、ハンマーに手を伸ばすようなものなのです」。
「イランとサウジアラビアを交渉の席につかせ、彼らの不和を解決し、イスラム国をはじめとした組織に対抗する統一戦線を張ること。そのような目的を持って外交努力をする方が、戦闘機で上空を飛び回って爆弾を落とすよりもはるかに大きな影響をイランに与えられるでしょう。人々は空爆を政治行動だとは解釈しません。それには極めて明確な目的と対象が必要ですが、我々にそれがあるとは思えません」。
8月24日にはイングランド国教会が、中東でイスラム過激派が活発化する状況に関し「一貫性を持った包括的なアプローチができていない」ことに対して政府を批判した。野党の労働党も、イラクでの軍事行動についてイギリス政府の立ち位置が「非常に不明確」という声明を出している。
イスラム国を「打倒」するならどうしていたか、というハフポストUKの質問に対しバレット氏は、「聖戦士たちへのあらゆる公的援助や、地域住民のイスラム国への支持を失墜させることが鍵となったでしょう。それからイスラム国の支援基地と油田を攻撃し、外国から戦士たちが合流するルートを断つことです。ですが、なぜ外国の戦士たちが行動に至ったのかを問わなければなりません。彼らがそうする理由を、私たちはどのようにして理解することができるのでしょうか?」
イギリス保安局は、ここ数カ月の間でイギリス国内のムスリムの若者およそ500人が、シリアおよびイラクのジハード組織に加わるために出国したと推定している。
バレット氏は、過激化のプロセスを主導しているのは宗教ではなく政治だと考えている。「イギリスを出て行った400人から500人の人がマドラサ(イスラム神学校)で洗脳されていたとは思いません。彼らは押し出す力と引っ張る力の中にいるのです。押し出す力となるのは疎外、政府への不信、アイデンティティの欠如、リアルな目的の欠如です。そして引っ張る力は、イラクやシリアで差別されている脆弱なスンニ派のコミュニティであり、それを守ろうとする勇敢な闘士たちの集団です」。
「しかし明るい材料もあります。後者に関しては、イスラム国やアル=ヌスラ戦線(シリア、レバノンで活動するアルカイダ系武装組織)が何を代表しているのかを皆が知っているため、その引きつける力が弱まっているのです」と彼は説明する。
国連の元テロ対策専門家は、イギリス内務省がここ数ヶ月の間に作成したイスラム過激派対策の計画を評価している。だが、「イギリス国内のムスリムコミュニティは権力側と協働し、過激派に対抗するための支援を求めている」と付け加えた。
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