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節目の年の訪米が簡単には実現しない深層 永田町の裏を読む/高野孟
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/156226
2015年1月8日 日刊ゲンダイ
戦後70年の節目となるこの年、安倍晋三首相は、5月連休明けから集団的自衛権解禁のための法整備を一気に進めると同時に、それを前提とした日米防衛協力ガイドラインの改定も行って、「海外で武力行使をできる国」に日本を変えようと夢見ている。その流れに勢いをつけるべく、すでに12月17日のオバマ大統領との電話会談で、5月連休までに訪米したいと申し入れている。
オバマの返事は、日本経済新聞(1日付)では「TPPの進展などを念頭に『懸案の道筋がたった時に来てほしい』という趣旨」とされるが、3日付の朝日新聞では「ガイドラインの協議が続いていることを念頭に『ある程度のめどがついた段階で来てほしい』といった趣旨」とされていて、どちらも、「道筋」なり「めど」なりが立たないのに来てもらっても困るというニュアンスだが、その際にオバマが「念頭」に置いているものは違っている。私の理解はこうだ。
第1に、オバマは安倍が好きではない。昨年4月の日米首脳会談では、オバマが尖閣を平和的に解決しろ、中国・韓国と仲良くしろと口を酸っぱくして説いたのに、安倍は尖閣有事の際に米国が日本に対して集団的自衛権を発動して一緒に戦うと宣言してくれることばかりをおねだりした。
「そんなことを口にするわけがないじゃないか。安倍は何を考えているんだ」とオバマは不機嫌になって帰った。それ以来、2人が口をきいたのはその12月の電話会談がたぶん初めてである。第2に、訪米が実現するとして、オバマの最大関心事はTPPをめぐる日本の全面屈服で、それを土産にできないなら来なくていいということである。第3に、日本の集団的自衛権解禁は米国の長年の要求であり、一般論としてはもちろん歓迎だが、冷戦が終わって米国が「世界の警察官」の座を下り、むやみに軍事力を振り回さない「戦争をしない国」に自己改造しようとしている今では、いささか季節外れであり、しかも、安倍による解禁のもくろみには、米国との協力を強化するフリをして海外武力行使に道を開き、戦前型の自立軍事国家を復活させようという狙いが潜んでいるのではないかと見て警戒している。
そこで米国がむしろ重視しているのは、8月の「安倍談話」が大東亜戦争を肯定するような歴史修正主義的な内容を含むものとなるのかどうかである。萩生田光一総裁特別補佐が言うように「大きな節目の年を日本の名誉回復元年にすべきだ」(「正論」2月号)というような談話になることが見極められれば、オバマは春の安倍訪米を断るかもしれない。(水曜掲載)
▽たかの・はじめ 1944年生まれ。「インサイダー」「THEJOURNAL」などを主宰。「沖縄に海兵隊はいらない!」ほか著書多数。
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