02. 2014年7月24日 01:43:23
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41311 ガザ地区:どちらも望んでいなかった無意味な戦争 2014年07月24日(Thu) Financial Times (2014年7月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)【写真特集】死者500人超、激化するガザ攻撃 ガザのシェジャイヤ地区で、イスラエル軍の攻撃で上がる煙と逃げるパレスチナ人たち〔AFPBB News〕 パレスチナ・ガザ地区のハマスとイスラエルが今日行っている戦争の無益さは、どう表現しても誇張にはならないのではないだろうか。 どちらの側も戦いを再開したいとは思っていなかった。だが、ハマスがそのわずかな領地から手製のロケット弾を発射すればイスラエルがお返しに誘導ミサイルと砲弾の雨を降らせるという、何度も繰り返されてきたカオスと恐怖のスパイラルには、非情な論理がある。 どちらの側も、人の血が流れている以上は何らかの成果を上げなければならないと考えている。ハマスにとっては7年に及ぶガザ地区の封鎖を解くこと、イスラエルにとっては抑止力を回復することがそれに当たる。どちらの側も、悲惨な状況から抜け出せず明るい未来という望みからも切り離されたガザ地区の住民170万人のために、長期的な展望を描いているようには見えない。 高くなった流血の惨事のハードル イスラエルがガザ地区のハマスやレバノンのヒズボラと以前行った非対称戦の経験から言えば、大量殺戮を止めるには、残忍きわまりない出来事が起こって世界中から非難の声が沸き起こり、外国や国際機関が行動せざるを得なくなるという展開が必要になるのが普通である。ところが今回の戦争では、その展開が始まるのに必要な流血の惨事のハードルが高くなっているようだ。 イスラエルが先週後半に地上戦を始めた後、パレスチナ側の死者の数は600人を超えた。大部分が民間人だ。一方、イスラエル側の死者の数は22日朝までで29人であり、うち27人が兵士だった。しかしガザの海岸で先週サッカーに興じていた少年4人がイスラエルの砲撃を受けて亡くなったとか、ガザ地区の数家族が一度に命を落としたといった最大級の恐ろしい出来事でさえも、戦いをやめさせる力を持つには至っていない。 確かに、事態打開の選択肢を模索している米国のジョン・ケリー国務長官はテレビの生放送の合間に、多数の民間人や子供の死傷者を出したイスラエルの攻撃を評して「まったくひどいピンポイント作戦」だと口走った。だが、すぐに国の方針に沿った発言をするモードに戻り、ハマスの連続攻撃に対するイスラエルの対応は「適切かつ正統な」自衛だと言い切った。 このように死傷者が出る事態のきっかけを突き止める作業には、政治的な思惑がつきまとうのが常だ。今回の戦争は、イスラエルの占領下にあるヨルダン川西岸地区の入植地出身のユダヤ人神学生3人が先月、誘拐・殺害された後、パレスチナ人の10代の若者がその報復として殺害されたことから始まった。 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はハマスを非難したが、ユダヤ人神学生を誘拐したのはヘブロンのカワスメ一族だと広く信じられている。イスラエルとの休戦を何度も妨害してきた一族だ。 ハマスとファタハの和解にまた障害 この一族は今回、ハマスとファタハの統一政府発足合意も妨害した。ファタハはヨルダン川西岸地区の一部を支配しているナショナリストの勢力で、ハマスにとってはパレスチナ自治政府内のライバルである。 ハマスは2006年の評議会選挙で勝利した後、ファタハと対立して多数の死者を出す事態になり、最終的にファタハをガザ地区から追い出したが、その後和解を求めるようになった。ほぼ完全に孤立する状態に陥ってしまったからだ。 ハマスはまず、2011年にイランと仲たがいした。シリアの内戦でバシャル・アル・アサド大統領側につくことを拒んだことが原因だった。また昨年夏には、エジプトでアブデル・ファタハ・アル・シシ氏が軍事クーデターを起こした後、ムスリム同胞団の仲間を失った。大統領になったシシ氏は、ガザ地区の北の境界と港を2007年から封鎖しているイスラエルと同様に、ガザ地区の南の境界を封鎖した。 ハマスとファタハの統一政府発足合意を受けて、イスラエルのネタニヤフ氏は、米国の仲介で行われていたパレスチナ国家に関する交渉を中断した。もっとも、この交渉はすでに頓挫していた。パレスチナ側がパレスチナ国家の樹立を希望していた土地への植民を、イスラエルの連立政権の右派が加速させていたからだ。 またネタニヤフ氏は誘拐事件の発生に対し、ヨルダン川西岸地区にいるハマスの活動家を徹底的に捜査した。これにはパレスチナ自治政府も一枚かんでいたように見受けられた。ハマスはファタハとの関係修復を事態の打開策と見ていたかもしれないが、ファタハはハマスの弱みにつけ込んだのだ。陰謀はここで終わらない。 アラブの指導者たちの奇妙な沈黙 アラブの指導者たちは、パレスチナ人との儀礼的な連帯を示す努力を惜しまないのが普通だが、今回は奇妙なことに沈黙を守っている。その理由の1つは、サウジアラビアやエジプト、そしてその同盟国がムスリム同胞団に強い敵意を抱いていることに求められよう(ハマスは同胞団のパレスチナ支部だ)。 また、シリアの内戦が激しいことと、スンニ派のジハード(聖戦)主義組織がシリアからイラクへと電撃的に勢力を拡大したことにより、ガザ地区の争いの影が薄くなっている面もあるのだろう。うんざりするほどお馴染みの争いがまた始まったようだと思う人が多い、ということだ。 逆説的だが、イスラエルはハマスを弱体化させたいと思っているが、打倒したいとは考えていない。軍隊で使われている冷笑的な表現で言うなら、「芝を刈りたい」だけなのだ。 なぜか。それは、もしハマスを倒せば、次に控えているのは「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」などによる勝手気ままな残虐行為だからだ。ISISはすでにガザ地区や、地中海東部沿岸地方に点在する(そして、ジハード主義者の養成所として機能している)パレスチナ難民キャンプで支持者を得ている。 地下に広がる「ロウワー・ガザ」 イスラエルが始めてエジプトが後に続いた境界の封鎖により、ガザ地区は天井のない監獄と化している。ハマスはその看守だ。ガザ地区封鎖はハマスの力を強めている。ハマスが武装を進めたり地区内の経済(のようなもの)を維持したりするのに使っている地下トンネルのネットワークは、以前想定されたものよりもはるかに大きく、イスラエル軍の報道官が「ロウワー・ガザ」と評したほどだ。 もし地上の境界を再度開けば、ガザへの物資流入の監視はずっと容易になるだろう。境界を開くということは、ファタハとハマスの統一政府発足合意を――暴力をやめるという条件付きで――受け入れることを意味し、パレスチナ自治政府が境界を警備することを意味するだろう。 しかし、そこまでするにはパレスチナ国家に関する真の交渉を行う必要がある。そして、それを行わなければ、ISISというオオカミがイスラエルとパレスチナの玄関先に遅かれ早かれ姿を現し、現下の不毛な争いがむしろ懐かしく思われる事態になってしまうだろう。 By David Gardner
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41310 トルコ首相、イスラエルのガザ攻撃を非難 2014年07月24日(Thu) Financial Times (2014年7月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) トルコ首相、「エジプト政変の背後にイスラエル」 来月実施される大統領選挙に出馬するレジェップ・タイイップ・エルドアン首相〔AFPBB News〕 トルコはパレスチナ自治区ガザの死者を悼む3日間の服喪を宣言した。一方、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は22日、ガザの紛争の犠牲者との連帯を示すためにパレスチナのストールを肩にかけて国会に臨み、間近に思えたイスラエルとの和解への期待を打ち砕いた。 今年に入ってからというもの、エルドアン氏を含めたトルコ、イスラエル両国の有力者は、2011年に格下げされた両国外交関係の全面正常化は決まったも同然だと示唆してきた。 だが、トルコがイスラエルによるガザ攻撃を痛烈に非難したことから、イスラエル沖のガス田とトルコを結ぶガスパイプラインに関するエネルギー協力への道を開いた関係改善は議題から消え去った。 トルコとイスラエル、外交関係正常化への努力も水の泡 エルドアン氏は22日、来月の大統領選挙を前に首相として最後の国会演説になると語った演説で、同氏の政敵はイスラエルに従属し、国際的な陰謀に加担していると批判した。「彼らはトルコにイスラエルを守る見張り役を務めてほしがっている」とエルドアン氏は述べた。「だが、我々は残虐な国のために見張りを務めたりしない」 ここ数日、エルドアン政権はイスラエルを正当な国家と見なすかどうかに疑問を投げかけたように見えた。エルドアン氏はまた、イスラエルは1948年の建国以来、大虐殺を実行し、大量殺戮を試みてきたと主張した。エルドアン氏はガザに言及する中で、同氏が「十字軍兵士の新たな同盟」と呼ぶものを非難した。一方、トルコのアフメト・ダウトオール外相は、「地域から植民地主義者を排除するために日夜働く」と約束した。 エルドアン氏は先週末、外交関係の「正常化はこうした状況下では不可能に思える」と繰り返し述べながら、イスラエルの「蛮行はヒトラーのそれをも超えた」と訴えた。 エルドアン氏は、トルコは国内のユダヤ系住民を守ると付け加えたものの、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、エルドアン氏の発言の「反ユダヤ主義」的なトーンを非難した。トルコ国内でガザに関する大規模デモが起きたことを受け、イスラエル外務省は市民にトルコへの渡航を控えるよう勧告、外交プレゼンスを縮小し、外交官の家族を引き揚げた。 「エルドアンは国内の政治的ギャラリーを意識して演じている」。トルコの政治評論家のセミ・イディス氏はこう言い、大統領の座を目指すエルドアン氏の野心だけでなく、両国の貿易拡大についても強調した。 エルドアン氏は4月下旬のインタビューで、大使の相互派遣を含めた完全な外交関係の再確立は「数日、ないし数週間」で実現すると語っていた。 両国は、イスラエル軍が2010年にガザ地区封鎖を破ろうとした船に乗っていたトルコ人活動家9人を殺害した事件後の決裂以来、関係改善に向けて尽力してきた。2013年には米国のバラク・オバマ大統領が、活動家の死に対して謝罪するようネタニヤフ氏を説得し、昨年末には、犠牲者への補償金に関する交渉がほぼ完了した。 米国は、この合意は、中東の主要同盟国であるイスラエル、トルコの関係を改善し、両国の緊密な協力への道を開くうえで特に重要だと考えていた。一方、トルコ政府高官らは、拡大するエネルギー需要を満たすためにイスラエル沖のリバイアサン鉱区のガスを利用することへの関心を表明していた。 多くのNATO加盟国からも厳しい目を向けられるトルコ だが、増加し続けるガザの死者数に対するトルコの反応は、トルコと多くの北大西洋条約機構(NATO)加盟国との関係が著しく冷え込んだ時期と重なった。駐トルコ米国大使に指名されたジョン・バス氏は先週、上院の指名承認公聴会で、トルコは権威主義に向かって「漂流」していると述べた。 エルドアン氏の外交政策の顧問を務めるイブラヒム・カリン氏はツイッターでこうつぶやいた。「イスラエルが1週間で300人以上の人を殺したという事実を気にしない人がいる。だが、それに対するエルドアン首相の非難は気にする。なんという正義感か!」 By Daniel Dombey in Istanbul
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