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『ニューズウィーク日本版』2014−8・26号には、ウクライナ関連の記事が3本ほど掲載されている。記事タイトルを列挙すると、「ロシア軍のトラックは「トロイの木馬」?」・「パイプラインでEUを分断」・「プーチン包囲網のブーメラン効果」である。
『ニューズウィーク日本版』は、ロシア・プーチン政権とウクライナ親露派武装勢力の関係について、「パイプラインでEUを分断」では、「ロシアが分離独立派の活動を支援する姿勢を見せなくなったのを受け、ウクライナ政府は停戦を模索するのでなく、軍事的圧力を強化している」と書く一方、「ロシア軍のトラックは「トロイの木馬」?」では、「アメリカをはじめとする欧米諸国は、ロシアのトラックが人道支援を口実にして親ロシア派勢力に武器などを届ける「トロイの木馬」ではないかとの懸念を指摘」と書いている。
事実はほとんど重要ではなく、読者をどう誘導するのかが重要ということだろう。
親露地域への“人道”支援物資を積んだ280台のトラックは、親露派武装勢力を見限ったプーチン大統領の“支持つなぎ止め策”という側面もあると思う。
その意図に照らせば、支援物資がスムーズに受け容れられるより、ウクライナや欧米諸国から“難癖”を付けられるほうが、プーチン大統領に対する国民の支持を維持する効果は高いと言える。
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P.38〜39
「パイプラインでEUを分断
エネルギー:ウクライナ政府を支援するヨーロッパ諸国にロシアは「エネルギー外交」で応戦する
ウクライナの混乱が続いている。ロシアが分離独立派の活動を支援する姿勢を見せなくなったのを受け、ウクライナ政府は停戦を模索するのでなく、軍事的圧力を強化している。
こうした動きを見て、ロシアは親ロシア派を直接支援するのとは別の方法で、ウクライナ政府の親EU路線に揺さぶりをかけるつもりらしい。それは、ウクライナ政府を支援するヨーロッパ諸国を分断すること。ロシアが使おうとしているのが、とっておきの切り札「エネルギー外交」だ。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相をはじめとするヨーロッパ各国の首脳たちは、ロシアがウクライナの和平実現に協力しなければ、アメリカと足並みを揃えて経済制裁を強化すると強硬な態度を取るようになった。
だが制裁を強化するといっても、ヨーロッパ諸国にはロシア産天然ガスに大きく依存しているという弱みがある。しかもそのガスをヨーロッパまで運ぶ新しいパイプラインの建設計画には、オーストリア、ブルガリア、ハンガリー、さらにはイタリアヤフランスの大手エネルギー企業が関わっている。
つまりヨーロッパ諸国が制裁としてロシア産ガスの購入量を減らせば、供給元であるロシアだけでなく、同社と提携しているヨーロッパの大手エネルギー企業も打撃を受けることになると、欧州委貝会エネルギー総局の元政策アナリストであるアンドルー・マキロップは語る。
ロシアとしては、国営のエネルギー大手ガスプロムと提携するオーストリアのOMVやドイツのRWE、イタリアのENIなどの企業がEU当局に圧力をかけ、対ロシア制裁に歯止めをかけてくれるよう期待している。
これらヨーロッパのエネルギー大手とガスプロムは現在、ロシア南部から黒海を経由して南ヨーロッパに天然ガスを運ぶ「サウスストリーム・パイプライン」の建設を計画している。ウクライナを迂回するこのパイプラインの輸送能力は、年間630億立方メートルに達する見通しだ。
現在ロシアとヨーロッパを結ぶパイプラインにはウクライナを経由するルートがある。しかしウクライナのガス代金未払いやガスの抜き取り問題をめぐって、ロシアとウクライナの対立が絶えず、ロシアがウクライナへのガス供給をストップすると、ヨーロッパへの供給も止まるという問題が生じていた。
このためロシアは、ウクライナを通らないパイプラインの建設を急いできた。既に11年には、パイプライン「ノルドストリーム」が完成。年間550億立方bの輸送能力を確保して、ウクライナ経由の輸送量を約25%減らすことに成功した。
さらにサウスストリームが完成すれば、ロシアはヨーロッパ市場へのアクセスを確保しつつ、ウクライナへの供給量をカットできる。そうなるとドイツをはじめとするEU諸国も、ウクライナ情勢への関心を低下させるかもしれない。
EU当局の意向を無視
この「ウクライナいじめ」に成功すれば、ロシアはやはりEUとの関係強化を望むモルドバ、グルジア、アルメニアといった旧ソ連諸国にも同様の戦術を取る可能性があると、カーネギー・ヨーロッパのジュディ・デンプシー上級研究員は指摘する。「サウスストリームとノルドストリームによって、ヨーロッパのロシア産ガスへの依存は決定的になる」からだ。
もっともEUは共通のエネルギー政策としてロシアへの過剰依存を改め、供給源の多様化を目指してきた。カスピ海沿岸の天然ガスをヨーロッパまで運ぶ「ナブッコ・パイプライン」の建設計画はその典型例といえるだろう。
今回のウクライナ危機で、EUはロシアに対する制裁の一環として、エネルギー政策の「脱ロシア」に拍車を掛けようとしてきた。これに対してロシアは、OMVやENIといったヨーロッパの巨大企業を味方に付けてEUの分断を図ってきた。
実際、ハンガリーのオルバン・ビクトル首相は今月1日、サウスストリームの国内通過部分の建設を予定どおり進めると発言。イタリアの欧州問題担当次官も同日、イタリアは「(サウスストリームの)実現に大きな利益を有している」とロシアの国営通信社に語った。
6月末にはブルガリアの大手銀行2行で相次いで取り付け騒ぎが起き、EUが緊急融資枠を設定する事態に発展した。これについてエネルギー専門家の間では、EU当局の要請を受けてサウスストリームのブルガリア通過部分の工事を一時停止したことと関係しているのではないかとの見方がある。
オーストリアのハインツ・フィッシャー大統領は6月下旬、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領をウィーンに招待。これと並行してガスプロムとOMVは、サウスストリームに支線(終点はオーストリアの天然ガス中継地バウムガルテン)を設ける合意書に正式調印した。
当然EU当局は不快感を示しているが、「このプロジェクトは基本的にオーストリア経済のプラスになるため、政治的要因は度外視されることになった」と、マキロップは分析する。
ウクライナをめぐる対立がしばらく続くとみられるなか、ロシア政府は他のヨーロッパ諸国がオーストリアの動きに追随してくれればと願っている。
ジェーソン・オーバードーフ」
P.13
「ロシア軍のトラックは「トロイの木馬」?
親ロシア派武装勢力とウクライナ政府軍の戦闘が一段と激化しているウクライナ東部に向けロシアが派遣したトラックが、物議を醸している。
ロシアは先週、親ロシア派勢力が立て籠もりを続けるドネツクとルガンスクの住民に飲料水や医薬品、ベビーフードなど2000トン相当の「人道支援物資」を届けるとして、約280台のトラックを派遣した。ウクライナ政府軍に包囲されたこれらの都市では水道や電気の供給が止まり、市民の生活は困窮している。
だがアメリカをはじめとする欧米諸国は、ロシアのトラックが人道支援を口実にして親ロシア派勢力に武器などを届ける「トロイの木馬」ではないかとの懸念を指摘。ロシア側は「ばかげた話」と一蹴したが、ウクライナは赤十字国際委員会(ICRC)が積載物の中身を確認する必要があるとして、トラックの入国を拒否した。
その後、両国は積み荷の検査や輸送方法について合意に達し、物資の運び込みが始まる見通しとなった。一方、ウクライナ領内に侵入したロシアの装甲車両が爆撃されたとの情報もあり、紛争の行方は予断を許さない。
ルーシー・ウエストコット」
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