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2014年06月27日
(バクダッド)−写真と衛星画像の分析結果から、イラクとシリアのイスラム国(ISIS)は2014年6月11日にティクリートを制圧した後、市内で大量処刑を行ったことが強く示唆されると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。
分析結果によれば、ISISは6月11日から14日にかけて、少なくとも2つの場所で160〜190人を処刑している。犠牲者の数ははるかに多い可能性が高い。しかし遺体の場所を特定し、現地に行くことが難しいため、本格的な調査は不可能だと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。
6月12日、ISISはティクリートで1,700人の「イラク軍のシーア派兵士」を処刑したと主張していた。ISISはその2日後、処刑されたと見られる男性たちの写真をウェブサイトに掲載した。6月22日にイラク人権相は、ISISがティクリートでイラク空軍の新兵175人を処刑したと発表した。
「ティクリートの写真と衛星画像は、凄惨な戦争犯罪が行われたことを強く示唆する。さらに調査が必要だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの緊急対応部門ディレクター、ピーター・ブッカーは述べた。「ISISはティクリートで最低でも160人を処刑したと見られる。」
6月12日にISISは、現在は閉鎖したTwitterのアカウントでイラク兵1,700人を処刑したと初めて発表した。同じ日にISISは、捕虜となった平服の男性数百人の動画を投稿した。近くのイラク軍基地で投降した人びとだと、ISISは説明した。6月14日、ISISは約60枚の写真を投稿。覆面姿のISIS兵が平服の捕虜をトラックに載せるところや、後ろ手に縛られた捕虜に対し、浅い堀にうつぶせになれと命じている写真があった。また覆面兵士が捕虜に銃を向け、発砲している写真もあった。
ISISの写真に写っている地上物や陸標などを比較することで、ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれらの堀のうち2つが同じ場所にあることを確認した。これらの写真を、2013年の衛星画像、また以前に撮影された一般に入手できるティクリート市内の写真と比較することで、ヒューマン・ライツ・ウォッチはティクリートの「水の宮殿」(チグリス川のほとりにあるサダム・フセイン時代の宮殿)から約100メートル北の野原がその場所であることを突き止めた。3つめの堀の場所はまだ特定できていない。
ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、6月16日朝に撮影された衛星画像も分析した。この画像からは、2つの堀に遺体があるとの証拠は明らかにならなかったが、ISISの写真にある2つの浅い堀と一致する場所に、最近車両が動き、地面に手を加えた形跡があることが強く示唆されている。現地を訪れなくては、遺体がここに埋葬されているのか、別の場所に移されたのかを判断することはできない。
6月22日、イラクのムハンマド・シャーウ・アッ=スーダーニー人権相は記者会見で、殺害された175人の空軍新兵の遺体の一部がチグリス川に投げ込まれ、その他の遺体は集団墓地に埋葬されたと述べた。人権省報道官は6月23日、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対してこの発言の事実を確認している。
イラクの治安対策担当者は、処刑された新兵11人もの遺体が殺害現場の下流で発見されたと述べた。
ISISが公開した処刑の写真からは、この場所で少なくとも3つの集団が銃殺されていることがわかる。写真には、1つめの堀にうつぶせになっている男性たちと、その上にうつぶせになっている男性たちが写っている。第3の集団は、2つめの堀にうつぶせになっていることが確認できる。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは入手した写真で確認できる遺体の数を計算し、ISISは1つめの堀で90〜110人を、2つめの堀で35〜40人を殺害したと推計した。
写真に写っている影から大まかに見積もると、1つめの堀でこれら2集団が処刑されたのは、午後1時30分から2時30分のあいだだと思われる。2つめの堀で処刑が行われたのは、午後2時30分から3時30分のあいだだろう。
ISISの写真には、さらに30〜40人程度の捕虜の一団が写っている。最初の写真で男性たちは、処刑現場と水の宮殿を結ぶ幹線道路を移動する2台のトラックのうち1台に乗っており、その後の写真ではそのトラックの横にいる。これらの写真は、おそらく同じ日の午後4時から5時のあいだに撮影されたものだ。
ISISが公開した写真のうち1枚からは、ISISが2つめの場所で同時刻に捕虜を殺していることが示唆される。しかしヒューマン・ライツ・ウォッチは殺害場所を特定できていない。この写真には、大きな堀で捕虜35〜40人が、少なくとも8人のISIS兵士に射殺されるところが写っている。影の長さと角度によれば、撮影時刻は午前11時から午後1時のあいだだろう。この現場にいる銃を持ったISIS兵の1人は、水の宮殿近くにある殺害現場(2つの堀のあるところ)の写真にも写っている。
これらの写真と衛星画像からは、ISISが捕虜をこの2つの殺害現場にトラックで移送したことが強く示唆される。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、何枚もの写真に同じISIS兵と捕虜が写っていることを確認した。たとえばトラックに乗っている捕虜が、水の宮殿近くの処刑現場付近で同じトラックから降ろされているところが写っている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この殺害事件後にティクリートから逃れたという男性から話を聞いた。この男性は、ハイ・アル・カーディシーヤ地区にある自宅屋上から、この日の午後遅くにISISが到着した直後、ISIS兵が捕虜数百人を複数台のトラックに乗せて連れ去ったところを目撃したと話す。
「この目で見ました。午後遅くのことでした。長い一列ができていました。10人ほどの兵士が一列に並ばされた男たちに銃を突きつけて、軍用トラックに乗せていたのです。覆面をしている兵士も、していない兵士もいました。[捕らえられた]男性たちの手は縛られていませんでした。服装は平服です。」
この男性は、捕虜になった人びとがどこに連れ去られたのかはわからず、それが何日だったのかも正確には思い出せないと言う。その後にティクリートの住民から、遺体がチグリス川に浮かんでいるのを見たという話を聞かされたと、この男性は述べている。
武力紛争下では、戦闘行為に現に参加していない者(武器を置いた戦闘員や拘束中の戦闘員を含む)の殺害は、戦争犯罪である。殺人は、組織された集団が計画的な方針に基づき組織的あるいは広範に実施した場合、人道に対する罪に該当する場合がある。戦争犯罪と人道に対する罪はともに国際犯罪であり、その実行者または実行を命じた者だけでなく、それを補佐した者、またその犯罪行為を知る立場にありながらも制止しなかった指揮官にも刑事責任が問われる。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、イラクとシリアの他の地域でもISISによる重大な犯罪行為があることを確認している。民間人居住区での自動車爆弾や自爆攻撃、即決処刑、身柄拘束時の拷問、女性差別、宗教的建造物の破壊などだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチが収集した証拠は、これらの行為の一部が人道に対する罪に該当する可能性を強く示唆している。
http://www.hrw.org/ja/news/2014/06/27/isis
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