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知事選で勝てないのに中央政治は安倍一強のアブノーマル 永田町の裏を読む/高野孟
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/156386
2015年1月15日 日刊ゲンダイ
11日投開票の佐賀県知事選で、自公両党が推した樋渡啓祐・前武雄市長が大差で敗れ、自民党県議の過半数はじめ県内市町村長、それに農協が担ぎ出した元総務官僚の山口祥義が勝利した。マスコミはこぞって「農協改革難しくなる」(朝日)、「農協改革慎重論も、自民火消し図る」(毎日)などと、「自民対農協」の構図でこの結果を解説しているが、旧知の地元記者に聞くとちょっと違う。
「確かに、JA佐賀は全農会長も出している大拠点で、それが山口に付いたのは大差の一因ではあるが、選挙戦では別に農協改革が争点になったわけではないし、多くの県民の関心事であったわけでもない。むしろ、菅義偉官房長官が地元の意見を聞かずに上から命令して候補者を決めたやり方が反発を招いた。それで候補者になった樋渡がまた、やり手の“改革派”ではあるけれども、上から目線もはなはだしい強引な行政手法や暴言癖で有名な人物だったので、市町村長たちは県政が大混乱に陥るんじゃないかと心配した。結局、中央直結で、国の意向を県民にどんどん押し付けるような“上から知事”がいいか、県民の意見をよく聞いて政策を決める“下から知事”がいいか、という選択だったんでしょう」
同記者によると、県民の多くが関心があったのは、農協改革ではなくてむしろ玄海原発の再稼働と佐賀空港へのオスプレイ配備。それらについても活発な論戦が交わされたとは言えないけれども、古川康前知事は両方とも容認派で、扉を半開きにしたまま先の総選挙で佐賀2区から国政に転じ、後始末を樋渡に委ねようとした。そうすると、官邸─古川衆院議員─新知事のタテ一直線で再稼働もオスプレイ配備も押し通してくるのではないかと多くの人は不安を抱いた。それが大差となった最大の要因ではないか、と言う。だとすると、沖縄と事情は異なり切迫性の度合いも差があるけれども、ある意味で佐賀県民もまた「自分たちのことは自分たちで決める」という「自己決定権」を重視したと言えるのだろう。
それにしても、昨年の滋賀、福島(不戦敗回避の押しかけ相乗り)、沖縄に続いて、またもや自民党は知事選で勝てなかった。マスコミは、中央政治では安倍が一強なのに地方にこういう例外が出てくるのは奇妙だといった視点で、それこそ上から目線で論じているけれども、実は日本政治の健全でノーマルな姿を示しているのは地方の知事直接選挙のほうであって、小選挙区制マジックに助けられた安倍一強現象がむしろ病的でアブノーマルなのではないか。
▽〈たかの・はじめ〉1944年生まれ。「インサイダー」「THEJOURNAL」などを主宰。「沖縄に海兵隊はいらない!」ほか著書多数。
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