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【ドバイ=久門武史】イスラム過激派の勢力拡大で緊迫するイラク情勢について、隣国イランのロウハニ大統領は14日、イラクの要請があれば支援する用意があると表明した。国交のない米国との協力についても「検討することができる」と発言した。イランの介入姿勢には、サウジアラビアなど周辺国が警戒を強める可能性があり、情勢を一段と複雑にしそうだ。
イスラム教シーア派の地域大国イランは、イラクの同派中心のマリキ政権と緊密な関係にある。米国もマリキ政権を支援する立場だ。スンニ派の過激な武装組織「イラク・シリアのイスラム国」の侵攻を食い止め、イラク危機を封じ込める点で米国とイランは利害が一致している。
「米国がイラクでテロ勢力に立ち向かうなら、検討することができる」。ロウハニ師は記者会見で米国との協調を問われてこう語った。
米国とイランは1979年のイラン革命後に国交を断絶。足元ではイランの核開発問題を巡り、激しい神経戦を重ねる。核協議についてロウハニ師は「合意は全員の利益だ」と述べ、期限とする7月20日までの最終合意に強い期待を示した。
両国の相互不信はなお深いが、イラクで「テロとの戦い」を旗印に共闘することの利益をイランは計算しているもようだ。イランはイラクのシーア派政党や民兵組織と深い関係を持つ。地の利をいかしてひそかに米国に助け舟を出すだけでも、外交的には貸しをつくることになる。
イランは米国などの反発が確実な正規軍や革命防衛隊の正式な投入には慎重とみられ、ロウハニ師は「部隊の派遣は提起されておらず、ありそうにもない」と明言した。具体的な支援策には言及しなかったが、イラクのシーア派民兵組織への物的支援を増やす可能性などが指摘されている。すでに革命防衛隊の精鋭がイラク南部などで政権側と協力しているとの報道もある。
半面、イランの介入は対立するスンニ派の親米国サウジなどの猛反発を招きかねず、米国のイラク支援に波乱要因が加わる恐れもある。サウジはイラクと国境を接し、自国内でもシーア派住民の動きに神経をとがらせている。
ロウハニ師は名指しを避けつつ、サウジなど湾岸諸国がシリア内戦でアサド政権と戦う反体制派に資金を送り、結果的にイラクに侵攻した「イスラム国」の勢力拡大をもたらしたことを批判した。逆にサウジはかねて、イランによるアサド政権支援を批判してきた。
イラクで、両国が信頼関係を回復する助けになるとの観測も出ている。両国は1979年のイラン革命後に国交を断絶。イランの核開発問題を巡っても厳しい交渉を重ねている。ロウハニ師は記者会見で米国との協調を問われ「米国がイラクでテロ勢力に立ち向かうなら、検討することができる」と語った。
イラクでは敗走を続けていた政権側部隊が反撃準備を進め、武装勢力の進撃に歯止めがかかる可能性が出ている。マリキ首相は武装勢力に対する掃討作戦の開始を宣言。首都バグダッドの北方にある都市サマラとバクバを死守し、首都接近を食い止める構えだ。
イラク軍高官は14日、攻防戦の前線であるサマラに援軍が入り反撃の準備を整えたと語った。現地報道によると、バグダッドや同国南部では、シーア派指導者の決起の呼び掛けに応じ、多数の住民が戦闘参加を志願した。
▼イラクとイラン 中東有数の産油国。ペルシャ系のイランとアラブ系のイラクは主要な民族、言語が異なるが、宗教面ではともにイスラム教シーア派が国民の多数を占める。イランは1979年の革命でシーア派の宗教指導者が率いるイスラム体制となった。イラクでは世俗的なスンニ派のフセイン元大統領が長期の独裁を敷き、80〜88年に「イラン・イラク戦争」を戦った。フセイン体制のイラクではスンニ派が特権を握りシーア派住民が激しく弾圧された。現在のマリキ政権はシーア派中心でイランと良好な関係を保つ。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1401T_U4A610C1MM8000/
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