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イラクで新政権が発足する見通しになった。11日に首相指名を受けたアバディ国民議会副議長について、イスラム教シーア派やスンニ派の主要勢力が12日までに相次いで支持を表明。アバディ氏は組閣作業に着手した。一方、現職のマリキ首相は一連の手続きについて「憲法違反だ」と反発しているが、身内の離反に加え、米国やイランの後ろ盾も失い、続投は難しい情勢だ。
アバディ氏は12日、「すべての政治勢力が連帯し、イラクが直面する大きな困難に立ち向かうよう求める」との声明文を発表し、国民に結束を呼びかけた。マリキ氏がシーア派に偏重した政権運営でスンニ派との対立を深め、武装組織「イスラム国(IS)」の台頭を招いたとの国内外の批判を意識したものだ。
イラク国内では12日までにシーア派の有力指導者サドル師派や、スンニ派の政党連合が相次いでアバディ氏への支持を表明。同氏はすでに閣僚候補名簿を各派から受け取っており、30日以内に挙国一致内閣の発足をめざす方針だ。
「マリキ降ろし」の背景には、同氏には急速に勢力を伸ばすISに対抗するだけの力がないという各派の危機感がある。「マリキ氏とは協力できない」と公言する部族や民兵組織も多く、首相の交代が不可欠だという判断だ。
マリキ氏率いる最大会派「法治国家連合」を含むシーア派の政党連合が、マリキ氏周辺だけを外して首相交代を画策。法治国家連合に在籍するアバディ氏を引き抜いて首相に推薦した。すぐに首相指名したクルド人のマアスーン大統領らも事前に連携していたとみられる。
これでマリキ氏は追い込まれた。同氏は新首相擁立の動きを察知した10日、首都バグダッド中心部に一部の軍部隊を展開して権力を誇示。しかし、その大半は12日朝までに撤収した。
軍内部でも離反が進んだことに加え、ISとの戦闘に備えて米軍がバグダッドに送った軍事顧問団の存在が、マリキ氏の実力行使を難しくした可能性がある。
イラク憲法は大統領が議会(定数328)の最大勢力から首相候補を指名すると規定している。マリキ氏派は11日の記者会見で、アバディ氏の指名手続きを「憲法違反だ」と批判。マリキ氏の続投を主張した。ところが、イラク国営テレビはその様子を「退任するマリキ首相」と紹介。同氏の退陣は避けられないとの見方が広がっている。
シーア派のマリキ首相にとって最大の後ろ盾となってきたイランも、政権移行を黙認する構えだ。イラン国営通信によると、国防や安全保障を審議する最高安全保障委員会のシャムハニ事務局長は12日、「イラク新首相の法的な選出を支持する」と表明した。11月に期限を迎える欧米などとの核協議を見据え、国際社会との協調を重視したとみられる。
(ドバイ=渡辺淳基、アルビル=神田大介)
■米、宗派間対立に危機感
米国は、新内閣を支持する姿勢を鮮明にしている。
マリキ氏は、2011年の米軍撤退後の政権運営で、自らのシーア派を優遇する姿勢を強めていた。イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」が攻勢を強めた7月以降、オバマ政権は宗派間の和解に向けた取り組みを繰り返し求めたが、応じないマリキ氏に不満を募らせていた。
マリキ氏がマアスーン大統領に反発して続投の意向を表明すると、国務省はいち早く「マアスーン大統領を支持する」との談話を発表し、マリキ氏の退陣と新内閣の発足を後押しした。ヘーゲル国防長官は12日、訪問先のオーストラリアで「新議会、新大統領、新首相が選ばれたのは良いニュースだ。新政府と共に働くのを楽しみにしている」などと述べた。
オバマ政権が「マリキ降ろし」に動いたのは、宗派間の対立が続いたままでは、米国が軍事介入をしてもかえってスンニ派とシーア派の対立をあおったり、「米国はシーア派に肩入れしている」という見方が広がったりしかねないと危機感を抱いたからだ。
オバマ大統領は11日、休暇先のマサチューセッツ州マーサズ・ビンヤード島で声明を読み上げ「イラクの危機に対して、米国による軍事的な解決策はない。イラクの人々が団結し包括的な政権をつくることが唯一の解決策だ」と改めて強調した。
(ワシントン=大島隆、シドニー=郷富佐子)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11296916.html
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