03. 2014年6月23日 13:23:26
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可能性があったとしても、大分先の話http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40977 JBpress>日本再生>安全保障 [安全保障] 乗り心地は快適、 しかし未来は暗い米国の潜水艦 太平洋の「海中」が中国のものになる日 2014年06月23日(Mon) 福田 潤一 米国の最新鋭攻撃原潜ヴァージニア級の4番艦、「ノースカロライナ(SSN-777)」を見学する機会に恵まれた。 米海軍横須賀基地で見学した「ノースカロライナ」 今回、米海軍横須賀基地は「ノースカロライナ」の寄港に当たって国内の有識者やメディアに内部を公開した。これは4月のオバマ大統領のアジア歴訪以後もなおもくすぶる米国のアジア太平洋リバランス政策への取り組み不足の懸念に対して、米国の誇る最新鋭の兵器を公開することで、日本の有識者やメディア関係者に安心感を与えることを意図したものと思われる。
「ノースカロライナ」(水中排水量7800トン)は弾道ミサイル原潜(SSBN)や巡航ミサイル原潜(SSGN)などとは区別される攻撃原潜(SSN)である。そこで、今回はこの「ノースカロライナ」訪問を題材に、米国の潜水艦戦力を取り巻く現状と課題について考えてみたい。 日本の潜水艦よりも巨大で快適 「ノースカロライナ」に搭乗して直ぐ気づくことは、その船体の大きさである。かつて訪問したことのある日本の通常動力型潜水艦(SS)、「おやしお」(水中排水量4000トン)と比べると約2倍の大きさがある。その大きさゆえのゆとりは、上部ハッチから中に入ると直ちに明らかになった。 内部の撮影が認められていないので写真を示すことができないが、「おやしお」に比べれば「ノースカロライナ」は通路が広く、天井も高く、移動に難がないとの印象を抱く。食堂などは見たところ「おやしお」の数倍以上の広さがあり、また個室も「おやしお」では艦長室のみであったのが、「ノースカロライナ」ではそれぞれのセクションのチーフ専用の個室があるなど、明らかにゆとりを感じる仕様である。 ただし、これはもちろん「潜水艦としては」という話である。実際には米国人の体格を考えれば、やはり相当に難があることは否定できない。搭乗人数で言えば「おやしお」が約70人であるのと比べて、「ノースカロライナ」は約130人であり、ほぼ体積に比例している。事実、「ノースカロライナ」も「おやしお」と同じく、3人で2つの寝台を共有するシステムを採用しているとのことだった。 ノースカロライナの搭乗タラップ 指令室は、マストに取り付けられたカメラの映像を指令室内のモニターに映し出す非貫通式の潜望鏡システムのために、ずいぶんスッキリとして合理的な印象を受けた。全ての作業はタッチパネルもしくはジョイスティックによって行われるようで、潜望鏡カメラの操作に加えて潜水艦自体の操縦もジョイスティックで行う仕様であった。3次元操作という点では、潜水艦の操作は船というよりもむしろ航空機に近いものがあるようだ。
「ノースカロライナ」の兵装は魚雷室から発射する24発のMk48/ADCAP魚雷またはハープーン対艦ミサイルと12基の垂直発射管(VLS)から発射する同数の戦術トマホーク巡航ミサイルである。その他、魚雷発射管から運用する機雷を搭載することもできる。魚雷室内にはクルーの寝台としてのスペースもあるため、寝台を撤去すればさらに多くの兵装が搭載可能と思われる。魚雷発射管が4門しかないのは少なく感じるが、個々の兵装が強力なのであまり不便を感じないのかもしれない。 ところで、「おやしお」を訪ねた時に、日本の潜水艦隊の担当者が一番悩んでいると述べたのは人的確保の問題であった。閉鎖空間での潜水艦の勤務は厳しいため、日本では高給なのになり手が少ないという。2010年の防衛大綱で日本は潜水艦を16隻から22隻に拡充すると決めたが、フネは揃ってもヒト(熟練者)が揃わないと戦力としては活用できない。そこで、担当者は人員のリクルートに最も頭を悩ましているという。 そのため、米海軍でも似たような問題があるのか、「ノースカロライナ」の幹部に質問してみた。ところが返事は意外にも「米海軍ではその種の問題はない」というものであった。人的なリクルートは問題なく行われており、人気はそこそこあるというのである。この日米の違いがどこから生じるのか、大変興味深い。 米国の潜水艦戦力の現状 米海軍の潜水艦には戦略弾道ミサイル原潜(SSBN)、戦略巡航ミサイル原潜(SSGN)、攻撃原潜(SSN)の3種類があり、現在それぞれ14隻、4隻、54隻が存在している(IISS, “Military Balance 2014”より)。SSBNとSSGNは同じオハイオ級であるが、SSNにはロサンゼルス級、シーウルフ級、ヴァージニア級の3種類があり、それぞれ41隻、3隻、10隻の構成となっている。 1976年から就役したロサンゼルス級はソ連に対して海中における圧倒的優位を誇り、レーガン軍拡も相まって最終的に62隻も建造された。トム・クランシーの有名な小説、『レッド・オクトーバーを追え』で活躍する「ダラス」もこのロサンゼルス級の一隻である。 しかし冷戦末期になるとさらなる能力が求められ、建造されたのがシーウルフ級であった。ところがこのシーウルフ級は性能重視のあまり極端に高価となってしまい、冷戦の終結もあって結局わずか3隻の建造で終わってしまった。 そこで来たるべきロサンゼルス級の退役に備えて新たに建造されたのが、シーウルフ級のダウングレード廉価版ともいえるヴァージニア級である。ヴァージニア級は冷戦後の緊張緩和を理由に、性能を制約することで費用を抑え、取得可能性を高めた潜水艦と言えるが、それでも世界で最も静粛かつ強力な潜水艦の1つであることは間違いない。 ヴァージニア級は2004年から就役が始まり、2014年4月時点では10隻が就役している(5月以降にさらにもう1隻が就役し、全11隻となった)。今後、さらに20隻ほどが建造・就役する見込みであり、全体では30隻程度となる予定だ。 米国の攻撃原潜が減少するという重大な問題 ヴァージニア級SSNには、米国が他国に対して海中優勢(underwater supremacy)を確保する上で決定的な役割を果たすことが期待されている。それは同時に、米国のアジア太平洋リバランス政策を軍事面で支える要(かなめ)の戦力の1つであるとも指摘できる。 ところが、ここに指摘すべき重大な課題が存在する。あまり知られていないが、今後の米海軍においては攻撃原潜の数は次第に減少していくのである。米国は将来、現在よりも少ない攻撃原潜で海を支配しなければならない運命に直面している。 現在の米海軍は50隻以上の攻撃原潜を持つ。しかしロサンゼルス級が次々と退役していく中、後継艦(ヴァージニア級)は1対1の割合では就役しない。現在の米国の財政にはそんな余裕がないからだ。ロサンゼルス級の調達数に比べてヴァージニア級の調達数は半分程度にしか過ぎず、さらなる後継艦の計画がない限り、攻撃原潜の数は縮小を運命づけられている。 具体的には、米海軍が公表する今後30年間の建艦計画(Naval Shipbuilding Plan from FY 2015 to FY2044)によると、2028会計年度には攻撃原潜の数が現在の54隻から41隻まで減ることが示されている。しかも、この計画は、あくまで国防予算の強制削減(sequestration)の継続を想定しない「楽観的な」ものである。すなわち、仮に強制削減が継続すれば、攻撃原潜の数はさらに減少しかねない。 (出典:Ronald O’Rourke, “Navy Force Structure and Shipbuilding Plans: Background and Issues for Congress,” CRS report, June 4, 2014, p.7の表より筆者作成) 拡大画像表示 つまり、米海軍の攻撃原潜の数は、中国との対決が最も心配される2025〜30年の時期において、現状よりもかなり縮小するのである。これは重大な問題である。つまりはその分、中国の戦力投射にとって有利な状況が生まれるからだ。
現状で中国は65隻ほどの攻撃型潜水艦を保有するが、2020年代後半には中国は100隻以上まで増隻するだろう。この結果、米国は、中国の海洋進出を十分に食い止めることが難しくなる可能性があるのである。 確かに、ヴァージニア級の性能向上に伴う前方展開期間の延長という要素はあるし、なにより対潜水艦戦(ASW)において致命的な弱点を抱える中国が米国の潜水艦を容易に撃沈できるはずはない、という意見もある。米国潜水艦は、数はともかく質の面では中国よりも圧倒的な優位を保ち続けるだろう。 しかし、広大な海洋において、数は容易に質に転じる。少ない数の潜水艦で全ての中国潜水艦の外洋進出を食い止めることは困難と考えられ、そのうち1隻でも米空母への攻撃を許せば米国の優位はたちまち失われ得るのである。 我々、日本としてはこの米国攻撃原潜の数の減少という問題にもっとセンシティブであるべきだろう。日米の海中における優位は現状では鮮明であるが、これが何もしなくても持続的であると考えてはならない。中国潜水艦の探知と撃破のために対潜哨戒機を増やし、潜水艦の増隻を図り、さらには無人潜水体(UUV)を従来なかった形で活用するなど、劣勢を打開するための 革新的取組に今から着手しておくべきだろう。 |