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スンニ派の武装勢力と戦うため、イラク軍に加わったシーア派の義勇兵。イラクの宗教対立で中東情勢が激変している=26日(ロイター)
【地球を斬る】米国がイラクで武力行使に踏み切る可能性は?
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140630/amr14063009350002-n1.htm
2014.6.30 09:35 産経新聞
今月下旬、中東某国から親しくしている知人が数人、来日した。その中には、中東情勢、サイバーインテリジェンス、武器取引の専門家がいたので、踏み込んだ意見交換をすることができた。いずれの専門家も「中東情勢が大きく変化している」という認識を共有していた。専門家たちから聞いた話のうち興味深い部分を記しておく。
<イラクで攻勢を強めている「イラクとシリアのイスラーム国」(ISIS)については、スンニ派住民の心をつかんでいる。もっともイラクのマリキ首相は、最初からスンニ派住民を同胞とみなしていない。それだから、スンニ派地域がISISの支配下に置かれても、そのまま放置することになる。マリキ首相は、自らの出身母体であるシーア派(十二イマーム派)住民の擁護と首都バグダッドの防衛だけを考えている。このような「選択と集中」が功を奏して、マリキ政権はバグダッドを防衛することができる。ISISがバグダッドを占領し、イラクに新政権を樹立する可能性はない>
<米国のオバマ政権が、武力によってISISを排除する可能性はない。もっとも、国家でないISISを外交圧力によって封じ込めることもできない。そこから出てくるのが、イランを活用することだ。イランにとって、ISISがイラクとシリアの一部地域に拠点国家を建設することは現実的な脅威である。なぜなら、ISISは、十二イマーム派を敵視し、力によって除去することを考えているからだ。従って、イランは、自国の脅威を除去するために、イスラーム革命防衛隊の特殊部隊をひそかにイラクに派遣し、現地の十二イマーム派系武装集団を支援し、ISISを壊滅させようとしている。
オバマ政権は、事実上、イランとの提携に傾いている。このことが中東全域の地政学的状況を根本的に変化させることになる。米国・イスラエル対イランの対立という基本構造を前提にこれまで中東では外交ゲームが進められてきた。ここで、米国とイランが接近しても、イランはイスラエルに対する敵視政策を変更するわけではない。イスラエルと米国の同盟関係に変化が生じてくる>
<ISISは、きわめて合理的に行動する。米国とイランが事実上の提携を始めれば、ISISは自分たちが殲(せん)滅(めつ)される可能性が高まったと考え、イラク以外の国家で策動を強める。現在、中東でもっとも「弱い環」となっているのがヨルダンだ。ヨルダン国王アブドラ2世の暗殺をISISやそれに連なる勢力は考えている。アブドラ2世が排除されるような事態が生じれば、ヨルダンは大混乱に陥る。そうなるとISISだけでなく、さまざまなイスラーム原理主義過激派が、ヨルダン国内に拠点を作ることになる。
このシナリオをイスラエルは最も恐れているので、今後、アブドラ2世の政権を維持することを最優先課題とするであろう>
ここで紹介した中東某国の専門家たちの見解を筆者は基本的に支持する。ただし、この専門家たちは、米国がイラクに軍事介入する可能性はないと考えているが、筆者はその可能性が排除されないとみている。
仮にISISがイラクの油田地帯を実効支配下に置くことができれば、石油の密売で潤沢な資金を得ることができる。このような状況を避けるために、米軍がイラク領内を空爆することは十分にあり得る。さらに米国とイランの提携が実現しない場合には、米国は国連の集団安全保障の枠組み、あるいは国連を迂(う)回(かい)し同盟関係にある諸国と多国籍軍を編成して、イラクで地上戦を展開することになるかもしれない。
安倍政権は、憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使容認に踏み込もうとしている。そうなると自衛隊がイラクに派遣させる可能性が出てくる。この点についてもきちんとしたシミュレーションをすべきだ。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優)
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