http://www.asyura2.com/14/warb13/msg/688.html
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米欧露の「経済制裁合戦」に関する『ニューズウィーク日本版』の記事を紹介する。
この記事は、ロシアがEU・米国・豪州に対し野菜・果物・豚肉・鶏肉・乳製品の輸入禁止措置が発表される前に書かれたものだが、筆者がいう「打開のカギは制裁解除のタイミング」は、まさに、実効性が高い対抗措置としての経済制裁をロシアが打ち出したこの機会であろう。
筆者は、「経済界が黙っていない」という小見出しを立て、ドイツ情報部門に依拠するかたちで、「欧米の政策を懸念するオリガルヒ(新興財閥)の一部が、政治的関心よりも経済的利害を重視して、プーチンに歯止めをかけようとする可能性は極めて高い」と書いているが、ベレゾフスキー氏に代表されるような“政治権力まで我がものにするかたちで経済的利益の極大化”を図った90年代オリガルヒの末路を知っている現在のオリガルヒが、そのような愚かな動きをするはずもない。
プーチン大統領が現在抱えている最大の難関は、支持率の低下を回避しつつ、ウクライナ東南部の強硬な独立=ロシア編入派を排除もしくは懐柔し、自治権拡大を交換条件にウクライナにきちんと残留させることである。
プーチン大統領は、想定している落とし所に至る道筋として、ウクライナ軍の攻勢によって、親露的心情を持つ市民にもたらされる災厄と親露派武装勢力の弱体化を“期待”している可能性が高い。
ウクライナ東南部からロシアに流入した難民は80万人とされ、ドネツクなどでもライフラインが止まり食糧も十分に行き渡らない状況にある。
親露派武装勢力の反撃力にも限界が見えてきたなか、このまま進めば、ロシア・プーチン政権は、親露派には壊滅を避ける救いを、キエフ政権には内戦の終結を早めるための“仲介”というポジションをとる絶好の機会が訪れるだろう。
ウクライナ問題に介入し経済制裁まで持ち出してロシア非難を展開してきた欧米諸国も、親露派武装勢力が“敗退”するかたちで収束に向かえば、ロシアが武器の供与などを控えたと認定することができ、ロシアとの“手打ち”に進みやすい。
米欧露合作の「ウクライナ危機」とはいえ、世界の人々にそう悟られずに収束させるのはなかなか難しいということだ。
命を奪われたり酷い目にあわされたりするのは量としてしか見られていない一般人というのが世の常である。
※ 関連参照投稿
「ロシアの“実効性”が高い「EU&米国向け経済制裁」の実施により欧米―露間の制裁合戦は終息へ」
http://www.asyura2.com/14/warb13/msg/662.html
「対ロ制裁、欧州企業に影:そのうえに対EU制裁:資源国家に制裁をかけても効果薄:仕掛けた富裕国の方が辛い」
http://www.asyura2.com/14/warb13/msg/671.html
「デフォルトを嫌う金融家のため、危機を頼りにする軍需産業のため、「東西」の合作で分断と対立を煽られたウクライナ」
http://www.asyura2.com/14/senkyo162/msg/467.html
「ウクライナ情勢の今後:軍事的対応はハナからなしだが、実質的経済制裁も避けたい欧米先進国:焦点はウクライナ東南部地域の“地」
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/169.html
「ウクライナ危機で問われるNATOの意味:存在意義が自覚される契機になることでNATOを救ったロシアのクリミア併合」
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/445.html
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『ニューズウィーク日本版』2014−8・12/19
P.19
「プーチンに揺さぶりをかける 経済制裁の駆け引き
ウクライナ危機で対決を深める欧米とロシア 打開のカギは制裁解除のタイミンクにあり
ロシアにエネルギー供給を依存するヨーロッパ諸国は、ロシアに対する強硬な経済制裁には賛成しないとされてきた。しかしその通説を、マレーシア航空機撃墜事件が変えた。
先月末にアメリカ政府がロシアへの追加制裁を発表すると、当初は及び腰だったEUも足並みをそろえる形でロシアへの武器の輸出を禁止。軍事関連の製品や技術は軍事転用できるものも含め取引を制限するなど、制裁強化に乗り出した。
欧米が連携した今回の追加措置は、北極海で原油採掘を試みるロシア石油業界の資源調達にも影響を与え、これまでよりはるかに大きな意味を持つとみられている。
ただし、ロシア政府の振る舞いを牽制できるかどうかは別の話だ。イランやミャンマー(ビルマ)への経済制裁は、ある程度の外交的な活路を見いだした。だが、経済制裁が当事国の政権の振る舞いを変えた成功例は少ない。制裁の目的を果たしたケースは、全体の約3分の1という見方もある。
体制の変化を促すより特定の政策の変化を誘導する制裁のほうが、効果を挙げやすい。キューバのカストロ前国家評議会議長や、ジンバブエのムガベ大統領がその例だ。
さらに、国際的な評判に敏感な国や、経済面や政治面での国際関係を維持したい国のほうが効き目がある。例えば北朝鮮のように閉鎖的な独裁政権よりもアパルトヘイト時代の南アフリカのほうが、制裁の効果は高い。
従って今回のロシアは、制裁を科す理想的なケースにも見える。欧米はプーチン大統領に、ウクライナ東部の分離独立派への支援をやめるという具体的な行動を求めている。エネルギー輸出を原動力とするロシア経済は、グローバル市場から切り離されたら維持できない。
経済界が黙っていない
問題は、プーチンが国内で誇る高い支持率だ。もちろん、経済成長への支持も大きいが、プーチンなら世界の超大国としてのロシアの地位を守り、欧米の圧力に屈しない国でいられるという期待もある。一連の制裁はロシア経済に深刻な打撃を与えるかもしれないが、市民の大半に影響が広がるのは、もう少し先だろう。それまでは、プーチンがウクライナをめぐって少しでも後退したと見られる行動を取れば、政治的なリスクにつながりかねない。
もっとも、ロシアのエリート層は既に変わり始めているかもしれない。独シュピーゲル誌によれば、「欧米の政策を懸念するオリガルヒ(新興財閥)の一部が、政治的関心よりも経済的利害を重視して、プーチンに歯止めをかけようとする可能性は極めて高い」と、ドイツの情報当局はみている。
親ロシア派武装勢力の兵器は無尽蔵にも思えるが、ウクライナ軍は東部で急速に巻き返している。親ロシア派への兵器供与を表向きは否定しているロシア政府が、政策の転換を表明することは考えにくい。しかし、親ロシア派が鎮圧されることを容認する方向へと、徐々にシフトすることはあり得るだろう。
その場合も、ロシアと欧米の関係が正常化するまでには、しばらく暗闘がかかりそうだ。ロシアは既に、ポーランド産の農産物の輸入禁止や、アメリカの要人へのビザ発給停止といった報復措置を講じている。
経済制裁の解除は、制裁をちらつかせる以上に効果的な場合も少なくない。今回いち早く制裁を発動した米政府は、切り札を手にしたとも言える。今のところロシアヘの制裁は強化される一方だが、切り札を使うタイミングはまだ残されている。
ジョシュア・キーティング」
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