http://www.asyura2.com/14/warb13/msg/803.html
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ウクライナ国家安全保障・国防会議は、ドンバスの義勇軍が避難民を乗せた車列を22mm自走多連装ロケット砲BM-21「グラード」で殺戮したという声明を表した。この情報に対して米国務省のとった反応は特筆に価する。米国は一般市民の殺害を糾弾しながらも、従来のように「親ロシア派の分離主義者」に罪を着せることは急がなかった。
ウクライナ政権は、ドネツクの武装戦闘員が児童を含む民間の避難民を乗せた車列を待ち伏せし、白旗が掲げられていたにもかかわらず、ロケット砲による砲撃を行なったという情報をプレスに流した。その結果、数十名が殺害され、中には生きたまま火に焼かれた市民もいたというのだ。これに際する証拠資料は一切提出されていない。これに対し、ドンバスの義勇軍の代表者らは銃殺のニュースを煽動かつ虚実であるとし、自分たちは事件がおきたとされる地区にグラードを差し向ける可能性を有していなかったと答えた。ところがこれに対する米国務省の反応は特筆に価する。
まず、米国務省は直ちに一般市民の殺戮を糾弾した。これまで米国政権はウクライナ南・東部においてウクライナ軍の砲撃、銃撃によって何十人も一般市民が殺戮されているニュースが入ってきても、これを強硬に無視し続けてきた。米国務省はロシアのチュルキン国連大使がこれについて表す声明を無視してきており、これと並んでおびただしい数の人権擁護団体も、本来はこうした醜態と闘うべき存在であるはずなのだが、やはり強硬にこうした事実に目を向けてこなかった。ところがキエフ当局が「分離主義者」の犯罪をあたかも知っているような声明を表すと、米国はこれを無視することはできなくなった。事実上、これは義勇軍と、あたかもその背後にいるとされるロシアを批判する新たな根拠に映ったからだ。
第2に米国はこうした機会をまだ利用したことがなかったため、今のところ避難民を銃撃した犯人はわからないことは認めている。つまり、ドンバス上空でマレーシア機が撃墜されたあととは異なる反応を見せたわけだ。あの時は、米国はキエフ当局とともに悲劇の罪を直ちに義勇軍とロシアに着せた。なぜ米国人は急に、証拠探しに躍起にならず、何の根拠もなしにウクライナの罪をすべてロシアに着せてきた今までの態度を変えたのか? これはおそらく、マレーシア機の謎の事件の調査にかかわる専門家らが余りに長い間沈黙を守っていることと関係があるのではないだろうか。仮に、マレー機を撃墜したのが義勇軍であるという説に有利な証拠が何かの形でも見つかっていれば、すでにマスコミに衝撃的ニュースとして流されていたはずだ。だがこれが未だに起きていないということはマレー機撃墜が義勇軍とロシアの手で行われた証拠はなく、そのかわりこれがウクライナ軍人によって撃墜されたことを示すなんらかの兆候が見られたのだろう。そうであれば、性急にロシアを非難し、対露制裁の連続的な発動にまでこぎつけた米国は馬鹿を見たことになる。根拠のない新たなロシア非難を展開し、自分の立場を複雑化させることを危ぶんでいるのは間違いない。
連合国だけでなく、時には敵対者に耳を傾けることも有益だ。もし義勇軍とロシアが「マレー機」を撃ち落しても自分らには何の得にもならないというのであれば、あれはキエフ当局の扇動であった可能性があり、それについては立ち止まって考えねばならない。それに義勇軍もロシアの専門家らも「マレー機」の後、キエフ当局からは新たな扇動がありえると警告を発していたではないか。これについても注意を傾ける必要があったのだ。だが米国はそれをしなかった。結果、新たな扇動はまもなくしてやってきてしまった。そして避難民の車列をドンバスの義勇軍が銃撃したという「デマ」も、おそらく扇動だったのだ。
http://japanese.ruvr.ru/2014_08_20/276157776/
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この「ロシアの声」の記事には、誰でも分かる「論理の飛躍」が仕込まれているので取り上げてみたい。その箇所は「第2に」で始まる章である。この章で「ロシアの声」は、親ロ派武装勢力が避難民をグラートで攻撃したときと、マレーシア機が撃墜されたときとで米国の態度が異なることを問題視している。
親ロ派武装勢力が避難民をグラートで攻撃したとき、米国は犯人は分からないとの態度をとったが、マレーシア機が撃墜されてときはすぐにロシアの支援を受けた親ロ派武装勢力の発射したBUKによって撃墜されたと発表した。米国がこの異なる態度をとった理由として「ロシアの声」は次の理由を挙げている。
・マレーシア機を撃墜したのがウクライナ軍であることを示す何らかの兆候を米国が見つけたため、これ以上根拠のないロシア非難(親ロ派武装勢力が避難民をグラートで攻撃したという主張)をためらい、これが避難民を攻撃した犯人は分からないとの態度をとった理由である。
まず、米国がマレーシア機を撃墜したのがロシアの支援を受けた親ロ派武装勢力の発射したBUKによるものだとしたのには、やみくもにそうだと主張している訳ではなく理由がある。米国は偵察衛星で親ロ派武装勢力の支配する地域内からBUKの噴射する上昇する噴射煙を捉えており、その直後に早期警戒衛星がBUKが炸裂したことを示す熱線を探知している。このことを米国は発表しているが、その具体的根拠は示していない。
次に、親ロ派武装勢力が避難民をグラートで攻撃したというウクライナ政府の発表に関して、米国が犯人が分からないとの態度をとったのは、その発表を裏付ける情報が得られていないからにほかならない。裏付ける情報が得られていればもちろん米国はさっそく親ロ派武装勢力とそれを支援しているロシアを批判する。そうしないのは裏付けがないからだ。
しかし「ロシアの声」は、米国が犯人が分からないとの態度をとった理由を、マレーシア機を撃墜したのがウクライナ軍であることを米国が知ったためである、といきなりとてつもなく論理の飛躍した主張を行なう。「ロシアの声」には、ある主張を行なうにはその裏付けとなる根拠が必要である、という基本的なジャーナリズムとしての論理性が欠落している。ジャーナリズムとしての論理性を持っていれば、米国が犯人が分からないとの態度をとった理由が、犯人がだれであるかの裏付けがないからだと当然考える。それをこともあろうに、マレーシア機を撃墜したのがウクライナ軍であることを示す何らかの兆候を米国が見つけたため、これ以上根拠のないロシア非難をためらったためである、との主張を展開したのである。
「ロシアの声」は、「もし義勇軍とロシアが「マレー機」を撃ち落しても自分らには何の得にもならないというのであれば、あれはキエフ当局の扇動であった可能性があり」と主張している。この主張は、マレーシア機の撃墜が親ロ派武装勢力による「誤射」である可能性をまったく無視している。誤射であれば、自分らには何の得にもならなくとも「あれはキエフ当局の扇動であった可能性があり」ということにはならないのである。
「ロシアの声」の報道の「質」を端的に示すよい例がある。
ノーベル委員会、オバマ氏に平和賞返上を要請
http://japanese.ruvr.ru/news/2014_08_19/276111068/
である。
この記事は次の記事の焼き直しである。しかも6月9日付けの記事である !?
Nobel Committee Asks Obama “Nicely” To Return Peace Prize
http://www.thefinaledition.com/article/nobel-committee-asks-obama-nicely-to-return-peace-prize.html
これと同じ記事は「ロシアの声」しか報じていない。つまり、「ロシアの声」はゴシップメディアの記事を、批判する相手を誹謗・中傷したいために、2ヶ月以上前のゴシップメディアのゴミ記事を今ごろになってそのまま垂れ流すような「堕落したメディア」だということである。まぁ、大手マスメディアを統制下においているプーチン体制下の「御用メディア」である「ロシアの声」らしいといえば言える。
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