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スウェーデン・リンシェーピング(Linkoeping)にあるサーブ(Saab)のグリペン(Gripen)戦闘機製造工場で製造されるグリペン戦闘機(2014年5月5日撮影)。(c)AFP/JONATHAN NACKSTRAND
【5月26日 AFP】紛争調停や寛大な対外援助で世界的に評価されるスウェーデンは、一方で世界の主要な武器輸出国であり、人権侵害で非難されている複数の国家を顧客にしている。
スウェーデンは国民1人当たりの武器輸出量でイスラエルとロシアに次ぐ世界第3位で、好景気の軍需産業は、その取引相手の一部国家をめぐり、国民に倫理的な懸念をもたらした。
スウェーデンの軍需産業の中心部に位置する格納庫では、サーブ(Saab)の技術者が次世代のグリペン(Gripen)戦闘機の組み立てラインを建造中だ。最新鋭の戦闘システムとより広くなった兵器格納ベイを備えた新型グリペン戦闘機は、少なくとも60機の製造がスウェーデン空軍向けに決まっている。
サーブ担当者によれば、「グリペンE」戦闘機はロシアの最高性能の戦闘機に対抗しうる機体として、独自のネットワークシステムを搭載し、航空機間で通信して索敵、電波妨害、攻撃を分担する能力を備えている。
サーブやBAEシステムズ(BAE Systems)、ボフォース(Bofors)など、スウェーデンに拠点を置く軍需企業は2000年代に大成功を収めた。13年だけでも、武器や軍需品を55か国に販売し18億ドル(約1800億円)を売り上げている。
だが、冷戦終結とともに西側諸国からの需要が減少したことを受け、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、パキスタンなど人権侵害で非難されている国家への武器売却が増えていると批判する声がある。
■「独裁者に武器売却」
「人権を侵害している人物や独裁者たちに彼らの権力維持を助ける物資を渡すことについては、スウェーデン人は自分たちのことをとても倫理的で抑制的だと考えている。だが現実は、それが行われているのだ」と、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)の武器専門家、シーモン・ウェゼマン(Siemon Wezeman)氏は語る。
「過去10年ほどは、彼ら(スウェーデン人)はこのことについて以前よりはばからないようになった。なぜならばそれら(独裁者ら)が彼らの市場だからだ」
「昔は、彼ら(スウェーデン人)は人権上の懸念からサウジアラビアと取引をすることがなかった──サウジアラビアはありとあらゆる警鐘を鳴らすような場所だからね──だがそれも変わった。彼ら(スウェーデン人)はあそこ(サウジアラビア)にEriye(レーダー追跡システム)や対戦車ミサイルを売り、他の兵器も販売した」
秘密の取引もある。2012年にスウェーデンの公共ラジオが暴露した内容によると、スウェーデンの国防研究機関が秘密裏にサウジアラビアへミサイル工場に関する技術支援を行っていた。この暴露は当時の国防相の辞任をもたらし、武器売却についての新たな倫理規定に向けた調査を開始させた。
最も物議を醸した取引の1つは、米軍など世界各国の軍隊で使用されているサーブ製のカールグスタフ・ロケットランチャーが、本来であればスウェーデンが取引を行わない相手であるミャンマーの軍事政権やソマリアのイスラム過激派組織アルシャバーブ(Al Shebab)の手に渡った可能性が報告されたという出来事だった。
平和活動家のマーティン・スメジェバック(Martin Smedjeback)氏は、スウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)との連携を強化する中、同国が大規模な軍需産業を作った理由──自立と独立──が、同国の中立政策とともに、すでになくなっていると指摘し、「そこで政治家たちは雇用と技術開発の話題を取り上げる」と語った。
■雇用と経済
スウェーデンが戦闘機や軍需品を国外から低価格で効率的に調達することは可能であるものの、商業的利益がそれを妨害していると、複数の国防専門家は指摘している。
「スウェーデン政府は諸外国政府と同様に先進的な国防産業の技術が他の領域に拡散浸透することを知っている」と、スウェーデン国立防衛大学(National Defence College)軍事研究所のグンナー・フルト(Gunnar Hult)副所長は語る。
また「それに雇用問題がかなり大きい。人々はサウジアラビアでわれわれがしていることよりも、地元の雇用の方を大切にする」と同副所長は付け加えた。
スウェーデンの国防産業では約3万人が雇用されている。そのうちの多くの労働者は、軍需工場が最大の民間雇用先である町に暮らしている。
フルト氏は、スウェーデン政府の外交政策が武器輸出による商業的利益と絡み合うようになったと指摘し、一例として2011年にNATOがリビアに設定した飛行禁止区域の実施にスウェーデンが参加したことを挙げた。
「わが国のリビア作戦参加はグリペンにとってかなりの利益になった。これはどの政治家も決して認めないことだが、真実だ。人々は軍事作戦に参加しているものとして見る。これはビジネスにとって良いことだ」
中道右派の連立与党に所属するアラン・ウィドマン(Allan Widman)氏は「スウェーデンの政治家の間では、国防技術と国防産業がスウェーデン経済の最も肝要な部分であるという認識がある」と語る。
だが国防専門家や平和活動家の多くがこの認識を否定し、兵器産業がスウェーデンの輸出のわずか1%にすぎないと指摘する。政府が支援する理由は、むしろ国の誇りの問題だという──特にサーブの戦闘機の販売については。
「サーブはスウェーデンの最も重要な企業の1つと認識されている」とSIPRIのウェゼマン氏は述べ、「プライドとナショナリズムの強い感情──これ(サーブ製品)は良質なスウェーデン製品だという──があり、彼らはサーブに誇りを持っており、このことが大きな影響を及ぼしている」と語った。(c)AFP/Tom SULLIVAN
http://www.afpbb.com/articles/-/3015652?pid=0
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