02. 2014年5月26日 10:02:23
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さらにアジアも暑くなりそうだなhttp://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40783 JBpress>海外>Financial Times [Financial Times] ナショナリストたちの危険な駆け引き アジア地域の4大大国、錯綜する指導者たちの思惑 2014年05月26日(Mon) Financial Times (2014年5月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) インドで新たな首相が誕生する。これにより、アジアの4大大国すべてが今、好戦的なナショナリストに率いられることになる。戦後秩序の多国間主義の前提が、大国間競争への回帰に取って代わられようとしている。ナショナリズムが勢力を増しており、台頭する東方ほどそれが顕著なところはない。 一見したところ、インドの総選挙でのナレンドラ・モディ氏の勝利は、地政学とはほとんど関連がないように見えた。モディ氏は、インド国民会議派の無能力と汚職にうんざりした国に向かって訴えかけた。同氏の公約は、経済成長の加速と生活水準の向上だった。 だが、モディ氏の野望は、国内を超えたところにまで及んでいる。インドは国際舞台で中国に対抗できる国になるべきだ、というのだ。 モディ氏のヒンドゥー民族主義は、地域のムードに合致している。中国の習近平国家主席は、中華帝国の過去の栄華を取り戻したいと思っている。ケ小平の慎重さは、中国の力に対するしかるべき敬意を求める姿勢に取って代わられている。 日本では、安倍晋三首相の経済プログラムは、中国に立ち向かうために日本の力を再構築するという決意に突き動かされている。アジアで4番目の国家主義の騎手、ウラジーミル・プーチン氏は、ウクライナへの軍事介入によって協調的な国際秩序を軽視するロシアの姿勢を示した。 安倍氏の日本とモディ氏のインドは「中国封じ込め」で手を組む? 安倍氏は、モディ氏が外遊する際に東京が最初の訪問先になることを期待している。当局者らによると、インドの次期首相は安倍氏の気質や目的を共有しているという。話題になっているのは、大規模な戦略的取引だ。 日本は、インドの経済発展を早める技術と投資を持っている。インドは、中国を封じ込めるうえで強力な味方になる。日本は東シナ海で、そしてインドは北部の国境地帯でそれぞれ中国と領有権問題を抱えており、両国ともインド洋での中国の海軍力を懸念している。 日中関係は、相変わらず悪い。中国は、問題になっている東シナ海の尖閣諸島(中国名・釣魚島)に対する領有権を強く主張している。安倍氏は、戦没者とともにA級戦犯が合祀されている東京の靖国神社を参拝することで修正主義者のポーズを取った。 バラク・オバマ大統領率いる米国政権は地域の軸となる安全保障同盟で日本に縛られ、中国政府を思いとどまらせようとしながら、日本政府を抑えようとする状況に陥っている。 対等ではない中ロのパートナーシップ プーチン氏は、西側と対決した後、東方を向いている。プーチン氏は先日、大型のガス供給契約をまとめるために北京にいた。この契約の狙いは、クレムリンが西側の批判者たちに対し、自分たちは新興国世界にガスの代替市場と強力な友人を持っていることを示すことだった。 差し当たり、習氏はこの取り決めに満足している。中国はガスを必要としており、ロシアは国連で都合のいい味方になり得る。ロシア政府と同様、中国政府も、現在の国際体制は西側に有利なように歪められていると考えているからだ。 だが、このパートナーシップは対等ではない。中国は、ロシアの右肩下がりの経済や、この国を衰退へと引きずり込んでいる社会的、人口動態的な傾向を軽蔑している。というわけで、プーチン氏の役割は、役に立つ愚か者の役割だ。 安倍氏は、クレムリンが賭けを分散させる気になることもあり得ると思っている。ロシアは、人口が急減するシベリアで中国の存在感が高まっていることに神経質をとがらせている。 やがては中国系市民がロシア極東で支配的な民族になる可能性もある。プーチン氏がウクライナで展開した治外法権の教義を、中国政府がロシア領土に住む中国系市民に適用するまであとどれくらいかかるだろうか? ロシアによるクリミア併合を小声で批判してきた安倍氏は、日露関係を「正常化」すべき時だと判断している。 ベトナム、フィリピンなども巻き込んで複雑化 ライバル関係と再編がくるくる入れ替わるこの万華鏡は、比較的小さな参加者を巻き込む衝突の渦によってさらに複雑になっている。 中国は、双方が領有権を主張する南シナ海海域を巡ってベトナム、フィリピンと激しい論争を繰り広げている。韓国は日本の自然な同盟国であるはずだが、日本の帝国主義の過去の罪を認めたがらない安倍氏の姿勢が韓国政府を中国に接近させている。 中国は、隣国が中国に反感を抱くように仕向けていると米国政府を非難している。だがむしろ、隣国を米国の腕の中へと追いやっている中国の高圧的姿勢だ。 こうした状況がもたらす1つの結果は、地域全体での急激な軍事力の増強だ。中国とロシアは防衛予算を2ケタ増額する。インド軍も同様の増額を確保しており、モディ氏が公約した経済再生の果実に対する最初の権利を主張するつもりだ。 安倍氏としては、部隊を配備する自国の能力に対する制約を減らすため、日本の戦後憲法の解釈を見直したいと思っている。安倍氏が提案する変更は一見すると十分穏当なように見えるが、時代の文脈の中で見れば、中国に対抗する安全保障同盟のネットワークを築く戦略が浮き彫りになる。 地域の安全保障を担ってきた米国の力 ここへ、食い違う歴史認識という有毒な遺産と国境紛争を解決する国際的な仕組みがないことを加えると、アジア地域はこれまで以上に燃えやすいように見える。今のところは、米国が事態を掌握している。米国の力は衰えているかもしれないが、まだ誰よりも多くの武器を持っている。すべてのアジアの指導者たちの心にある最大の疑問は、それがどれくらい続くか、だ。 米国が中東から撤退したのを見て、同盟国の多くは米国による安全保障がどれほど長続きするか疑問視している。日本と韓国の当局者たちは、短中期的には米国が必要だが、長期的には独自の計画を立てなければならないと言う。 中国の戦略は極めて明確なように見える――米国を西太平洋から追い出し、隣国からの賛辞や貢物を求めることだ。中国は米国政府の決意を試すために、圧力をかけたり刺激したりするだろう。 筆者は先日、東京の友人から「ナショナリズムのどこが悪いのか」と聞かれた。そう、愛国主義には良いところがたくさんがある。ナショナリズムに関しては、その答えは、欧州の歴史の血まみれのページの中に見つかる。だが筆者には、アジアの4人の騎士が時間を割いてそうした歴史を読んだとは思えない。 By Philip Stephens http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40776 JBpress>海外>中国 [中国] オバマの対中宥和策を拒絶する中国 アジアと西太平洋の支配に意欲 2014年05月26日(Mon) 阿部 純一 4月下旬のオバマ大統領によるアジア歴訪の狙いは何だったのだろうか。 わが国にとって見れば日米同盟の強化であり、その後の韓国、マレーシア、フィリピン訪問も、基本的には米国とこれらの国の関係強化を図ったものと言える。とりわけ、中国と緊張関係にあるフィリピンにとって、この機会に米比間に新たな防衛協定を締結し、1992年に米軍が撤退して以来、ローテーション配備ではあるが米軍がほぼ「常駐」する態勢ができ、安全保障上の「後ろ盾」として米軍の関与が期待できる状況となった。 その意味で言えば、オバマのアジア歴訪の目的は、中国の軍事的台頭をにらんで同盟国・友好国との関係強化を図ることで米国のコミットメントを「再保証(reassurance)」することであったと言える。 2013年秋のAPEC首脳会議を国内政治(予算案)問題でキャンセルしたこともあって、2011年秋に打ち出した米国の「アジア回帰」(当初は“Pivot”のちに“Rebalance”)政策の実現可能性に疑念を持たれていたことを覆す意図があった。 外交常識を外れた行動でますます孤立 しかしながら、オバマのアジア歴訪が持つ外交・安全保障上の意味合いが、中国にストレートに伝わることはなかった。これは明らかにオバマ外交の失策である。 なぜそうなったかと言えば、オバマ大統領自身が各国での発言において、米中関係の重要性を強調し、米国の政策が中国包囲網を構築するものではないことを必要以上に発信したからだ。 結局、オバマ訪日が日本の対中抑止力強化に有効であったとは言えない状況が生じている。オバマ訪日直後に、尖閣諸島海域で中国の公船「海警」が繰り返し領海侵犯したのがその証左だ。また5月7日には南シナ海の西沙諸島近海に深海探査掘削リグを設置したことで、ベトナムと中国の公船が海上で激しい衝突を繰り返した。中国の「力ずく」の行動は、オバマのアジア歴訪で抑制されるどころか、むしろ活発化している。 ただし、西沙諸島海域への中国の掘削リグの展開については、その経緯をさらに詳しく精査する必要があるだろう。オバマのアジア歴訪直後であり、ミャンマーでのASEAN外相会議、首脳会議の直前であって、行動するタイミングが悪すぎたからである。ASEAN外相会議、首脳会議は、中国を名指しで非難することは避けたものの、この地域での緊張の高まりに深刻な懸念を示すこととなった。なぜこの時期を選んで中国が強硬な行動を取ったのか、理解に苦しむ。 結果として、このような外交常識を外れた行動によって、ますます中国は近隣外交において孤立することになった。 もちろん、中国にとってベトナムがかくも強く反発するとは考えていなかった可能性はある。ベトナム経済は中国に輸入の28%を依存しており、また中国に対抗し得る海軍力もないからである。しかし、ベトナムにとって今年が1974年に西沙諸島を中国に強奪されて40年の節目の年でもあり、その積年の恨みを中国は甘く見たのかもしれない。 中国がベトナムと抗争していた同時期、フィリピン海上警察が中国漁船を拿捕する事件も起きた。絶滅危惧種であるウミガメを捕獲していたことによる。フィリピンが米国との新たな軍事協力協定を結んだことを背景に、中国のフィリピン海域への進出の圧力にさらされてきたことへの意趣返しの意図も窺える。 結果的に、中国は東シナ海における日本、南シナ海におけるベトナムとフィリピンとの緊張を同時に抱えることとなった。オバマのアジア歴訪が中国の行動を抑制することにならなかった結果がこれであるとすれば、逆に緊張を高めてしまった中国の「自滅的失敗」と言えるかもしれない。 しかも、中国にとって都合の悪いことに、中国が手を引かないかぎりこの緊張は短期間で終息するような性格ではなく、長期に渡ることになる。特に西沙諸島の掘削リグは、本来ならば探査から採掘まで長期を要するが、今回は試掘であり中国側は今年8月15日までと期限を切っている。とはいうものの、その間は常時中国公船を配置し警戒し続けなくてはならない。 「アジアの安全はアジアの人々が守る」 前触れが長くなってしまったが、本題に入りたい。 すでに述べたように、オバマのアジア歴訪がこの地域の同盟国・友好国に米国の安全保障コミットメントを再確認するものであった。しかし、これまで見てきたようにオバマ外交の意図は成果を生んでおらず、むしろ緊張は高まっている。 そのような状況のもとで「アジア相互協力信頼醸成会議」(CICA)の首脳会議が5月20〜21日、上海で開催された。この会議は中央アジアや中東を中心とした26カ国が加盟しており、わが国や欧米のG7は加盟していない。会議参加のため訪中したプーチン・ロシア大統領を迎え、5月20日に習近平、プーチンによる中露首脳会談が行われ、その蜜月関係を世界に誇示した。さらに同日、習近平とプーチンが揃って、上海沖で行われていた中露の海軍演習「海上聯合2014」の開始式典に出席し、軍事面でも中露協力の進展ぶりを誇示した。 ウクライナ問題で孤立し、西側の経済制裁に直面したロシアに、これも孤立する中国が手を差し伸べた恰好であり、中露間の長年の懸案であった対中天然ガス供与問題も、期間30年、総額4000億ドル(約40兆円)の大型契約を5月21日に締結、今後長期に渡って安定した中露関係をアピールするものとなった。 CICA首脳会議では習近平主席が基調演説し、「新アジア安全保障観」を明らかにした。演説で習近平は、「安全は平等なものでなければならない」として「いかなる国も地域の安全問題を壟断してはならず、他国の正当な権益を侵害してはならない」と述べた。 さらに、「安全は包括的なものでなければならない」として「第三国に向けて軍事同盟を強化することは地域の安全を維持する上でためにならない」と述べることで、米国の東アジアにおける「リバランス」政策を牽制し、日米同盟はじめ米韓、米比の同盟強化を批判した。その上で、「アジアのことはアジアの人々が行い、アジアの問題はアジアの人々が処理し、アジアの安全はアジアの人々が守る」と述べて、域外国、すなわち米国の関与を否定してみせたのである。 こうした論点を踏まえ、習近平は「CICAはアジアで最大の範囲をカバーし、最多の国で構成される、最も広範な代表性を備える地域安全保障フォーラムである」と評価し、「中国はCICAの能力と制度の整備を強化し、各分野の交流や協力を深化し、CICAの包括性と開放性を強化し、アジア全体をカバーする安全保障対話・協力の場とすべく後押しし、これを基礎に地域安全保障協力の新メカニズムの構築を検討することを提言する」「中国はCICA議長国の責務を履行し、各国と共にCICAの地位と役割をさらに高め、連携してアジア安全保障協力に新局面を切り開く」と表明した。 つまるところ、中国がアジアの新しい安全保障秩序を形成する上でCICAをベースに主導権を握る意欲を見せたことになる。 米国の無力さを見透かしている中国 この習近平演説から、中国が意図する米国との「新型大国関係」を荒っぽく読み解けば、「中国がアジアの盟主になることを妨害するな、米国はアジアから手を引け」ということになる。 オバマ大統領がアジア歴訪で見せた「中国への配慮」に対する「米国への配慮」は微塵も見られない。もしあったとすれば、米国を名指ししなかったことであろうか。 オバマ大統領の求める中国との「新型大国関係」が、「具体的な協力と両国の相違の建設的管理に基づく」ものというのであるとすれば(参考:Paul Haenle, “What does a New Type of Great-Power Relations Mean for the United States and China?”)、中国の求めているものと違いすぎるだろう。オバマの対中「宥和」外交は、現状では米国の無力さを中国に見透かされているように見える。 習近平主席が本音で米国に伝えたいことは、2013年6月の米中首脳会談で「太平洋は広い。太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある」という発言、つまり「中国に西太平洋をよこせ」ということであることを、米国は真剣に受け止める必要がある。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/40782 JBpress>海外>The Economist [The Economist] タイのクーデター:国座に至る道のり 2014年05月26日(Mon) The Economist (英エコノミスト誌 2014年5月24日号) 軍による突然のクーデターは、短い平穏をもたらすだけだ。 タイのクーデター、インラック氏らが出頭 155人に出国禁止令 またクーデターで軍が全権を掌握したタイは、この先どうなるのか・・・〔AFPBB News〕 5月20日の戒厳令をきっかけに始まったタイの混乱は、本誌(英エコノミスト)が印刷に回された時点で、軍による本格的なクーデターにまで発展した。 陸軍のプラユット・チャンオチャ司令官はテレビ演説で、軍が秩序を回復し、政治改革を実行すると宣言した。ただし、この言葉が具体的に何を意味するかは不明だった。 軍は、プラユット司令官が演説を行う前から、10以上のテレビ局と数千のコミュニティーラジオ局を閉鎖し、残りの報道機関に対しても、批判的な思考をやめるよう命じた。例えば、ジャーナリストは公的な立場にない人物への取材を禁じられた。 プラユット司令官はその時点で、クーデターは全く考えていないと示唆していた。バンコクの市街地に兵士はあまり配置されていなかった。 軍事クーデターがもたらすもの プラユット司令官は21日にタイの政治を数カ月前から麻痺させてきたすべての当事者を招集し、ほぼすべての当事者がこれに応じて軍の施設に集まった。与党であるタイ貢献党の幹部、同党が主導する「赤シャツ隊」と呼ばれる草の根運動のリーダー、野党の民主党(野党ではあるが支配階級)、そして支配階級の後押しを受け、政権の打倒を目指し2013年11月から行われている街頭デモを率いているステープ・トゥアクスパン氏といった面々だ。 会合の目的は、選挙による民主主義を実現するための道を探ることのように見えた。翌22日にも再び話し合いが持たれた。しかし、兵士が施設を封鎖し、参加者が集中できる環境を作っていたにもかかわらず、難局を打破する政治的な合意に近づくことさえできなかったようだ。その時点で軍は各派のリーダーを拘束した。 言うまでもなく、目立った欠席者がタクシン・チナワット氏だった。現在ドバイに自主亡命しているタクシン氏は、タイ貢献党をはじめ、2001年以降に実施までこぎ着けた選挙で勝利したすべての政党の創設者である。支配階級側が政治から排除したいと望んでいるのが、タクシン氏の影響力だ。 クーデターはすぐに悪影響をもたらすだろう。金融市場は不安に襲われ、タイを国際資本から切り離す恐れがある。また、暴力が助長されることは間違いない。赤シャツ隊は以前から、クーデターが起きれば立ち上がると宣言していた。政府閣僚を任命制にするというアイデアも、赤シャツ隊の抵抗に遭うだろう。これはステープ氏の計画で、軍も支持するかもしれない。 実際のところ、2013年11月以降、衝突の中ですでに28人が命を落とし、数百人が負傷している。 軍は恐らく、政府派、反政府派双方の抗議活動の拠点を一掃するだろう。しかし、老衰したプミポン・アドゥンヤデート国王(ラーマ9世)を取り巻く役人、軍、司法、裁判所を街頭レベルで代表しているステープ氏は、支持者に対してタクシン氏とその一族を排除する戦いは続くと断言した。 政治的危機と経済の方向性が定まらないことによる代償は、急速に明確になりつつある。タイの経済企画当局はクーデターの直前に、タイは景気後退に陥ったと発表した。タイは、ほんの10年前には、成長と民主主義を両立した東南アジアの手本としばしば持ち上げられる国だった。 今後何が起きるかを予測するのは難しい。政治的合意によりクーデターが収束し、通常の民主政治に戻ることもあり得なくはない。もっと可能性が高いのは、昔からのエリート層がこのまま国を牛耳り続けるという構図だ。いずれにせよ、プラユット司令官が決めることではない。タイでは、実際に決断を下すのは枢密院と王宮だ。 事態を複雑にする王位継承 タイ・プミポン国王、84歳に 祝賀式典に出席 国民から尊敬されているプミポン・アドゥンヤデート国王〔AFPBB News〕 経済の停滞、社会的失敗、そして繰り返されたクーデターから抜け出す道を描く作業は、1つの時代、つまり64年続いたプミポン国王による統治が終わりを迎えようとしていることで、非常に複雑化している。 プミポン国王は息子のマハー・ワチラロンコン王子と異なり、人気が高く、尊敬されている。61歳になる王子は変わり者と見られている。ペットのプードルのフーフーのために開いたパーティーで、3番目の妻と裸でいる動画が流出したこともある。フーフーには空軍大将の称号が与えられている。 プミポン国王の時代が終わろうとしている今、王位継承を巡るさまざまな問題も、タイ政治の分極化の要因になっている。社会と軍、王宮の分裂を招く危険もある。 タイでは不敬罪が厳格に適用されるため、現在、プミポン国王の時代が終わりに近づいていることが表立って語られることはない。しかし、国王を守る軍は最近、受け入れ難い知らせを受けた。2013年11月、プミポン国王が、大きな権力を持つ国防評議会が下すすべての決定に対し皇太子が拒否権を行使できるとする布告に署名したのだ。 国防評議会は軍のトップや常任の国防長官が名を連ねる。王位を継承すると見られるワチラロンコン王子が、事実上、国防評議会の上に立ったいうことだ。 王位継承の妨害を考える者は、これでますますやりにくくなる。ステープ氏の支持者は、多くのタイ国民と同じように、王子の妹であるシリントーン王女が王位を継承するという奇跡を祈り続けてきた。王族として慈善活動に取り組むシリントーン王女には、聖人のようなイメージがある。つい先日、街頭で見られた一部の部隊は、王女の色である紫のリボンを身に着けていた。 4月4日に発令された別の布告は、ワチラロンコン王子の親衛隊904部隊(通称ラチャワロップ)の権限を大幅に拡大するという内容だった。ラチャワロップは1978年からワチラロンコン王子の指揮下にある歩兵部隊だ。今後はワチラロンコン王子が護衛を命じた者なら誰でも護衛できるようになり、王子が国家安全保障のために必要と判断すれば、どのような任務にも従事できるようになる。 個人で指揮できる部隊を持つことは、リスクを伴う。1910年にワチラーウット国王(ラーマ6世)は、即位と同時にワイルドタイガー部隊を結成した。その2年後に、憤慨した陸軍将校たちがクーデターを企てた。 ワチラロンコン王子とチナワット家の関係 王子の親衛隊員はほかの兵士より高い報酬を得ている。チナワット家の地盤である北部や北東部の農村地帯からの入隊が目立つ。これは偶然ではないかもしれない。 ワチラロンコン王子は実権を握るため、タクシン氏が国民から得ている正当な支持を利用しなければならないと感じている可能性がある。同様に、タクシン氏も再び首相の座に就くために、王子を必要としているのかもしれない。タクシン氏は過去に、王子が作ったギャンブルの借金を肩代わりしたとされている。 ワチラロンコン王子とタクシン氏が実際に手を結んでいるかどうかは分からない。今年、軍が、タクシン氏の妹で当時首相だったインラック・チナワット氏の護衛に躊躇したとき、王子は自分の兵士を派遣した。 裁判所は今も、古くからの支配階級側にあり、その後、インラック氏を首相辞任に追い込んだ。エリート層にとって今回のクーデターの狙いは、間違いなく、選挙で選ばれた嫌悪すべき政府から権力を奪い返すことにあるが、それには現国王の死後より今の方が容易だと考えているのかもしれない。タイが抱えるリスクは増大する一方だ。
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