01. 2014年8月06日 16:53:51
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オバマ政権だけの責任というわけでもないが国際紛争と、その犠牲が今後、増加していく確率は高いだろう http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41403 「警察官」の役割を放棄する米国、 世界は危険な混乱状態に オバマ政権のひ弱な対外政策を元上院議員が批判 2014年08月06日(Wed) 古森 義久 米国と、日本など同盟諸国との絆はすっかり弱くなってしまった――。民主党上院議員を長年務め、同党副大統領候補にもなった大物政治家が、オバマ政権の対外政策への批判を表明した。 オバマ政権が同盟を軽視するため、今後、世界では動乱がますます増えるだろうとも警告している。やはり現在の世界は、米国のリーダーシップの弱体化により新たな混迷の時代に入った、ということだろう。中国の脅威に直面する日本にとっても、戦後最大の危機とさえ言えそうである。 「他人事」のような対応で信頼を失う米国 この警告を発したのは、元民主党上院議員で、2000年の大統領選挙では民主党のアル・ゴア候補とともに副大統領候補に指名されたジョセフ・リーバーマン氏である。同氏は1989年から2013年まで上院議員を務めたが、2007年からは民主党の外交政策に対する批判を強め、無所属となった。 リーバーマン元上院議員は米国大手紙「ウォールストリート・ジャーナル」(8月1日付)に「(世界の)混乱が増す中で米国の同盟諸国が漂流する」と題する論文を寄稿し、自らの見解を発表した。 http://online.wsj.com/articles/joseph-lieberman-leaving-u-s-allies-adrift-as-chaos-rises-1406849664?KEYWORDS=Joseph+Lieberman リーバーマン氏は、まず国内政治でも国際政治でも友邦や同盟パートナーをいつも重視し、緊密に扱うことが米国の成長や安定には不可欠だと強調する。そして同氏はこう述べる。「大混乱の中にある現在の世界においてこそ、米国は超大国として世界各地の紛争への対応に関与し、しかも敵と対峙し、味方を支援することに徹しなければならない」
しかし「近年の米国はそうした行動を取らず、味方にも敵にも、曖昧なメッセージばかりを発信するようになった。イラン、ロシア、中国などが積極果敢に攻勢をかけてくるのに対し、優柔不断の態度を見せ、それら敵対的な諸国をますます増長させている」としてオバマ政権への辛辣な批判を展開した。 同氏は米国の優柔不断が危機や混乱を深めた実例として、以下のケースを挙げていた。 ・シリア内戦では、アサド独裁政権に反旗を翻すシリア国内の自由民主主義勢力が米国に武器供与を求めたが、オバマ政権は応じず、アサド政権の弾圧強化を許した。中東における米国の同盟国であるサウジアラビアなどが、シリアの反政府勢力への軍事支援をオバマ政権に懇請したが、同政権は動かなかった。一方、ロシアとイランはアサド政権への武器援助を大胆に実行し、中東での影響力を強めた。 ・イランの核兵器開発阻止のための交渉でも、オバマ政権は西欧諸国と共にサウジアラビアやイスラエルの要請を無視する形でイランへの譲歩を重ねた。その結果、ここでもオバマ政権は年来の同盟パートナーであるサウジアラビアやイスラエルからの信頼を大幅に失った。 ・オバマ政権は、新たな同盟パートナーであるはずのイラクの新政権への軍事支援の要請に応じず、イラクにおける新たなイスラム過激勢力の勢力拡大を許した。 ・イスラエルとハマスの戦闘に対するオバマ政権の対応は中東の米国の同盟諸国を失望させ、離反させた。イスラエルが米国の同盟パートナーなのに対し、ハマスはテロ攻撃を頻繁に実行する過激な反米の組織であるにもかかわらず、オバマ政権は両者を対等に扱おうとする。この態度はイスラエルだけでなく、中東で米国に協調的だったエジプト、サウジアラビア、ヨルダン、アラブ首長国、さらにはパレスチナ統治機構までの反発を招いている。 ・東欧でも、オバマ政権のクリミア問題でのロシアへの対応の遅さ、生ぬるさがウクライナだけでなく、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランド、エストニア、リトアニア、ラトビアなどの失望を買った。 同氏はこうした実例を挙げて、オバマ政権が外国での出来事に関わりを持たないようにする傾向の危険性を指摘していた。 世界はますます無秩序で無法の世界へ 従来の米国の政権ならば、外国での紛争や混乱が一定限度を超えれば、それ以上の危機の拡大を防ぐため、あるいは米国への悪影響を阻むために、なんらかの形で直接的な介入や関与をしてきた。だがオバマ政権はとにかく関与を避けるのだ。そして軍事力の効用を認めず、むしろ一切の軍事を忌避する傾向が強い。 オバマ大統領は、シリア内戦でアサド政権が大量破壊兵器を使った場合を「レッドライン」と定義づけ、そのラインを越えた際には、米国は軍事力を使って抑止や懲罰の行動を取ると明言していた。だが、実際に化学兵器が使用されても、オバマ政権はなんの力の行使もしなかった。 クリミア問題でも同様だ。マレーシア航空の民間旅客機が一方的に撃墜されたのに、オバマ政権はその犯人たちを罰するという構えを示さない。もはや「世界の警察官」の役割は放棄している、というふうなのだ。そうなると、警察の存在しない社会に無法や暴力が広がるのは自然の帰結ということになる。 リーバーマン論文は、「その結果、中東でもアジアでも東欧でも、米国の同盟諸国はいまや後ろ向きとなり、孤立無援に近い疎外感を覚え始めた」と総括する。 同論文はさらに、クリミア問題でも、米国はその気さえあれば、ウクライナ政府軍に強力な兵器を提供できたし、ロシアやウクライナに近いNATO内部のバルト三国などに米軍を送りこむこともできた、と述べている。「クリミア問題でオバマ政権が実際にはなにもしなかったのは間違いだ」とも指摘していた。 米国の信頼低下で高まる軍事衝突の危険性 さてリーバーマン元上院議員はこの論文で日米同盟についても正面から警鐘を鳴らしていた。中東での状況の次にアジアを挙げて、以下のように警告を発する。 ・アジア・太平洋地域では、米国の最も緊密な同盟諸国が中東での出来事を観察し、もし自国が中国に威嚇されたら米国の支援に頼れるのか否かを決めようとしている。 ・明らかにベトナムの管轄である南シナ海の海域で、中国が大規模な石油掘削作業を一方的に始めた際、アジアの同盟諸国は米国の生ぬるい対応にがっかりさせられた。 ・東シナ海の尖閣諸島は、日本も米国も長年、完全な日本領と見なしてきた。中国がその主権の主張を強め始めたとき、日本政府は独自に防衛力強化を加速させた。この動きは、有事において日本を防衛するという米国の誓約に対して、日本が信頼をなくしつつあることを示している。オバマ大統領がこの4月に訪日した際、日米安保条約を尖閣に適用すると明言したにもかかわらず、日本側の日米同盟への信頼は揺らいでいるのだ。 リーバーマン論文は、同盟諸国の米国に対するこのような信頼の低下は、地域や世界の秩序と安定を損なわせるだけでなく、米国の国家安全保障にとっても危険だと指摘していた。また、米国への信頼を失った同盟諸国は、これまでとは異なる同盟や協力の相手を求めるようになるか、あるいは独自に軍事力強化への道を進むか、という選択を迫られるようになり、いずれにしても軍事衝突への危険性を高めることになるという。まさしく日本にとっても重大な事態なのである。
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