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【ドバイ=久門武史】イスラム過激派がイラク第2の都市モスルを制圧して10日で1カ月。政府側の抗戦で首都に迫る当初の勢いはそがれ、戦線は膠着気味だ。この間に過激派は「イスラム国」樹立を宣言し、支配地域を固めようとしている。中央政府が機能不全に陥る中で、北部のクルド自治政府は「独立」を目指して動き出した。周辺国は介入・自衛に動くものの思惑は交錯。危機打開の道筋は見えない。
「なんじらの国にはせ参じよ」。預言者の後継者カリフを自称するイスラム教スンニ派の「イスラム国」のバグダディ指導者は1日の音声声明で、世界のイスラム教徒に移住を呼び掛けた。医師や技術者といった職業を挙げ「義務」として国家建設に加わるよう要請。5日に公開された指導者本人とされる動画では「私が神に従う限り、私に従え」と忠誠を求めた。
「イスラム国」は既に支配地域の一部でイスラム法を厳格に適用する統治を始めたとされる。半面、ガソリンや電力の供給不足が起きないようにし民心の掌握に腐心している。
1万人程度と推計される戦闘員は、主に隣国シリアの内戦に加わるため周辺国などから流入。インターネット上の動画で戦闘員が話すアラビア語はモロッコ方言など様々で、欧州からも加わっているとされる。過激主義に共鳴する層や母国で困窮した若者を中心に「採用」しているようだ。
情報発信は巧みだ。動画投稿サイトやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を操り、理念を世界に拡散。戦闘員を募る道具にしている。同時に残虐な処刑の様子もインターネット上に公開し、住民に恐怖心を植え付けて服従を迫っている。
これまでの戦闘でモスルの中央銀行支店から4億ドル以上を強奪。支配下の油田から横流しする原油や密輸も資金源だ。湾岸産油国から慈善などの名目で集めた寄付も懐を潤しているとされる。こうした資金で武器を購入しているほか、敗走したイラク軍から米国製の車両や重火器などを奪い戦力を増している。
もっとも、カリフを頂点とする「イスラム国」の一方的な宣言を組織的に支持する動きは今のところ乏しい。スンニ派に影響力を持つカラダウィ師は、カリフの称号は「完全なイスラム国家によってのみ与えられる」と述べ、イスラム法に照らし無効との見解を示している。
国内の混乱を受け、クルド自治政府は「もはや我々の目標を隠しはしない」(バルザニ議長)と自立色を強め、独立の是非を問う住民投票を数カ月以内に実施する準備に入った。政府軍は首都北方で「イスラム国」と攻防を続けるが、掃討のメドは立たない。周辺国は独自に介入や自衛の動きを強めている。
東隣のイランは同じシーア派のマリキ政権支援のため革命防衛隊の精鋭を投入。ロシア製のスホイ25攻撃機をイラク軍に提供したとの分析もある。西隣のシリアはアサド政権が国境地帯の「イスラム国」拠点を空爆。南隣のサウジアラビアはイラク国境に3万人の部隊を展開したと伝えられ、ヨルダンも国境で厳戒態勢を敷く。
米国は軍事顧問団や武装無人機を送り、イラク軍への支援を始めた。ただ米軍が司令塔となった1991年の湾岸戦争と異なり、各国間で目に見える連携はない。それぞれの思惑で「イスラム国」を抑え込もうとし、互いの出方に神経をとがらせているのが実態だ。イランはイラクのシーア派勢力への影響力を強め、シリアのアサド政権は自らの延命を狙う。スンニ派のサウジはこれらを強く警戒している。
「イスラム国」の支配地域をイラク軍単独で奪還できるかについては「おそらく彼らだけではできない」(デンプシー米統合参謀本部議長)との見方が強い。だがオバマ米政権は米軍の直接介入になお慎重だ。行き詰まりを突破する決定力を欠いたまま、イラクはシーア派、スンニ派、クルド人の3勢力の支配地域に分裂するとの懸念が強まっている。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0802X_Z00C14A7FF1000/
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