http://www.asyura2.com/14/warb13/msg/704.html
Tweet |
7月21日 Russia Todayは、陸軍参謀総長のアンドレイ・カルトポロフ中将と空軍参謀本部主任参謀のイゴール・マクシェフ中将が、ウクライナとアメリカに対し、MH17便撃墜事件に関して次の質問を行なったとしてそれを掲載した。現在ではそれから3週間余りが経過した。この経過中にいくつかの事実が明らかになってきている。ここではその質問内容と、現時点でのその意味するところを明らかにする。
10の質問
1.墜落直後、ウクライナ当局が親ロシア派を犯人として非難したのはどのような根拠があってのことか?
2.ウクライナは紛争地域においてBUKミサイルシステムをどのように使用しているのか、詳しく説明できるか。また、なぜこのミサイルシステムが紛争地域に配備されているのか。親ロシア派は飛行機を持っていないようにみえるが。
3.なぜ、ウクライナ当局は事故原因究明のための国際委員会を設置しないのか。いつ、このような委員会体制で捜査を始めるのか。
4.ウクライナ軍は、国際的組織の調査員に対し地対空ミサイルの発射装置を含め、所有する全ての空対空、地対空ミサイルを公開する意思があるか。
5.信頼できる航空記録から、事故当日のウクライナ軍用機の航路について、国際委員会に情報を提供できるか。
6.なぜ、ウクライナの航空交通管制官は、北へ向かう通常の航路から外れ、対テロ作戦空域へと向かったMH17便の進行を許可したのか。
7.紛争地域の全空域がレーダーによる航空管制システムでカバーされていないのに、民間機の飛行を中止しなかったのはなぜか。
8.ウクライナで働くスペイン人の航空交通管制官がソーシャルメディアで発信した情報によれば、ウクライナ上空でウクライナの軍用機2機がボーイング777機に併飛行していたとある。これに関してウクライナの公式見解はどのようなものか。
9.ウクライナ航空交通管制官とボーイング機乗組員との通信記録、そして、ウクライナのレーダーシステムに蓄積されたデータに関し、なぜ、ウクライナの安全委員会は国際委員会の調査を待たずに調査を始めたのですか。
10.ウクライナでは同様の事件が2001年にも起きた。このときは、ロシアのTu-154機が黒海に墜落したが、当時のウクライナ政府は反論できない証拠を突きつけられるまで、ウクライナ軍の事件への関与を否定した。この事件から、何か学んだことはあるか。
それでは個別に見て行こう。
1.墜落直後、ウクライナ当局が親ロシア派を犯人として非難したのはどのような根拠があってのことか?
MH17便の墜落当日、ウクライナ保安局は地元の親ロ派武装勢力のメンバーがロシア軍幹部に「撃墜した」と報告する会話の盗聴記録を公表した。保安局は、親ロ派が民間機を軍用機と誤認して撃墜した証拠と主張しているが、真偽は不明。欧米メディアによると、公表された会話は三つ。そのうちの一つは墜落20分後のものとされ、親ロ派勢力の指揮官とされる人物がロシア軍の情報将校に「われわれは飛行機を撃墜した。機体を捜索、写真撮影に向かっている」と報告。「どのぐらい前のことだ」との質問に「約30分前だ」と答えている。
別の会話は親ロ派勢力同士のもので、「飛行機は空中でばらばらに破壊された。われわれは最初の犠牲者を見つけた。一般市民だ。民間機なのはほぼ100パーセント確実だ」「墜落現場で武器は見つかったか」「まったくない。民生品、医薬品…」などのやりとりが聞かれたという。
全世界の旅客機の飛行状況をデータベースに記録しているflightradar24のデータから、MH17便の記録から消えたのが、13:21UTCであることが分かっている。
http://www.flightradar24.com/data/flights/mh17/
会話盗聴記録はここから見ることができる。
https://www.youtube.com/watch?v=CiVgwtwZ1pA
最初の記録は親ロ派武装勢力の司令官とロシア軍情報将校との会話である。時刻は13:40UTC。
親ロ派武装勢力司令官:
「私たちは先ほど飛行機を撃墜した。グループミネラだ。それはYenakievoを超えて落下した」
ロシア軍情報将校:
「パイロットはどこだ」
親ロ派武装勢力司令官:
「飛行機を探しに行く。ヤッホー」
ロシア軍情報将校:
「それは何分前だ」
親ロ派武装勢力司令官:
「約30分前だ」
2番目の記録は親ロ派武装勢力同士での会話である。時刻は13:33UTC。
親ロ派武装勢力A:
「こちらはChernukhinoの者たちだ。Chernukhinoをベースにしているコサックが飛行機を撃墜した。飛行機は空中でばらばらになった。Petropvlovskayaの方向で我々は最初の200人を発見した。」
親ロ派武装勢力B:
「200人も?」
親ロ派武装勢力A:
「そう。民間人だ。
親ロ派武装勢力B:
「了解。そこに何がある?」
親ロ派武装勢力A:
「それは間違いなく民間航空機だ」
親ロ派武装勢力B:
「そうか。多くの人間がいるのか?」
親ロ派武装勢力A:
「機体の破片は右ヤードに落下した。これだけだ」
親ロ派武装勢力B:
「どのような航空機か?」
親ロ派武装勢力A:
「まだそれを把握していない。私は最初の胴体が落下した地点を調査している。内部支持具、座席や遺体がある」
(以下、省略)
3番目の記録では、親ロ派武装勢力がロシア軍高官に伝えている。時刻は14:42UTC。
親ロ派武装勢力:
「飛行機は、Torezに墜落した。それは民間機だ。Grabove付近に墜落した。女性と子供の死体がたくさんある。本がある。彼ら(ロシアメディア)はテレビでそれがウクライナ軍のAn26輸送機だと言っている。しかし、それにはマレーシア航空のロゴがある。」
ロシア軍高官:
「それはウクライナの領土で何をやっていた? それは彼らがスパイを運んでいたことを意味する。彼らは戦争地帯上空を飛行してはならない」
この会話盗聴記録について、ロシアは異なる2つの会話盗聴記録を1つにつなぎあわせたものであり、親ロ派武装勢力がMH17便を撃墜した証拠にはならないと反論している。しかし、ロシアが「異なる2つの会話盗聴記録を1つにつなぎあわせたもの」とした具体的根拠は示されていない。
なお、この会話盗聴記録の作成日付が前日の16日であることをもって、この会話盗聴記録が事前に偽造されたものだとする主張があるが、これは単にYouTube側の問題であって、動画を落とすと作成の日付が一日前になってしまう仕様になっているためである。
7月17日、米CNNテレビは墜落機について、米政府高官が「撃墜されたと結論づけた」と語ったと報じた。高官によると、レーダーシステムが墜落前の同機を追尾する地対空ミサイルをとらえ、別の探知システムが同機への命中を示す熱を検知した。米政府は弾道を解析していると伝えた。18日、米は旅客機の撃墜について「ミサイルは親ロシア派支配地域から発射された」と述べ、親ロ派が撃墜した可能性が高いとの見方を示した。しかし、この具体的根拠は示されていない。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は18日、米当局者の話として、ミサイルはロシアから親ロ派に供給された可能性が非常に高いと報じた。一方、国防総省のカービー報道官も18日の記者会見で、マレーシア機が「(旧ソ連製の)地対空ミサイルSA11(ブク)によって撃墜された強い証拠がある」と説明。また、親ロシア派が車両搭載型の対空兵器に関してロシアから訓練を受けているのは間違いないと強調した。いずれも具体的根拠は示されていない。
マレーシア機を親露派が軍用機と誤認して撃墜したことをうかがわせる証拠がある。
ウクライナ東部で17日にマレーシア航空(Malaysia Airlines)機が墜落したと発表される前に、同国からの分離独立を求めている親露派がウクライナ軍の輸送機を撃墜したというコメントを交流サイト(SNS)に投稿したが、後になってそのほとんどを削除していたことが分かった。
親露派は17日午後、ウクライナ軍との戦闘が続く東部の工業地帯上空を飛行中のウクライナ軍機少なくとも1機を撃墜したとの最初の一報を投稿した。
一方的に独立を宣言している「ドネツク人民共和国(Donetsk People's Republic)」の自称防衛相イーゴリ・ストレルコフ(Igor Strelkov)氏は、ロシアの交流サイト最大手「フコンタクチェ(Vkontakte)」 の自身のページに、「たった今、トレーズ(Torez、ドネツク州の都市)近郊でアントノフ26(An-26)型機を撃墜した」と書き込んでいた。
ストレルコフ氏はさらに「これが『鳥が落ちた』ことを証明する動画だ」と書き込んだ。同氏のページには、マレーシア航空機についてウクライナのメディアが報道したものと完全に一致する情報へのリンクが掲載された。
この書き込みは直後に削除されたが、ウクライナ東部の同国軍司令部はこの投稿が表示されたディスプレーの画像を保存しており、英文の報道機関向け発表に添えて公開した。
ストレルコフ氏のものとされる書き込みでは、同機の撃墜に使用されたミサイルの詳細は明らかにされていない。しかしドネツク人民共和国は、その数時間前にマイクロブログのツイッター(Twitter)の公式アカウントから次のように投稿し、墜落したマレーシア航空機が飛行していた高度1万メートルまで到達可能なロシア製ミサイルを親露派が手に入れていたことを明らかにしていた。
「@dnrpress:DNRは(ウクライナの)地対空ミサイルA1402連隊から自走式ブーク(Buk)地対空ミサイルを奪った」。この投稿も後に削除された。
http://www.afpbb.com/articles/-/3020897
親ロ派武装勢力の自称防衛相イーゴリ・ストレルコフ氏のSNS投稿内容
https://twitter.com/Charles_Lister/status/489805243547271169/photo/1
さらにMH17便の墜落直後、複数のロシアメディアは親ロ派武装勢力がウクライナ軍のAn-26輸送機を撃墜したと報じた。
イタルタス通信
http://img.asyura2.com/us/bigdata/up1/source/30171.jpg
RIA ノーボスチ通信
http://ria.ru/world/20140717/1016409306.html
これらの親ロ派武装勢力高官のSNS投稿、ロシアマスメディアの発表などから、マレーシア機を親露派が軍用機と誤認して撃墜したことが示唆される
2.ウクライナは紛争地域においてBUKミサイルシステムをどのように使用しているのか、詳しく説明できるか。また、なぜこのミサイルシステムが紛争地域に配備されているのか。親ロシア派は飛行機を持っていないようにみえるが。
「ウクライナは紛争地域においてBUKミサイルシステムをどのように使用しているのか、詳しく説明できるか」と訊かれても答えられるような情報ではないだろう。敵方に軍事情報に関するものを詳しく説明する者は誰もいない。質問する方が間違っている。BUKをウクライナ東部に配置するのは当然ロシアからの侵入を警戒してのこと。質問するまでもない常識のレベルである。
3.なぜ、ウクライナ当局は事故原因究明のための国際委員会を設置しないのか。いつ、このような委員会体制で捜査を始めるのか。
これについてはオランダを中心とする国際調査団が調査を開始している。ただし、現場周辺の状況が危険になってきているため、現時点では調査は中断している模様。マレーシア当局によれば、今週中に国際調査団による暫定調査結果が発表される予定である。
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303570604580077060512406390
4.ウクライナ軍は、国際的組織の調査員に対し地対空ミサイルの発射装置を含め、所有する全ての空対空、地対空ミサイルを公開する意思があるか。
(2に同じ)
5.信頼できる航空記録から、事故当日のウクライナ軍用機の航路について、国際委員会に情報を提供できるか。
当日のウクライナ軍用機の航路は秘密情報に該当すると思われる。ただし、国際調査団から提出を求められれば提出するのが筋だろう。
6.なぜ、ウクライナの航空交通管制官は、北へ向かう通常の航路から外れ、対テロ作戦空域へと向かったMH17便の進行を許可したのか。
MH17便はいつも通りに東に向う航路を飛行していた。北へ向ったという事実はない。これはflightradar24のデータから明らかである。
7.紛争地域の全空域がレーダーによる航空管制システムでカバーされていないのに、民間機の飛行を中止しなかったのはなぜか。
7月14日に6,000mを飛行中のAn-26輸送機がミサイルで撃墜されたことを受けて、安全のため当該空域での最低飛行高度が10,000mに引き上げられている。この高度なら飛行そのものを禁止するほどの危険性はないと考えたのだろう。ちなみにイラク上空では6,000m以上であれば飛行可能である。ほかにもシリアやアフガニスタンなど8地域についてミサイルや小火器の発射に関する警告が出されているが、飛行は禁止されていない。最低条件を定めた政府の規制に従うか、それ以上の安全措置を取るかは航空会社の判断による。
8.ウクライナで働くスペイン人の航空交通管制官がソーシャルメディアで発信した情報によれば、ウクライナ上空でウクライナの軍用機2機がボーイング777機に併飛行していたとある。これに関してウクライナの公式見解はどのようなものか。
ウクライナで働くスペイン人の航空交通管制官は実在しない。つまりロシアはウソの情報を元に質問していることになる。
9.ウクライナ航空交通管制官とボーイング機乗組員との通信記録、そして、ウクライナのレーダーシステムに蓄積されたデータに関し、なぜ、ウクライナの安全委員会は国際委員会の調査を待たずに調査を始めたのですか。
これに関しては情報がないので何とも言えない。
10.ウクライナでは同様の事件が2001年にも起きた。このときは、ロシアのTu-154機が黒海に墜落したが、当時のウクライナ政府は反論できない証拠を突きつけられるまで、ウクライナ軍の事件への関与を否定した。この事件から、何か学んだことはあるか。
これに関しては情報がないので何とも言えない。
以上から、ほとんどの質問は回答がすでにでているか、回答するまでもない常識的なものであるか、軍事情報に属するもので回答できないものである。9と10については、ウクライナが回答しようと思えば回答できるもの。
ロシアの10の質問は総じて余り意味がないどころか、逆に薮蛇になっている部分もある。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。