01. 2014年7月23日 01:22:35
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/41289 イスラエルとガザ:いつ、どんな形で終わるのか? 2014年07月23日(Wed) The Economist (英エコノミスト誌 2014年7月19日号)殺戮と破壊がエスカレートしている。だが、どちらの側も勝者にはなれそうにない。 イスラエル軍のガザ空爆、死者118人に イスラエル軍の空爆を受けて黒煙が立ち上るパレスチナ自治区ガザ地区〔AFPBB News〕 パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの抹殺を――少なくとも弱体化を――目指すイスラエルの軍事行動が10日目に突入した。その間、死者の数は増え続けてきた。 報道によると、7月17日までにパレスチナ人220人以上が死亡し、少なくとも1600人が負傷したという*1。国連は、犠牲者の4分の1が子供で、4分の3以上が一般市民だと発表した。 ハマスのメンバーが所有する多くの建物を含め、560棟以上の家屋が破壊され、数千棟が被害を受けたとされる。一例を挙げると、ガザの警察署長の家が狙われ、家族17人が殺害された。ハマスの創始者の1人で、現在潜伏中のマフムード・ザッハール氏の自宅は瓦礫と化した。 ガザ地区全体で、水道・電気の供給は、最良の時でも途切れがちだったが、今や完全に途絶した。長さわずか41キロしかない海岸沿いの狭い飛び地に詰め込まれたガザ地区の住民180万人の基本食料と医薬品は、底を突きかけていた。少なくとも2万人のガザ住民が、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する学校に避難している。 イスラエルは、さらに爆撃を行うと警告し、10万人のガザ住民に、自宅を離れないとミサイルの直撃を受ける恐れがあると通告した。 イスラエル側が警戒するハマスの戦力 一方、ハマス側はイスラエル領内にロケット弾と迫撃砲を撃ち込み続けている。イスラエル側の発表では、ハマスおよびハマスと協力関係にある武装組織は、7月17日までに合わせて1200発以上を発射したが、これによるイスラエル側の死者はわずか1人だったという。 イスラエルは2012年11月にも今回と同様の8日間の激しい空爆でガザの動きを叩いたが、その時と比べて、イスラエル国民はハマスの武器に対する警戒を強めている。ハマスのロケット弾の大半は今でも手作りで、イスラエル側に人命に関わる損害を与えることは滅多にないとはいえ、高度な武器の備蓄は増えている。その一部は射程距離が160キロにも及ぶ。イランとシリア経由で密輸されたものだ。 イスラエルが「境界防衛作戦」と呼んでいる今回の軍事行動の開始時点で、ハマスなどの武装勢力は1万1000発余りのロケット弾とミサイルを所有していたと、イスラエルの情報機関は推定している。 *1=この記事が出た後も死者数が増え続け、ガザ当局によると、イスラエル軍の軍事作戦が始まった8日以降の死者は540人を超えた そのうち、約600発は75キロの射程距離を持ち、テルアビブに脅威を与えている。射程距離が100キロを超えるものも、恐らく100発ある。これにより、イスラエルの大都市すべてにハマスの手が届く。実際に、ハイファとエルサレムでは、この1週間、空襲警報が鳴り響いた。ハマスは現在、無人航空機も所有している。 双方は7月17日に5時間停戦することで合意したものの、イスラエル側からの激しい攻撃にもかかわらず、ハマスが近いうちに戦闘をやめようとする様子はまるで見られない。 前回7月14日にイスラエル政府がエジプトの仲介で停戦を申し出た時は、ガザ地区の地下壕や中東のあちこちのホテルに散らばっているハマスのリーダーたちは、提案を拒否した。イスラエルが6時間にわたり攻撃を控えた間も、ハマスは挑発するかのようにロケット弾を発射し続けた。 その後イスラエル空軍は、以前にも増して激しい攻撃を再開した。一部では、イスラエル側の軍事行動とハマス側への供給の枯渇により、ハマスは3週間ほどでロケット弾の備蓄を切らしてしまうだろうと言われている。 「ハマスが3少年を誘拐」とイスラエル首相、一夜で80人逮捕 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の次の一手は・・・〔AFPBB News〕 一方で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、国内の左右両派と海外の各国政府から相矛盾する助言を受けながら、次の一手をじっくり考えていた。 連立与党の一部、特に政党「イスラエル我が家」のアヴィグドール・リーベルマン氏など右派のタカ派からは、地上部隊を派兵して「仕事を終わらせろ」と強く要求されていた。 ネタニヤフ首相は7月15日、首相を敗北主義者と決めつけて批判していた好戦的なダニー・ダノン防衛副大臣を解任した。また同首相は、別の連立パートナーの党首であり、地上侵攻を強く支持しているナフタリ・ベネット経済大臣を、政策決定過程に参画させていない。 イスラエルは実はハマス殲滅を望んでいない? これまでのところ、ネタニヤフ首相は地上部隊の派兵を控えている。恐らくは、2006年のレバノン侵攻を思い出してのことだろう。 当時、イスラエル国民は、レバノンからイスラエルに向けられたロケットランチャーを破壊するための戦争を最初は熱心に支持しながら、まもなくイスラエル兵がレバノンで行き詰まり殺害され始めると、戦争反対へと態度を変えた。ハマスはイスラエルの侵攻に備えて、様々な罠を仕掛けているものと考えられている。 しかし、ネタニヤフ首相が本当にハマスの殲滅を望んでいるかどうかは、明らかではない。ハマスよりさらに過激で、アルカイダとのつながりが疑われる組織が、ガザ地区でハマスに取って代わる恐れがあるからだ。 ネタニヤフ首相が一部の右派の助言に従ってガザ地区を併合し、同地区の住民を再びイスラエルの直接統治下に置くと、イスラエルの従来の領土と占領下のパレスチナの領土を合わせた地域の人口バランスが変化し、全体としてユダヤ系住民に不利になってしまう。 ネタニヤフ首相に最も近い顧問の大半は恐らく、ガザ地区はこれまで通り孤立させて包囲し、弱体化したハマスに管理を任せておくのがいいと考えている。あるイスラエルのアナリストの言葉を借りると、「水面からかろうじて鼻を出させておく」のだ。 死者の数が増えるにつれ、イスラエルにハマスの要求の一部を飲むよう求める外国からの圧力が高まるはずだ。ニューヨークを拠点とする人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチはイスラエルに対して、人道回廊を開設して、医薬品と基本的物資を運び入れ、負傷者と病人を運び出すよう求めた。 期待できない西側の和平仲介 最近では、欧州各国の政府と欧州連合(EU)は、パレスチナへの影響力をほぼ失っている。ハマスとの接触を拒否するEUの方針のせいで、欧州が調停役を果たすのはほぼ不可能だ。 EUに加盟しておらず、過去にハマスと交渉したことのあるノルウェーとスイスが、再び尽力を申し出た。レジェップ・タイイップ・エルドアン首相率いるトルコ政府も手を差し伸べているが、ネタニヤフ首相はエルドアン首相の協力を拒んでいる。 ネタニヤフ首相の態度を軟化させられる可能性が最も高いのは、やはり米国だが、バラク・オバマ大統領の下で、その影響力は低下している。オバマ大統領も、議会から制約を受けているため直接ハマスと交渉できない。そこで、中東地域でハマスに対して最も友好的な国家であるカタールに、停戦受け入れ圧力をハマスにかけるよう求めた。 ガザ地区外でハマスに対して最も大きな影響力を持つ指導者、ハーリド・マシャアル氏は、カタールを拠点に活動している。しかし、カタール政府もハマスを説得して譲歩させることはできないようだ。 イスラエル側は、エジプトにハマスの対応を任せるのが賢明だろうと判断していた。エジプトのアブドル・ファタ・アル・シシ新大統領もハマスを激しく嫌悪していることを知っているからだ。エジプト政府を通じて提示された停戦条件は、事実上ハマスの降伏と言っていいものだった。 「それは罠だった」。今でもハマス側とつながりを持つ欧州のある外交官はこう言う。「ハマスは、シシ大統領がイスラエル以上にハマスの活動を抑え込みたがっていることを知っている」 エジプトの将軍たちは、昨年、シシ大統領の前任者ムハンマド・モルシ大統領を解任して以来、エジプトとガザ地区の間の国境の地下に作られ、生活必需品や武器をガザ地区に運び込むライフラインとして役立ってきたトンネルの大半を閉鎖した。シシ大統領は、ハマスが叩きのめされるのを期待しているようだ。 このままでは再興すべき経済が残らない事態に ガザ地区経済の立て直しに焦点を当てようとする提案もある。ガザ地区の住民の生活が豊かになって初めて、彼らはハマスの厳格な原理主義者や狂信者やロケットランチャーに背を向けるという考え方だ。境界防衛作戦が始まる前でも、電気は1日のうち半分以下しか通じていなかった。ガザ住民の半分は失業中か、賃金が未払いになっている。ガザ住民は1年半以内に飲料用の水道水を完全に失うだろうと言う者もいる。 しかし、現状では、ガザ地区の経済を再興するという提案は非現実的に思われる。もしロケット弾がイスラエルに降り注ぎ続け、爆弾がガザ地区に打撃を与え続けるならば、再興すべき経済などほとんど残らないかもしれない。 |